斯くして現代の一般女性たちは、内外特殊の研究家の創造発表するものを容易に採り上げて自由に利用するであろう。それだけでも昔の日本女性より、ずっと進歩していると言える。物の判断に於ても感覚を広く鋭くする事によって充分に正確に処断する事が出来るものであり、また実際現代の女性たちは意識無意識に拘らず、彼女等の感覚によって大過なく日常を処置しているようである。
従って彼女等をしてその特長の新感覚に広く磨きをかけさせたく思う。色調、形式美、音等に対する感覚ばかりでなく対人的、殊に異性に対する感覚をもっと洗練させ度い。
この点、まだ現代の女性はイージーでセンチで安価な妥協をして了うのが多い。異性に対し、もっと高貴で確な潔癖を持って貰い度い。潔癖のない女ほど下等で堕落し易いものはない。潔癖を持つ事は時に孤独な淋しさが身を噛む事もあるが、恆に、もののイージーな部分にまみれないではっきりとして客観的にものを観察出来て、結局ロング・ランには正当に自己を処理させるに違いない。私は現代女性の処世法を、感覚の洗練から講じようとする態度が最も現代的だと信じている。
底本:「愛よ、愛」メタローグ
1999(平成11)年5月8日第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
1976(昭和51)年発行
入力:門田裕志
校正:土屋隆
2004年3月30日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。