到底こゝには記し切れぬ程、生涯の自分の芸術の対照となすべく充分と思ふ程の病的心理がある――或日はさう思ふ。次の日には――そんなことに興奮したのは幼稚な感傷であつた、と打ち消す。また次の日には――それは愚かな対他的な理性で、わが本来の性癖は第一のことに根す、といふ風にも考へる。この三つの感情に悩されること夥しい。これが現在の自分の最も苦しい変態心理である。以上。

底本:「牧野信一全集第一巻」筑摩書房
   2002(平成14)年8月20日初版第1刷
底本の親本:「変態心理 第十一巻第一号(一月号)」日本精神医學会
   1923(大正12)年1月1日
初出:「変態心理 第十一巻第一号(一月号)」日本精神医學会
   1923(大正12)年1月1日
※底本編集時に付されたと思われる、表題冒頭の「●」は省きました。
※「私の変態心理」と題したアンケートへの、回答です。
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2011年5月26日作成
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