一

もくさん、これ、なあに?……」
 と小児こどもくと、真赤まっかな鼻のさきでて、
「綺麗な衣服べべだよう。」
 これはまた余りになさけない。町内の杢若もくわかどのは、古筵ふるむしろの両端へ、ささの葉ぐるみ青竹を立てて、縄を渡したのに、幾つも蜘蛛くもの巣を引搦ひっからませて、商売あきないをはじめた。まじまじと控えた、が、そうした鼻のさきの赤いのだからこそけれ、くちばしの黒い烏だと、そのままの流灌頂ながれかんちょう。で、お宗旨ちがいの神社の境内、額の古びた木の鳥居のかたわらに、裕福な仕舞家しもたやの土蔵の羽目板を背後うしろにして、秋の祭礼まつりに、日南ひなたに店を出している。
 売るのであろう、商人あきんどと一所に、のほんと構えて、晴れた空の、薄い雲を見ているのだから。
 あめは、今でも埋火うずみびなべを掛けて暖めながら、飴ん棒と云う麻殻あさがらの軸に巻いて売る、にぎやかな祭礼でも、びたもので、お市、豆捻まめねじ薄荷糖はっかとうなぞは、お婆さんが白髪しらが手抜てぬぐいを巻いて商う。何でも買いなの小父さんは、紺の筒袖を突張つっぱらかして懐手の黙然もくねんたるのみ。景気のいのは、蜜垂みつたらしじゃ蜜垂じゃと、菖蒲団子あやめだんごの附焼を、はたはたとあおいで呼ばるる。……毎年顔も店も馴染なじみの連中、場末から出る際商人きわあきんど丹波鬼灯たんばほおずき海酸漿うみほおずき手水鉢ちょうずばちわき、大きな百日紅さるすべりの樹の下に風船屋などと、よき所に陣を敷いたが、鳥居外のは、気まぐれに山から出て来た、もの売で。――
 売るのは果もの類。桃は遅い。小さな梨、粒林檎つぶりんごくりは生のまま……うでたのは、甘藷さつまいもとともに店が違う。……奥州辺とは事かわって、加越かえつのあの辺に朱実あけびはほとんどない。ここに林のごとく売るものは、黒く紫な山葡萄やまぶどう、黄と青の山茱萸やまぐみを、つるのまま、枝のまま、その甘渋くて、且つすっぱき事、狸がせて、兎が酔いそうな珍味である。
 このおなじ店が、むしろ三枚、三軒ぶり。かさた女が二人並んで、片端に頬被ほおかぶりした馬士まごのような親仁おやじが一人。で、一方のはじの所に、くだんの杢若が、縄に蜘蛛の巣を懸けて罷出まかりいでた。
「これ、何さあ。」
「美しい衣服べべじゃが買わんかね。」と鼻をひこつかす。
 幾歳いくつになる……杢の年紀としが分らない。小児こどもの時から大人のようで、大人になっても小児にひとしい。彼は、元来、この町に、立派な玄関を磨いた医師いしゃのうちの、書生兼小使、と云うが、それほどの用には立つまい、ただ大食いの食客いそうろう
 世間体にも、容体にも、せてもはかまとあるところを、毎々薄汚れたしま前垂まえだれめていたのは食溢くいこぼしが激しいからで――この頃は人も死に、やしきよそのものになった。その医師いしゃというのは、町内の小児こどもの記憶に、もう可なりの年輩だったが、色の白い、指の細く美しい人で、ひどく権高な、その癖おんなのように、口を利くのが優しかった。……細君は、あから顔、横ぶとりの肩の広い大円髷おおまるまげめじりが下って、あぶらぎったほおへ、こう……いつでもばらばらとおくれ毛を下げていた。下婢おさんから成上ったとも言うし、めかけを直したのだとも云う。まこと御新造ごしんぞは、人づきあいはもとよりの事、かど、背戸へ姿を見せず、座敷牢とまでもないが、奥まった処に籠切こもりきりの、長年の狂女であった。――で、赤鼻は、章魚たことも河童かっぱともつかぬ御難なのだから、待遇あつかい態度なりふりも、河原の砂から拾って来たようなていであったが、実は前妻のその狂女がもうけた、実子で、しかも長男で、この生れたて変なのが、やや育ってからも変なため、それを気にして気が狂った、御新造は、以前、国家老の娘とか、それは美しい人であったと言う……
 ある秋の半ば、ゆうべより、大雷雨のあとが暴風雨あらしになった、夜の四つ時十時過ぎと思う頃、すさまじい電光の中を、ひぐらしが鳴くような、うらさみしい、えた、とおる、女の声で、キイキイと笑うのが、あたかも樹の上、雲の中を伝うように大空に高く響いて、この町を二三度、四五たび、風に吹廻されて往来ゆききした事がある……通魔とおりまがすると恐れて、老若、呼吸いきをひそめたが、あとで聞くと、その晩、斎木(医師の姓)の御新造がうちを抜出し、町内を彷徨さまよって、疲れ果てた身体からだを、やしろの鳥居の柱に、黒髪をさっと乱したきぬうろこの、はだえの雪の、電光いなびかり真蒼まっさおなのが、滝をなす雨に打たれつつ、怪しきうおのように身震みぶるいして跳ねたのを、追手おってが見つけて、医師いしゃのその家へかつぎ込んだ。間もなくひつぎという四方ばりまないたせて焼かれてしまった。斎木の御新造は、人魚になった、あの暴風雨あらしは、北海の浜から、うしおが迎いに来たのだと言った――
 その翌月、急病で斎木国手が亡くなった。あとは散々ちりぢりである。代診を養子に取立ててあったのが、成上りのその肥満女ふとっちょと、家蔵いえくらを売って行方知れず、……下男下女、薬局のともがらまで。勝手につかみ取りの、ふくろうに枯葉で散り散りばらばら。……薬臭い寂しい邸は、冬の日売家の札がられた。しんとした暮方、……空地の水溜みずたまりを町の用心水ようじんみずにしてある掃溜はきだめ芥棄場ごみすてばに、枯れた柳の夕霜に、赤い鼻を、薄ぼんやりと、提灯ちょうちんのごとくぶら下げて立っていたのは、屋根から落ちたか、杢若もくわかどの。……親は子に、杢介とも杢蔵とも名づけはしない。待て、御典医であった、彼のお祖父じいさんが選んだので、本名は杢之丞もくのじょうだそうである。
 ――時に、木の鳥居へ引返そう。

       二

 ここに、杢若がその怪しげなる蜘蛛くもの巣を拡げている、この鳥居の向うの隅、以前医師いしゃの邸の裏門のあった処に、むかし番太郎と言って、町内の走り使人つかいとき、非時の振廻ふれまわり、香奠こうでんがえしの配歩行くばりあるき、秋の夜番、冬は雪かきの手伝いなどした親仁おやじが住んだ……半ば立腐りの長屋建て、掘立小屋ほったてごやというていなのが一棟ひとむねある。
 町中が、杢若をそこへ入れて、役に立つ立たないは話の外で、寄合持で、ざっと扶持ふちをしておくのであった。
「杢さん、どこから仕入れて来たよ。」
「縁の下か、廂合ひあわいかな。」
 その蜘蛛の巣を見て、通掛とおりかかりのものが、苦笑いしながら、声を懸けると、……
「違います。」
 と鼻ぐるみ頭をって、
さとからじゃ、ははん。」と、ぽんと鼻を鳴らすような咳払せきばらいをする。此奴こいつが取澄ましていかにも高慢で、且つ翁寂おきなさびる。争われぬのは、お祖父さんの御典医から、父典養に相伝して、脈を取って、ト小指をねた時の容体と少しも変らぬ。
 杢若が、さとと云うのは、山、村里のその里の意味でない。註をすれば里よりは山の義で、字にあらわせば故郷ふるさとになる……実家さとになる。
 八九年ぜん晩春の頃、同じこの境内で、小児こどもあつまってたこを揚げて遊んでいた――杢若ははちの大きい坊主頭で、誰よりも群を抜いて、のほんと脊が高いのに、その揚げる凧は糸をおしんで、一番低く、山の上、松の空、桐のこずえとある中に、わずかに百日紅さるすべりの枝とすれすれな所を舞った。
大風来い、大風来い。
   小風は、可厭いや、可厭……
 幼い同士が威勢よく唄う中に、杢若はただ一人、寒そうな懐手、糸巻を懐中ふところに差込んだまま、この唄にはむずむずと襟をって、かぶりって、そしてつら打って舞うおのが凧に、合点合点をして見せていた。
 ……にもかかわらず、烏が騒ぐ逢魔おうまが時、さっと下した風も無いのに、杢若のその低い凧が、懐の糸巻をくるりと空に巻くと、キリキリと糸を張って、一ツ星に颯とれた。
「魔が来たよう。」
天狗てんぐが取ったあ。」
 ワッとおびえて、小児こどもたちの逃散る中を、団栗どんぐりの転がるように杢若は黒くなって、凧の影をどこまでも追掛おっかけた、その時から、行方知れず。
 五日目のおなじ晩方に、骨ばかりの凧を提げて、やっぱり鳥居際にぼんやりと立っていた。天狗にさらわれたという事である。
 それから時々、三日、五日、多い時は半月ぐらい、月に一度、あるいは三月に二度ほどずつ、人間界に居なくなるのが例年で、いつか、そのあわれな母のそうした時も、杢若は町には居なかったのであった。
「どこへ行ってござったの。」
 町の老人が問うのに答えて、
実家さとへだよう。」
 と、それ言うのである。この町からは、間に大川を一つ隔てた、山から山へ、峰続きを分入るに相違ない、魔のむのはそこだと言うから。
「お実家さとはどこじゃ。どういう人が居さっしゃる。」
「実家の事かねえ、ははん。」
 スポンと栓を抜く、くだんせきばらいを一つすると、これと同時に、鼻がとがり、眉が引釣ひッつり、額のしわくびれるかとへこむや、まなこが光る。……歯が鳴り、舌がなめらかに赤くなって、滔々とうとうとして弁舌鋭く、不思議に魔界の消息をもらす――これを聞いたものは、親たちも、祖父祖母おおじおおばも、その、孫などには、決して話さなかった。
 幼いものが、生意気に直接じか打撞ぶつかる事がある。
「杢やい、実家さとはどこだ。」
「実家の事かい、ははん。」
 や、もうそのせきばらいで、小父さんのお医師いしゃさんの、膚触はだざわりの柔かい、ひやりとした手で、脈所をぎゅうと握られたほど、悚然ぞっとするのに、たちまち鼻がとがり、眉が逆立ち、額のしわが、ぴりぴりとうごめいて眼が血走る。……
 聞くどころか、これにおびえて、ワッとげる。
「実家はな。」
 と背後うしろから、おおわれかかって、小児こどもの目には小山のごとく追って来る。
「御免なさい。」
「きゃっ!」
 その時に限っては、杢若の耳が且つ動くと言う――嘘をけ。

       三

 海、また湖へ、信心の投網とあみさっと打って、水に光るもの、輝くものの、仏像、名剣を得たと言っても、売れないさきには、その日一日の日当がどうなった、米は両につき三升、というのだから、かくのごとき杢若が番太郎小屋にただぼうとしてきているだけでは、世の中が納まらぬ。
 入費は、町中持合いとした処で、半ば白痴はくちで――たといそれが、実家さとと言う時、魔の魂が入替るとは言え――半ば狂人きちがいであるものを、肝心火の元の用心は何とする。……炭団たどん埋火うずみびほだしばいて煙は揚げずとも、大切な事である。
 方便な事には、杢若は切凧きれだこの一件で、山に実家さとを持って以来、いまだかつて火食をしない。多くは果物をえさとする。松葉をめば、しいなんぞ葉までも頬張る。うりの皮、西瓜すいかの種も差支えぬ。桃、栗、柿、大得意で、烏やとびは、むしゃむしゃと裂いてなますだし、蝸牛虫まいまいつぶろやなめくじは刺身に扱う。春は若草、なずな茅花つばな、つくつくしのお精進……かぶかじる。牛蒡ごぼう、人参は縦にくわえる。
 この、秋はまたいつも、食通大得意、というものは、木の実時なり、実り頃、実家の土産のきじ、山鳥、小雀こがら山雀やまがら四十雀しじゅうから、色どりの色羽を、ばらばらと辻にき、ひさしに散らす。ただ、魚類に至っては、金魚も目高も決して食わぬ。
 最も得意なのは、も一つきのこで、名も知らぬ、可恐おそろしい、故郷ふるさとの峰谷の、蓬々おどろおどろしい名の無いくさびらも、皮づつみのあんころ餅ぼたぼたとこぼすがごとく、たもとに襟にあふれさして、山野の珍味にかせたまえる殿様が、これにばかりは、露のようなよだれをたらし、
「牛肉のひれや、人間の娘より、柔々やわやわとしてあぶらが滴る……甘味うまいぞのッ。」
 はすさまじい。
 が、かくきのこたしなむせいだろうと人は言った、まだ杢若に不思議なのは、日南ひなたでは、影形が薄ぼやけて、陰では、汚れたどろどろのきもの縞目しまめ判明はっきりする。……くわしく言えば、昼は影法師にていて、夜はあきらかなのであった。
 さて、店を並べた、山茱萸やまぐみ山葡萄やまぶどうのごときは、この老鋪しにせには余り資本がかからな過ぎて、恐らくおあしになるまいと考えたらしい。で、精一杯に売るものは。
「何だい、こりゃ!」
「美しい衣服べべじゃがい。」
 氏子はあきれもしない顔して、これは買いもせず、貰いもしないで、隣の木の実に小遣こづかいを出して、枝をつるを提げるのを、じろじろと流眄ながしめして、世に伯楽なし、とソレ青天井を向いて、えへらえへらと嘲笑あざわらう……
 そのわらいが、日南ひなたに居て、蜘蛛の巣の影になるから、鳥がくちばしを開けたか、猫が欠伸あくびをしたように、人間離れをして、笑の意味をなさないで、ぱくりとなる……
 というもので、むしろを並べて、笠をかぶって坐った、山茱萸、山葡萄のおんなどもが、くだんのぼやけさ加減に何となく誘われて、この姿も、またどうやら太陽の色に朧々おぼろおぼろとして見える。
 あおい空、薄雲よ。
 人の形が、そうした霧のなかに薄いと、可怪あやしや、かすれて、あからさまには見えないはずの、しごいてからめたもつれ糸の、蜘蛛の幻影まぼろしが、幻影が。
 真綿をスイと繰ったほどに判然と見えるのに、薄紅うすべにの蝶、浅葱あさぎの蝶、青白い蝶、黄色な蝶、金糸銀糸や消え際の草葉螟蛉くさばかげろう金亀虫こがねむし、蠅の、蒼蠅、赤蠅。
 羽ばかり秋の蝉、ひぐらしの身の経帷子きょうかたびら、いろいろの虫の死骸しがいながら巣を※(「てへん+劣」、第3水準1-84-77)ひんむしって来たらしい。それ等が艶々つやつやと色に出る。
 あれ見よ、その蜘蛛の囲に、ちらちらと水銀の散った玉のような露がきらめく……
 この空の晴れたのに。――

       四

 これには仔細しさいがある。
 神の氏子のこの数々の町に、やがて、あやかしのあろうとてか――その年、秋のこの祭礼まつりに限って、見馴みなれない、商人あきゅうどが、妙な、かわったものを売った。
 宮の入口に、新しい石の鳥居の前に立った、白いのぼりの下に店を出して、そこにひさぐは何等のものぞ。
 河豚ふぐの皮の水鉄砲。
 あしの軸に、黒斑くろぶちの皮を小袋に巻いたのを、握って離すと、スポイト仕掛けで、つッと水がほとばしる。
 ふぐは多し、またさかんぜんに上す国で、魚市は言うにも及ばず、市内到る処の魚屋の店に、春となると、このあやしうおひさがない処はない。
 が、おかしな売方、一頭々々ひとつひとつを、あのひれの黄ばんだ、黒斑なのを、ずぼんと裏返しに、どろりと脂ぎって、ぬらぬらと白い腹を仰向あおむけて並べて置く。
 もしただ二つ並ぼうものなら、切落して生々しい女の乳房だ。……しかも真中まんなかに、ズキリと庖丁目を入れた処が、パクリと赤黒い口をいて、西施せいしの腹の裂目をさらす……
 中から、ずるずると引出した、長々とある百腸ひゃくひろを、巻かして、つかねて、ぬるぬると重ねて、白腸しろわた黄腸きわたとなえて売る。……あまつさえ、目の赤い親仁おやじや、襤褸半纏ぼろばんてん漢等おのこら、俗に――云うわた拾いが、出刃庖丁を斜に構えて、このはらわたを切売する。
 待て、我が食通のごときは、これに較ぶれば処女の膳であろう。
 要するに、市、町の人は、こぞって、手足のない、女の白い胴中どうなか筒切つつぎりにして食うらしい。
 その皮の水鉄砲。小児こどもは争って買競かいきそって、手のなまぐさいのをいといなく、参詣さんけい群集のすきを見ては、シュッ。
「打上げ!」
「流星!」
 と花火にまねて、縦横たてよこや十文字。
 いや、隙どころか、くだんの杢若をばあなどって、その蜘蛛の巣の店を打った。
 白玉の露はこれである。
 その露のちりばむばかり、蜘蛛の囲に色めて、いで膚寒はださむゆうべとなんぬ。山からおろす風一陣。
 はや篝火かがりびの夜にこそ。

       五

 笛も、太鼓もを絶えて、ただ御手洗みたらしの水の音。しんとしてその更け行く。この宮の境内に、きざはしかたから、カタンカタン、三ツ四ツ七ツ足駄の歯の高響たかひびき
 脊丈のほどもおもわるる、あの百日紅さるすべりの樹の枝に、真黒まっくろ立烏帽子たてえぼし鈍色にぶいろに黄を交えた練衣ねりぎぬに、水色のさしぬきした神官の姿一体。社殿の雪洞ぼんぼりも早や影の届かぬ、暗夜やみの中にあらわれたのが、ややかがみなりに腰をひねって、その百日紅のこずえのぞいた、霧に朦朧もうろうと火が映って、ほんのりと薄紅うすくれないしたのは、そこに焚落たきおとした篝火かがりび残余なごりである。
 このあかりで、白い襟、烏帽子のひも縹色はないろなのがほのかに見える。渋紙した顔に黒痘痕くろあばたちりを飛ばしたようで、とんがった目の光、髪はげ、眉薄く、頬骨の張った、その顔容かおかたちを見ないでも、夜露ばかり雨のないのに、その高足駄の音で分る、本田摂理せつりと申す、この宮の社司で……草履か高足駄のほかは、下駄を穿かないお神官かんぬし
 小児こどもが社殿に遊ぶ時、摺違すれちがって通っても、じろりと一睨ひとにらみをくれるばかり。威あって容易たやすく口を利かぬ。それを可恐こわくは思わぬが、この社司の一子に、時丸と云うのがあって、おなじ悪戯盛いたずらざかりであるから、ある時、大勢がいくさごっこの、番に当って、一子時丸が馬になった、しっ! ったやつがある。……で、廻廊をった。
 大喝一声、太鼓の皮の裂けた音して、
「無礼もの!」
 社務所を虎のごとく猛然としてあらわれたのは摂理の大人うしで。
「動!」とわめくと、一子時丸の襟首を、長袖のまま引掴ひッつかみ、壇をさかしまに引落し、ずるずると広前を、石の大鉢のもとつかみ去って、いきなり衣帯をいで裸にすると、天窓あたまから柄杓ひしゃくで浴びせた。
「塩を持て、塩を持て。」
 塩どころじゃない、百日紅の樹を前にした、社務所と別な住居すまいから、よちよち、いしきを横に振って、ふとった色白な大円髷おおまるまげが、夢中でけて来て、一子の水垢離みずごりを留めようとして、身をたてはやるのを、仰向あおむけに、ドンと蹴倒けたおいて、
けがれものが、退しさりおれ。――塩を持て、塩を持てい。」
 いや、小児こども等は一すくみ。
 あの顔一目で縮み上る……
 が、大人うしに道徳というはそぐわぬ。博学深識のじゅ七位、花咲く霧に烏帽子は、大宮人の風情がある。
「火を、ようしめせよ、おきが散るぞよ。」
 と烏帽子を下向けに、その住居すまいへ声を懸けて、樹の下を出しなの時、
「雨はどうじゃ……ちと曇ったぞ。」と、と、袖をきながら、紅白の旗のひらひらする、小松大松のあたりを見た。
「あの、大旗が濡れてはならぬが、降りもせまいかな。」
 と半ばつぶやき呟き、さっと巻袖のしゃくを上げつつ、とこう、石の鳥居の彼方かなたなる、高き帆柱のごとき旗棹はたざおの空を仰ぎながら、カタリカタリと足駄を踏んで、斜めに木の鳥居に近づくと、や! 鼻の提灯ちょうちん真赤まっかな猿のつら飴屋あめや一軒、犬もらぬに、杢若があきらかに店を張って、暗がりに、のほんとしている。
 馬鹿が拍手かしわでった。
御前様ごぜんさま。」
「杢か。」
「ひひひひひ。」
「何をしておる。」
「少しも売れませんわい。」
「馬鹿が。」
 と夜陰に、一つ洞穴ほらを抜けるようなからびた声の大音で、
「何を売るや。」
「美しい衣服べべだがのう。」
「何?」
 やみを見透かすようにすると、ものの静かさ、松の香がぷんとする。

       六

 鼠色の石持こくもち、黒いはかま穿いた宮奴みやっこが、百日紅さるすべりの下に影のごとくうずくまって、びしゃッびしゃッと、手桶ておけを片手に、ほうきで水を打つのが見える、と……そこへ――
 あれあれ何じゃ、ばばばばばば、と赤く、かなで書いた字が宙に出て、白い四角なあかりが通る、三箇の人影、六本の草鞋わらじの脚。
 ともしび一つに附着合くッつきあって、スッと鳥居をくぐって来たのは、三人ひとしく山伏なり。白衣びゃくえに白布の顱巻はちまきしたが、おもてこそは異形いぎょうなれ。丹塗にぬりの天狗に、緑青色ろくしょういろ般若はんにゃと、つら白く鼻の黄なる狐である。魔とも、妖怪変化とも、もしこれが通魔とおりまなら、あの火をしめす宮奴が気絶をしないでこらえるものか。で、般若は一ちょうおのを提げ、天狗は注連しめ結いたる半弓に矢を取添え、狐は腰に一口ひとふりの太刀をく。
 中に荒縄の太いので、笈摺おいずりめかいて、ともした角行燈かくあんどんになったのは天狗である。が、これは、勇しき男の獅子舞、なまめかしき女の祇園囃子ぎおんばやしなどに斉しく、特にって練歩行ねりあるく、祭の催物の一つで、意味は分らぬ、(やしこばば)ととなうる若連中のすさみである。それ、腰にさげ、帯にさした、法螺ほらの貝と横笛に拍子を合せて、
やしこばば、うばば、
うば、うば、うばば。
火を一つ貸せや。
火はまだ打たぬ。
あれ、あの山に、火が一つ見えるぞ。
やしこばば、うばば。
うば、うば、うばば。
 ……と唄う、ただそれだけを繰返しながら、矢をはぎ、斧を舞わし、太刀をかざして、あごから頭なりに、首を一つぐるりと振って、かわがわるに緩く舞う。舞果てると鼻のさきに指を立てて臨兵闘者云々りんぺいとうしゃうんぬんと九字を切る。一体、悪魔を払う趣意だと云うが、どうやら夜陰のこの業体ぎょうていは、魑魅魍魎ちみもうりょうの類を、呼出し招き寄せるに髣髴ほうふつとして、実は、希有けぶに、怪しく不気味なものである。
 しかもちと来ようが遅い。渠等かれらやしろの抜裏の、くらがり坂とて、穴のような中を抜けてふとここへあらわれたが、坂下に大川一つ、橋を向うへ越すと、山を屏風びょうぶめぐらした、翠帳紅閨すいちょうこうけいちまたがある。おなじ時に祭だから、宵から、その軒、格子先を練廻ねりまわって、ここに時おくれたのであろう。が、あれ、どこともなく瀬の音して、雨雲の一際黒く、おおいなる蜘蛛のにじんだような、峰の天狗松の常燈明の一つが、地獄の一つ星のごとく見ゆるにつけても、どうやら三体の通魔めく。
 渠等は、すっと来て通りしなに、従七位の神官の姿を見て、黙って、言い合せたように、音の無い草鞋をめた。
 この行燈で、巣にからんだいろいろの虫は、空蝉うつせみのそのうすもの柳条目しまめに見えた。灯にひとりむしよりも鮮明あざやかである。
 但し異形な山伏の、天狗、般若、狐も見えた。が、一際ひときわ色は、杢若の鼻のさきで、
「えら美しい衣服べべじゃろがな。」
 とうごめかいて言った処は、青竹二本に渡したにつけても、魔道における七夕たなばたの貸小袖という趣である。
 従七位の摂理の太夫は、黒痘痕くろあばたしわゆがめて、苦笑にがわらいして、
白痴たわけが。今にはじめぬ事じゃが、まずこれが衣類ともせい……どこの棒杭ぼうぐいがこれを着るよ。余りの事ゆえ尋ねるが、おのれとても、氏子の一人じゃ、こう訊くのも、氏神様の、」
 とおごそかに袖にしゃくを立てて、
「恐多いが、思召おぼしめしじゃとそう思え。誰が、着るよ、この白痴たわけ、蜘蛛の巣を。」
「綺麗なのう、若い婦人おなごじゃい。」
「何。」
「綺麗な若い婦人おなごは、お姫様じゃろがい、そのお姫様が着さっしゃるよ。」
「天井か、縁の下か、そんなものがどこに居る?」
 と従七位はまた苦い顔。

       七

 杢若はむしろの上から、古綿をくわえたような唇を仰向あおむけに反らして、
「あんな事を言って、従七位様、天井や縁の下にお姫様が居るものかよ。」
 馬鹿にしないもんだ、と抵抗面はむかいづらかったが、
「解った事を、草の中に居るでないかね……」
 はたして、言う事がこれである。
「そうじゃろう、草の中でのうて、そんなものが居るものか。ああ、んと云う、どんな虫じゃい。」
「あれ、虫だとよう、従七位様、えらい博識ものしりな神主様がよ。お姫様はきのこだものをや。……虫だとよう、あはは、あはは。」と、火食せぬやつの歯の白さ、べろんと舌の赤い事。
「茸だと……これ、白痴たわけ。聞くものはないが、あまり不便ふびんじゃ。氏神様のお尋ねだと思え。茸が婦人おんなか、おのれの目には。」
紅茸べにたけと言うだあね、薄紅うすあこうて、白うて、うつくしい綺麗な婦人おんなよ。あれ、知らっしゃんねえがな、この位な事をや。」
 従七位は、白痴ばかの毒気を避けるがごとく、しゃくを廻して、二つ三つ這奴しゃつの鼻のささを払いながら、
「ふん、で、そのおのれがおなごは、蜘蛛の巣をかぶって草原に寝ておるじゃな。」
「寝る時は裸体はだかだよ。」
「む、茸はな。」
「起きとっても裸体だにのう。――
 粧飾めかす時に、うっすらと裸体に巻く宝もののうつくし衣服きものだよ。これは……」
「うむ、天のめぐみは洪大じゃ。茸にもさて、るものをお授けなさるじゃな。」
「違うよ。――お姫様の、めしものを持て――侍女こしもとがそう言うだよ。」
「何じゃ、待女こしもととは。」
「やっぱり、はあ、真白まっしろはだ薄紅うすべにのさした紅茸だあね。おなじものでも位が違うだ。人間に、神主様も飴屋もあると同一おなじでな。……従七位様は何も知らっしゃらねえ。あはは、松蕈まつたけなんぞは正七位の御前様ごぜんさまだ。にしきしとねで、のほんとして、お姫様をながめておるだ。」
「黙れ! 白痴たわけ!……と、こんなものじゃ。」
 と従七位は、山伏どもを、じろじろと横目に掛けつつ、過言を叱する威を示して、
「で、で、その衣服きものはどうじゃい。」
「ははん――姫様ひいさまのおめしもの持て――侍女こしもとがそう言うと、黒い所へ、黄色と紅条あかすじしまを持った女郎蜘蛛の肥えた奴が、両手で、へい、この金銀珠玉だや、それを、その織込んだ、透通るにしきを捧げて、赤棟蛇やまかがしと言うだね、燃える炎のような蛇のうろこへ、馬乗りに乗って、谷底からけて来ると、蜘蛛も光れば蛇も光る。」
 と物語る。君がいわゆる実家さと話柄こととて、喋舌しゃべる杢若の目が光る。と、黒痘痕くろあばたまなこも輝き、天狗、般若、白狐の、六箇むつの眼玉もかッとなる。
「まだ足りないで、あかりを――燈を、と細い声して言うと、土からもけば、大木の幹にも伝わる、土蜘蛛だ、朽木だ、山蛭やまひるだ、おれ実家さと祭礼おまつりの蒼い万燈、紫色の揃いの提灯、さいかちいばらの赤い山車だしだ。」
 と言う……葉ながら散った、山葡萄やまぶどう山茱萸やまぐみの夜露が化けた風情にも、深山みやまさまが思わるる。
「いつでも俺は、気の向いた時、勝手にふらりと実家さとくだが、今度は山から迎いが来たよ。祭礼まつりに就いてだ。この間、宵に大雨のどッとと降った夜さり、あの用心池の水溜みずたまりの所を通ると、掃溜はきだめの前に、円い笠を着た黒いものが蹲踞しゃがんでいたがね、俺を見ると、ぬうと立って、すぽんすぽんと歩行あるき出して、雲の底に月のある、どしゃぶりの中でな、時々、のほん、と立停たちどまっては俺が方をふり向いて見い見いするだ。頭からずぼりと黒い奴で、顔は分んねえだが、こっちを呼びそうにするから、その後へついてくと、石の鳥居から曲って入って、こっちへ来ると見えなくなった――
 おらあ家へ入ろうと思うと、向うの百日紅さるすべりの樹の下に立っている……」
 指したかたを、従七位が見返った時、もうそこに、宮奴みやっこの影はなかった。
 御手洗みたらしの音も途絶えて、時雨しぐれのような川瀬が響く。……

       八

「そのまんま消えたがのう。おやしろの柵の横手を、坂の方へ行ったらしいで、後へ、すたすた。坂の下口おりくちで気が附くと、おどかしやがらい、畜生めが。俺の袖の中から、しわびた、いぼいぼのあるあおい顔を出して笑った。――山は御祭礼おまつりで、お迎いだ――とよう。……此奴こやつはよ、でかきのこで、釣鐘蕈つりがねだけと言うて、叩くとガーンと音のする、劫羅こうら経た親仁おやじよ。……巫山戯ふざけじじいが、驚かしやがって、頭をコンとお見舞申そうと思ったりゃ、もう、すっこ抜けて、坂の中途のかしの木の下に雨宿りと澄ましてけつかる。
 川端へ着くと、うっすらと月が出たよ。大川はいつもより幅が広い、霧でぼうとして海見たようだ。ながれの上の真中まんなかへな、小船が一そう。――先刻さっきここで木の実を売っておったおんなのような、丸い笠きた、白い女が二人乗って、川下から流を逆に泳いで通る、ぐじゃねえ。底蛇と言うて、川にる蛇が船に乗ッけて底を渡るだもの。船頭なんか、要るものかい、ははん。」
 と高慢な笑い方で、
「船からよ、白い手で招くだね。黒親仁は俺をおぶって、ざぶざぶとながれを渡って、船に乗った。二人の婦人おんなは、柴に附着くッつけて売られたっけ、毒だ言うて川下へ流されたのがげて来ただね。
 ずっと川上へくと、そこらは濁らぬ。山奥の方はあかるい月だ。真蒼まっさおはげしい流が、白くさっと分れると、おおきな蛇が迎いに来た、でないと船が、もうその上は小蛇の力で動かんでな。底を背負しょって、一廻りまわって、船首みよしへ、鎌首をもたげて泳ぐ、竜頭の船と言うだとよ。俺は殿様だ。……
 大巌おおいわの岸へ着くと、その鎌首で、親仁の頭をドンとたたいて、(お先へ。)だってよ、べろりと赤い舌を出して笑って谷へ隠れた。山路はぞろぞろと皆、お祭礼まつりの茸だね。坊主様ぼんさまも尼様も交ってよ、尼は大勢、びしょびしょびしょびしょと湿った所を、坊主様は、すたすたすたすた乾いた土をく。湿地茸しめじたけ木茸きくらげ針茸はりたけ革茸こうたけ羊肚茸いぐち白茸しろたけ、やあ、一杯だ一杯だ。」
 とむしろの上を膝で刻んで、嬉しそうに、ニヤニヤして、
初茸はつたけなんか、親孝行で、夜遊びはいたしません、指をくわえているだよ。……さあ、お姫様の踊がはじまる。」
 と、首を横にって手を敲いて、
「お姫様も一人ではない。侍女こしもとは千人だ。女郎蜘蛛が蛇に乗っちゃ、ぞろぞろぞろぞろみんな衣裳を持って来ると、すっと巻いて、袖を開く。すそを浮かすと、紅玉ルビイに乳が透き、緑玉エメラルドももが映る、金剛石ダイヤモンドに肩が輝く。薄紅うすあかい影、青い隈取くまどり、水晶のような可愛い目、珊瑚さんごの玉は唇よ。揃って、すっ、はらりと、すっ、袖をば、すそをば、あいなびかし、紫に颯とさばく、薄紅うすべにひるがえす。
 笛が聞える、鼓が鳴る。ひゅうら、ひゅうら、ツテン、テン、おひゃら、ひゅうい、チテン、テン、ひゃあらひゃあら、トテン、テン。」
 くるわのしらべか、松風か、ひゅうら、ひゅうら、ツテン、テン。あらず、天狗の囃子はやしであろう。杢若の声をはるかに呼交す。
「唄は、やしこばばの唄なんだよ、ひゅうらひゅうら、ツテン、テン、
やしこばば、うばば、
うば、うば、うばば、
火を一つくれや……」
 と、唄うに連れて、囃子に連れて、少しずつ手足のしなした、三個みつのこの山伏が、腰を入れ、肩をめ、首を振って、踊出す。太刀、斧、弓矢に似もつかず、手足のこなしは、しなやかなものである。
 従七位が、首をまわいて、しゃくを振って、いしきを廻いた。
 二本ののぼりはたはたと飜り、虚空を落す天狗風。
 蜘蛛の囲の虫晃々きらきらと輝いて、鏘然しょうぜん珠玉たまひびきあり。
幾干金いくらですか。」
 般若の山伏がこう聞いた。その声のえんなまめかしいのを、神官はあやしんだが、やがて三人とも仮装を脱いで、裸にして縷無るなき雪のはだあらわすのを見ると、いずれも、……血色うつくしき、肌理きめ細かなる婦人おんなである。
ぜにではないよ、みんな裸になれば一反ずつる。」
 あたいを問われた時、杢若が蜘蛛の巣を指して、そう言ったからであった。
 裸体に、かずいて、大旗の下を行く三人の姿は、神官の目に、に、紅玉ルビイ碧玉サファイヤ金剛石ダイヤモンド、真珠、珊瑚を星のごとくちりばめた羅綾らりょうのごとく見えたのである。
 神官は高足駄で、よろよろとなって、鳥居を入ると、住居すまいかず、きざはしあがって拝殿に入った。が、額の下の高麗こうらいべりの畳の隅に、人形のようになって坐睡いねむりをしていた、十四になるはかま巫女みこを、いきなり、引立てて、袴を脱がせ、きぬいだ。……この巫女は、当年初に仕えたので、こうされるのがおきてだと思って自由になったそうである。
 宮奴みやっこが仰天した、馬顔の、せた、貧相な中年もので、かねてどもりであった。
「従、従、従、従、従七位、七位様、、何、何、何事!」
 しゃくで、ぴしゃりと胸を打って、
退すさりおろうぞ。」
 で、虫の死んだ蜘蛛の巣を、巫女のかしらかざしたのである。
 かつて、山神のやしろ奉行ぶぎょうした時、うしとき参詣まいりを谷へ蹴込けこんだり、とった、大権威の摂理太夫は、これから発狂した。
 ――既に、くるわ芸妓げいこ三人が、あるまじき、その、その怪しき仮装をして内証で練った、というのが、尋常ただごとではない。
 十日をかず、町内の娘が一人、白昼、素裸になって格子から抜けて出た。かどから手招きする杢若の、あの、宝玉の錦が欲しいのであった。余りの事に、これは親さえ組留められず、あれあれと追うに、番太郎へ飛込んだ。
 市の町々から、やがて、木蓮もくれんが散るように、幾人いくたりとなく女が舞込む。
 ――夜、その小屋を見ると、おなじような姿が、白い陽炎かげろうのごとく、杢若の鼻を取巻いているのであった。
大正七(一九一八)年四月

底本:「泉鏡花集成6」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年3月21日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第十七卷」岩波書店
   1942(昭和17)年1月24日発行
入力:門田裕志
校正:高柳典子
2007年2月11日作成
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