其後ハ御遠※(二の字点、1-2-22)敷奉存候
此頃定而御きづかい被遊候ハんと奉存候。然ニ私共英太郎共皆※(二の字点、1-2-22)ぶじニ出(精)仕候。
何卒今年中御まち被成候得バ、おもしろきはなし御聞ニ入候。当時ハさつまのやしき(屋敷)おり申候。
このころ将軍家大坂ニ参り、長州を征し候儀もあり候へども、大軍唯むへき(無益)に日をついやし候のみニて、何の事もあり不申候。
池蔵ハ此頃八度の戦ダン※(二の字点、1-2-22)軍功もこれあり、此頃長州ニては遊撃軍イウゲキグン参謀サンボヲ(はかりごとにあづかる人)と申ものニなり、其勇気ありて諸軍をはげまし候事故、もの見のヤクをかね一軍四百人真先マツサキニ進ミて、馬上ニて蔵太がはた(旗)ひとながれもたセ候事ニて候。
惣じて土佐より出候ものハいづくニても皆大将致し又戦ニも一ばんつよく、よくうち死致し候ものおふく、あハれ今、土佐の政をつがふよく致候時ハ、天下ニ横行の国と申され候べく。
ざんねんニて候。

底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙写真のキャプションに、(高知県立歴史民俗資料館蔵)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年11月11日作成
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