本年はいろいろの立派な翻訳が出た。もちろんその間に単純な優劣をつけることなどできる筈もない。しかし、世界文学史に於ける紀念碑的なラブレエの名と、フランス本国に於てさへ現代語訳を必要とするその巨大な、類を絶した傑作と、かの豪快にして微妙なゴオル精神の味得者、篤学渡辺一夫氏とを並べてみて、なにはともあれ、この種の組合せはさうめつたに見られぬぞといふ考へを多くの人々に抱かせたのである。
「賞」といふ名目は、或は穏当でないかもしれぬ。だが、この「賞」はもとより「頌」に通じる。氏は君子なるが故に、笑つて受けられよ。
底本:「岸田國士全集27」岩波書店
1991(平成3)年12月9日発行
底本の親本:「世界文学 第十三号」
1947(昭和22)年9月10日
初出:「世界文学 第十三号」
1947(昭和22)年9月10日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年5月21日作成
2011年5月30日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。