ある先輩が経営することに決つた其鰤敷魚場は今月(十一月)から来年の六月迄房州の何某村(村名を今ちよいと失念した)で行はれる。僕は其処に赴いて働くであらう。艫を漕ぎ、網を引き、魚を担ぐであらう。合宿所に投じ、未明に起床し、黄昏時に就寝するであらう。黄昏時に起床し、見張船に徹宵し、魚群到来を合図するトラムペツトを吹き鳴すであらう。獲物を満載し、旗を翻して夜あけの渚に凱旋し、歓乎の声を挙げるであらう。海、海、海、舟々々、行かう!
 これが、一番はつきり定つてゐる計画で、希望。

底本:「牧野信一全集第三巻」筑摩書房
   2002(平成14)年5月20日初版第1刷
底本の親本:「文學時代 第一巻第八号(十二月号)」新潮社
   1929(昭和4)年12月1日発行
初出:「文學時代 第一巻第八号(十二月号)」新潮社
   1929(昭和4)年12月1日発行
※底本編集時に付されたと思われる、表題冒頭の「●」は省きました。
※「来年は何をするか――一九三〇年に対する私の希望・抱負・計画――」と題したアンケートへの、回答です。
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2011年8月1日作成
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