洋の東西を論ぜず、世の古今を問わず、宇宙物心の諸象中、普通の道理をもって解釈すべからざるものあり。これを妖怪といい、あるいは不思議と称す。その妖怪、不思議とするものにまた、あまたの種類ありし。現今、俗間に存するもの幾種あるを知らずといえども、しばらくこれを大別して二大種となす。すなわち、その第一種は内界より生ずるもの、第二種は外界に現ずるもの、これなり。しかしてまた、内界より生ずるものに二種ありて、他人の媒介を経てことさらに行うものと、自己の身心の上に自然に発するものの別あり。ゆえに、余は妖怪の種類を分かちて、左の三種となさんとす。
第一種、すなわち外界に現ずるもの
幽霊、狐狸、犬神、天狗、鬼火、妖星、その他諸外界の妖怪
第二種、すなわち他人の媒介によりて行うもの
巫覡、神おろし、人相見、墨色、卜筮、予言、祈祷、察心、催眠、その他諸幻術
第三種、すなわち自己の身心の上に発するもの
夢、夜行、神知、偶合、再生、俗説、癲狂、その他諸精神病
このうち第一種の狐狸、犬神等は、第三種にも属すべし。
以上の種類に関する事実御報道にあずかりたく、追ってその解釈は「講義録」中に掲載するか、あるいは特別に館外員講義相設け、講述いたすべく候。第一種、すなわち外界に現ずるもの
幽霊、狐狸、犬神、天狗、鬼火、妖星、その他諸外界の妖怪
第二種、すなわち他人の媒介によりて行うもの
巫覡、神おろし、人相見、墨色、卜筮、予言、祈祷、察心、催眠、その他諸幻術
第三種、すなわち自己の身心の上に発するもの
夢、夜行、神知、偶合、再生、俗説、癲狂、その他諸精神病
このうち第一種の狐狸、犬神等は、第三種にも属すべし。
出典 『哲学館講義録』第一期第三年級第五号、明治二三(一八九〇)年二月一八日、一頁。