この小説は「新潮」三、五、六、七月号所載の「にっぽん物語」第一章、その一「スキヤキから一つの歴史がはじまる」につゞくものであります。以下三カ月にわたって第一章「その二」を連載し、六カ月休んで第二章を、また六カ月休んで「第三章」を、そのようにして全五章を書き終る予定であります。
 この小説にはモデルはありません。戦時内閣の総理大臣も現れますが、東条でも近衛でもありません。内乱も起りますが、五・一五にも、二・二六にも似つかない架空のものであります。歴史的真実は日本の敗戦のみ、他は人物も事件もすべて作者の創作であります。したがって、歴史には似ていないが、しかし最も真実な歴史的小説で有りうるかも知れません。

底本:「坂口安吾全集 07」筑摩書房
   1998(平成10)年8月20日初版第1刷発行
底本の親本:「群像 第四巻第一一号」
   1949(昭和24)年11月1日発行
初出:「群像 第四巻第一一号」
   1949(昭和24)年11月1日発行
入力:tatsuki
校正:砂場清隆
2008年3月4日作成
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