其後ハ益御勇壮可御座大賀候。然ニ彼紀州の船の儀論(ママ)※(二の字点、1-2-22)申上り、明日か今日か戦争とヒシメキ候中、後藤庄次郎も大憤発ニてともに骨折居申候。此頃長崎中の商人小どもニ至るまで、唯紀州をうての紀州の船をとれのと、のゝしり候よふ相成、知らぬ人まで戦をすゝめに参り申候。紀州とハ日※(二の字点、1-2-22)談論とふ/\やりつけ今朝より薩州へたのみてわびを申出候得ども、是迄段々無礼致候事故、私もゆるし不申、薩州よりハイロハ丸の船代又中荷物代を立替候て、其上紀州の奉行が御宿へまで出し、御あいさつ致候得バよかろふなど申候ニ付、私しハそふすれバ一分(いちぶん)も立候得ども、曽而(かつて)鞆の港へすておかれ候事ハ、是ハ紀州より土佐の士お、はづかしめ候事故に、私ニあいさつ致した位でわすみ不申、主人土佐守へ御あいさつ被成べしなど、今日ハ申居候、(いづ)レ此儀も又打こわれたれバ、一戦ニて候得ども、なにぶんおもしろき御事ニて候。先ハ御きづかい(くださるべく)と存じ、今のまゝ早※(二の字点、1-2-22)申上候。
頓首。
廿八日
九三先生
御直披
才谷

底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙の写真のキャプションに、(東京 伊藤家文書)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年8月26日作成
2011年6月17日修正
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