ゐろりの中に街がある、
かすかな足音きこえてる。
ランプがともり、靄がある、
庭の木などに壁などに。

靄のなかから火がもえて
てらし出される部屋がある。
屋根やご本も見えてゐる。
みんな真赤にてらされる。

ゐろりの中の街中の、
塔の下かげ行く兵士。
けれど私が見てるうち、
兵士も光も消えてつた。

かうと再び火がもえる。
ふたたび街をてらしだす。
ほうらこんどは谷もある。
ほうら兵士が又見える。

もえてるほだよ兵士らは、
どこまで行くの、聞せてよ。
ゐろりのなかの此の街は、
これは何なの、きかせてよ。

底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版
   1978(昭和53)年11月30日初刷発行
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年1月4日作成
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