しろくまは、ほっきょくかいに のぞんだ アラスカ または シベリアに すんで います。しろくまは、みずの なかへ はいって およぐ ことも できます。まっしろな けが ふさふさと して、かわいらしい を して いますが、それは たけしい けものです。
 ある とき、しろくまの ははおやは どもたちを つれて、ひょうざんの うえで あそんで いました。
「おかあさんの そばを、はなれては いけません。」
と、いいきかせました。
 けれど、一ぴきの いう ことを きかぬ ぐまは、かってに うみどりを おいかけて いました。この とき、パチンと おおきな おとが して、こおりの かたまりが 二つに われました。
 ぐまの のった こおりの かたまりは あちらへ ながれて いきました。オーロラの かがやく そらの したを、ずんずん ながされて いきました。
「こまったなあ。」
と、ぐまは おもいました。

 きしに つくと、けがわを きた エスキモーの おじいさんが、しのびよって、ふいに あたまから、あみを かぶせました。ぐまは いけどりに されたのです。そうして、おりに いれられて、とおい まちの どうぶつえんへ おくられました。
 まちの ぼっちゃんや じょうちゃんたちが ぐまを かわいがりました。おいしい パンや ビスケットを なげて くれました。ぐまは ときどき おかあさんを おもいだして、
「ウオー。」
と、なきます。

底本:「定本小川未明童話全集 16」講談社
   1978(昭和53)年2月10日第1刷発行
   1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
※表題は底本では、「しろくまの 子(こ)」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:Juki
2012年7月16日作成
2012年9月28日修正
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