いつもカキ色のシヤツを着て牧場から町へ、フオード自動車を操って乳を運んでゐる村の牛乳屋の娘を僕は知つてゐる。天気の好い休日には娘の操る車に、村のあらゆる階級の若者、主に娘達が乗り込んで、屹度何処かへ遊びに行く。健康と明快と原始性と――娘の車の中を観察したら微笑むべき一九三〇年型を見出すだらうと思ふが。

底本:「牧野信一全集第三巻」筑摩書房
   2002(平成14)年5月20日初版第1刷
底本の親本:「若草 第六巻第一号(新年特別号)」宝文館
   1930(昭和5)年1月1日発行
初出:「若草 第六巻第一号(新年特別号)」宝文館
   1930(昭和5)年1月1日発行
※底本編集時に付されたと思われる、表題冒頭の「●」は省きました。
※「一九三〇年型」と題したアンケートへの、回答です。
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2011年7月14日作成
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