わが故郷前橋の町は赤城山の麓にあり、その家竝は低くして甚だ暗し。

ふもとぢに雪とけ、
ふもとぢに緑もえそむれど、
いただきの雪しろじろと、
ひねもすけふも光れるぞ、
ああいちめんに吹雪かけ、
吹雪しかけ、
ふるさとのまちまちほのぐらみ、
かの火見やぐらの遠見に、
はぜ賣るこゑもきれぎれ、
ここの道路のしろじろに、
うなゐらのくらく呼ばへる家竝に、
吹雪かけ、
吹雪しかけ、
日もはや吹きめぐり、
赤城をこえてふぶきしかけ。
―郷土景物詩―

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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