天幕の破れ目から見ゆる砂漠の空の星、駱駝らくだの鈴の音がする。背戸せど田圃たんぼのぬかるみに映る星、籾磨歌もみすりうたが聞える。甲板に立って帆柱のさきに仰ぐ星、船室で誰やらがあくびをする。
(明治三十二年十月『ホトトギス』)

底本:「寺田寅彦全集 第一巻」岩波書店
   1996(平成8)年12月5日発行
初出:「ホトトギス」
   1899(明治32)年10月
入力:Nana ohbe
校正:松永正敏
2004年3月24日作成
2012年9月14日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。