帯と湯道具を片手に、細紐だけの姿で大鏡に向ひ、くしをつかつてゐると、おきよが、ちよつと、しげちやん、あとで話があるんだけど、と云つた、――あらたまつた調子も妙だが、それよりは、平常は当のおしげをはじめ雇人だけではなく、実の妹のおとしや兄の女房のおつねにまでも、笑ひ顔一つ見せずつんとしてすまし込んでゐるのに、さう云ひながら、いかにも親しさうな眼つきでのぞき込んだのが不思議であつた。
「なにさ」――生れつき言葉づかひが悪くて客商売の店には向かぬとよくたしなめられるのだが、この時も相手が主人すぢの女にもかかはらず、おしげはぶつきら棒に云つた。
 おきよは、もう男衆が流し場を磨き、湯桶を片づけはじめた中で、ゆつくり襟白粉をつけてゐる妹たちをちらと見て、さア、二人でさきに出ちまはうよ、と促した、何が何だか判らないままに、おしげは押されるやうにして湯屋の表へ出た、もう冬近く、すぐに初酉はつとりなのに今年は例年よりあたたかくて、吹く風も湯あがりの上気した頬に快かつた、馬道うまみちの大通りにまだ起きてゐる支那ソバや十銭のライスカレーを食はせる店があつた、おごるわよとおきよはガラス戸を開けた、公園の稼ぎから帰る小娘や、自動車の運転手たちが夜食をしてゐるのを横眼に、汚れたテーブルにつくと、おきよはメニューを眺めながら、あんた何がいい、と聞いた、さうねえ、とおしげは壁の品書しながきを見上げて、私、トーストをいただくわ、ヂャミの、とそこはやはり御馳走になるので丁寧に答へた。
 おきよはひじをついて、ぢつと彼女に眼を注いだ、いやよ、そんな、――とおしげは指さきで眼頭を触つた、同じ店で客相手に働いてゐても主人の妹であるのを笠にきてゐる彼女は、いくらおしげが虫が好かないひとだと思つてゐても、かうやつてゐると年上ではあるし、評判の美しさにされるのであつた。
「何ですの、――御用つて」
 気がかりだから、早く云つてと促した。
「――あんた、この頃、いやにめかすのねえ」
 おきよに云はれて、故もなくおしげは赤くなるのを感じた、さうか知ら、めかしているか知らと彼女は、意地の悪いおきよが、いくら磨かうたつて、下地したじがいけないんだから、と嘲つてゐるやうな気がした。
「無理ないわ、十七だもの」
 ふつと、彼女は下唇を出して笑つた。
「私、男みたいだつて、いつも母ちやんに云はれてるのよ、もつと、いい加減に大人らしくしたらいいぢやないかつて――」
「さうよ、もう大人よ、あんた――」
 あら、と云つておしげはまた真赤になつた。汗が出るほどで、そつくり冷くなつてゐる手拭ひを取りあげたりした。
「ねえ、しげちやん、――私、あんたの肩を持つわ、しつかりおやりよ」
 どちらかと云へば昔風の長めの顔をかしげて云ふのであった、おしげは黙つてゐた、わけが判らなかつた。
「――義姉ねえさんに遠慮することなんかありやしない、そのうち、兄さんと相談してあんたの身の立つやうにしたげるわ、きつと」
 お待ち遠さまと、あつらへの品を持つて来たので、おしげは、はつと狼狽したの悪さを辛うじて隠し得た、それ、あちらとおきよはボーイに云つて、自分は支那ソバを受け取り、おあがり、と箸を割つた。
 おしげの胸はどきどきしてゐた、――この人はあのことを知つてゐたのか、しかし、まさか、と打ち消すのであつた、ちよつと疑ぐつてゐる位なのを、日頃にないやさしさで味方面みかたづらして一切を聞き出さうとしてゐるのではないか、その後に来るものが恐しい、油断してはならないと彼女はおのづと警戒した。
「すみませんが、おひやを頂戴」
 おしげは水を貰つて、トーストを食べた。
「――本当よ、あの義姉ひとの鼻をあかしてやりたいのさ、威張りかへつて胸くそが悪いつたらありやしない、お客と云ふお客はみんな自分の器量にひかされて来ると自惚うぬぼれてるんだものねえ」
 さう云ふおきよはどうだらう、とおしげはをかしくなつた、――きのふ朝飯の時、他の女たちに聞えよがしにだが、しげちやん、誰さんと誰さんとは私のお客だからとらないでね、とヒステリみたいに叫んだ、彼女こそ今でもお客は自分を目当にしてゐると思ひたがつてゐるのではないかと、おしげは、お相憎あいにくさま、ふふんだと肚の中で呟いた、だが、考へやうによつては、おきよが苛々いらいらしてゐるのももつともだと云ふ気がしないではなかつた、どうせ、飲み屋のことだから、そこで働く女の一人一人が俺が俺こそが客を持つてゐるとの自惚うぬぼれがなくてはかなはないとだけではない、おきよにはおきよの古い思ひ出があつたはずだ、――おしげはまだ富士小学校に通つてゐる頃から、よくおきよの噂を聞いたものであつた、「たむら」のきよちやんと云ふ名が屡々しばしば男たちの唇に乗つた、一時は浅草での二三人ゐる評判娘のうちに数へられて、小さなおしげなぞも何とはなしに憧れの心持を抱いてゐた、公園へ遊びに来ては友だちとしめしあはせて、その頃はまだ今のやうに店をひろげてゐなかつた「たむら」の前をうろうろして、彼女の姿をひとめでも垣間かいま見ようとしたこともある、あたいなんぞ、あとからついて行つた、あたいの顔を見て、笑つてたよなぞと云ふ友だちもあつたほどだ、美貌で、綺麗な着物を着、男たちに騒がれて、毎夜のんきに酒間のあつせんをしてゐる、おしげなぞの理想であつた、実際、以前はおきよをはりに客は来てゐた、評判娘と云ふ名前だけで通ふのもあつたらうし、毎夜うるさく歓心を得ようとしてゐるのもあつた、唯一度二度のお義理の酌に、すがるやうに下手な常談口をきいて、だらしなく悦んで笑つてるのもきつと見られた。
 おきよはその白い額やつんと高い鼻を尚一そう電燈の下で気取らせて、きれの長い眼をやすやすと動かさず、ぢつとどつか中有ちゆううを見てゐるのが癖であつた、それでもその傲慢がうまんなのさへもある時期には客に魅力であつたらしかつた、しかし、そんな時期はもうすぎ去つてゐた、おしげが去年ある宿屋に奉公してゐたのが、「たむら」へ移ると聞いてどんなにうれしかつたかも知れない、あすこのきよちやんと一しよに住むと思つただけでぞくぞくして、何とはなく肩幅が広く昔の友だちに手紙でらせてやりたい位であつた、母親が悪い条件で前借をしたのもあまり苦にならなかつた、お目見得に来た時も、特別丁寧におきよには挨拶して、うつとりと眺めてゐた、ところがここへ来てからは次第に幻滅がして、これがあの心躍らせてゐたおきよちやんかと妙な気のすることもあつた、主人の妹だからと威張るのならまだいい、無精たらしくてけちんぼで、口汚く小言ばかり云つてうるさかつた、ひやつとするほど、惨酷な言葉を召使や出入りの商人にあびせかけた、底意地の悪さには泣かされた、――それよりも、彼女の店での人気がうすれてゐるのには、おしげも驚いたのだ、妹のおとしが代つてみんなにちやほやされてゐた、兄嫁のおつねも色つぽくて受けがよかつた、おしげだつて気性を買はれて何とかとか云ひ寄る客も少くはない、かつては客と云ふ客が、おきよのために高い酒を飲んだのであらうが、近頃は、他の女たちの方がわいわいと云はれて、おきよはますます硬い表情でとり残されると云った工合であつた、不健康な生活のために二十五だと云ふのに、肌理きめすさんで、どことなくくづれて来た容貌がすでに男をかなくなつただけではなく、いびつな性格がさうなるとますます露骨になつて不愉快であるらしかつた、それでも店へ出ることはもとよりやめなかつた、いつまでも「たむら」の看板娘であると信じてゐたかつた、わざとまたそのやうな振舞をするので無理が眼立ち、反感と滑稽さを同時におぼえるのであつた。それでも何かの工合で、ひよつと彼女の表情にも寂しいかげのさすことがある、酔つ払ひの声に女の嬌笑けうせうがいりみだれてゐ、おしげ自身もいい気になつてお銚子の代りを取りに立つと、ふと料理場の入口でおきよが青白いまでに哀しげな風にこちらの賑かさを見てゐるのだ、何かにつき当つたやうに、おしげははつとしたがその時はもう、おきよはいつもの自分をたのんだうそぶいた冷さに戻つてゐた、どうかしてもう一度人気をとり戻したいと焦つてゐるのは、気を変へたやうに愛嬌をつくつて客席へ出て行くのでも察しられた、もしも、彼女に幾分気があつたが、相手にされないのでいつか遠ざかつてゐた昔馴染むかしなじみの客がなつかしげに現れたりすると、彼女はすつかり勢づいて声をはずませるのであつた、まア、おめづらしい、と以前はそんなにべたべたしなかつたであらうに、側へくつついて、やつぱり忘れないで来てくれたのねえと、大声で誰の耳にも聞えるやうに、ほら、あの人はどうした、いつも一人でべらべらしやべつて私たちを大笑ひさせてさ、そのくせ、自分はちつともをかしくないつて風で、散々笑はせたあとは、むつつりと苦が虫を噛みつぶしてゐた人さ、なぞと知人をあげて消息をたづねたりした、私にラヴレター呉れた、足の悪い絵の先生だつた人もゐたぢやないの、とわざとしつこく云つたりした、ああ、あれか、あいつは、なぞとその男も答へながら、家の中を見廻して、「たむら」も随分変つたぢやないかと懐旧の念にたへがたさうにすると、調子づいて、ええ、ほんとにねえ、すつかり下卑げびて了つたでせう、もとの方がいいんだけど、何だかかうしなければ、大衆的にしないと人が寄りつかないんですつて、だから、お父つあんの頃とは方針、むつかしいわね、経営方針が変更したのよ、田舎者ゐなかものが増えるばかりだからねえ、と言葉を合せるのが習慣になつてゐた、さうしたお客も永くはおきよに興味をつないでゐないのもまた、例になつて了つた、おや、あれはとしちやんぢやないかと、おきよの容貌があまり汚くなつてゐるのに、こんな女にのぼせてゐたのかと白々しくさめる気持を味ひつつ、ふと他のテーブルの客とむだ話してゐる妹娘に眼をとめて云ふ、さうよ、大きくなつたでせうと、おきよも仕方なく、ちよつと振向いて、若い彼女をねたましく思ふ、彼女の馴染客はさうかねえ、まだ小学校の洋服を着てよくここへ出ては、僕に宿題の算術を教へてくれなんて云ったものだが、とし坊、ここへ来ないかと、もうおきよをさし置いて、おしげと同い年の妹の生毛立つた清潔な美しさに誘はれたりした、それが一度や二度のことではなく、おとしでなければ、ほうあれが若旦那のかみさんとあるひはおつね、ある場合は、なかなか浅草つ子ぢやないか、あの気持がうれしいなぞとおしげにと、客は心を移して行つた、おきよはとり残され、孤独のためにひがみが募つてひとの客をるなんて、そんなことまだ浅草ぢや聞かないよとわめくやうになつたのだ。
 ――彼女が義姉に口惜しがつてゐるのは、さうした人気の問題だけではなかつた、品川のかなり当世風に華美にやつて盛つてゐる大料理店の娘であるおつねは年こそおきよより一つ上だが、女としての磨きがかかる一方で脂ものり、稍々やや丸顔の小肥りの身体は男たちの軽い浮気心を唆るに充分であつた、それに、おきよに較べると、ぎすぎすしたきつさがなく態度も気さくで、人を見ては軟くしなだれかかり、色つぽいことを口にし、もとめに応じては端唄都々逸はうたどどいつのひとふしもやらうと云ふので、おきよが、草餅やだるま茶屋のねえさんでもあるまいし、あんなによくも平気でいやらしく出来たものだといくら蔭口を利いても、男たちは騒ぎをやるのだ、義姉さんは、あの人とあやしいんぢやないか知らと、わざと兄の豊太郎の前で云つて、兄さん気をつけなきや駄目よ、なぞとからかつた、彼らは恋仲で、同じ浅草公園のすしやの旦那であるが、他に有力な競争者があつたのにも拘らず、それを排して一しよになつたほどだから、おつねは飽くまでも彼のいい女房であつた、彼が相当の女蕩をんなたらしであり今どこで何をしてゐるか判らないどころではなく、時たまいやな噂も耳にするが、それでもおつねの豊太郎への心づくしは変らなかつた、そのむつましさが、おきよには、さうと意識したくはなかつたが、何とはなしに腹立たしかつたのは事実だ、お父つあんが死んでからはこの「たむら」が、眼に見えずむしばまれるやうに他人のものになつて行く、そんな不安がぢりぢりとこみあげて来て、鳩尾みづおちのあたりがきうといたんだ、――と云ふのは、相手さへあれば彼女が不平を云ふやうに、かつての「たむら」特有の、彼女流に云へば、「江戸つ子風」の空気は消えて了つてゐた、それは、店の経営が借銭ばかりふえて行きづまつた際、おつねの実家から莫大の金を出資してくれたため、そちらの意見を入れなければならず、これも彼女のいやがらせの表現だが、「まるで街道すぢの宿場茶屋みたい」にした、つまり店の小粋な設備も座敷を取り払ひ、一切腰かけにしたし、値段書きもはつきりと出し、雑駁ざつぱくな趣味のないものになつて了つたからである。お父つあんのやりやうはあくまでも旧式で、生きのいい本場ものを、それだけ高く食はせ、酒も樽やレッテルを信用せず、いちいち口喧くちやかましく吟味し、自分でききざけしてから出すといつた風であつた、気にいらない客は突慳貪つつけんどんに追ひ立てを食はせ、買ひ出しに行つても思ふやうなねたが手に入らないと、本日売切の札を出したり、少くとも酒だけの客を取り、板場の自分はさつさと休んで金車亭の昼席へ寝ころびに行つて了ふのだ、死んで豊太郎の代になつてからも、さうした気風が残つてゐて、収支つぐなはないまでに到つたとも云へた、そんな莫迦ばかな商売下手はないと、おつねの父親は金を投げ出すとともに、今どきの客にそんなものを食はせたつて猫に小判みたいなもんだ、安くて見てくれさへよけれや、場ちがひもので結構、酒だつて宣伝のよくきいてゐるものなら中実なかみのことなんかどうだつてかまやしない、と放言して、品川と同じ品を納れるやうになつた、彼の野心は、「たむら」を自分の店の浅草支店と改称させたかつたが、さすがそこまでは云ひ出せず、「たむら」の売れた名が客を持つてゐるなら仕方ないが、もしさうでなければ、何とか縁起のいい、ぱつとした屋号をつけるのが得だね、とだけ云つた、借りた金は、店の景気の立ち直るにつれ、それみな、俺の云ふ通りまちがひねえだらう、と恩にきせられながら、少しづつ返却してゐた、それがまたおきよの癪に触つた、くれてやつたやうな大きな顔しやがつて、今にきつと利息を取り立てに来るんだらうよとにくまれ口をきいた、まアさう云ふなよ、お前の嫁入り仕度は品川でしてくれるつてんだからと兄の豊太郎がとりなし顔で云つた、いやですよ、誰があんな田舎ばくちみたいなやつに、と口応くちごたへするおきよは、家の中で、おつねにぶつかつても、ぷいと横向いて、言葉一つかはさなかつた、兄嫁にしても小姑こじうと根性つて何ていやだらうと、眉をしかめ、お互に欠くべからざる要事があれば、豊太郎を通じて弁じるやうな仲になつてゐた。――
「何も私に隠すことなんかないぢやないか、え、しげちやん」
「――隠しやしないわ」と、彼女はジャムのついた唇を拭うた。
「なら、白状しておしまひ、兄さんはよほどあんたが好きらしいのね」
「――どうして、そんなこと云ふの」
 鼻を上向きに、おきよは笑つて、
「およしよ、白つぱくれるのは、――まだ、何か食べるでせう、私はケエキを貰ふわ、あんたは」
 トンカツを三つね、とガラス戸をやかましく云はせて、出前の註文であつた。
「私、もう結構」
「遠慮しなくてもいいわ、――ドオナツをおあがり」
「――そいぢや、牛乳をいただくわ、だけど、悪いわねえ」
 さう云つて、おしげはくすと笑つた、彼女の客で、牛乳屋の若主人がゐて、独りでは恥しいと、いつも大ぜいの友人を連れて来ては、みんなにひやかされながら、結局はたかられて高いものについてゐるのを思ひ出したのだ。
「何さ、いけすかない、思ひ出し笑ひなんかして」
「いいえ、――おつぱい屋のこと」
「ああ」と、ちよつと冷い顔をして聞き流し、すぐにもとに戻つて、
「こなひだ、私、見つけちやつたんだよ」
 くすぐるやうな眼つきに、おしげは耐へられなかつた。
「――ね、裏口でさ、兄さんもなかなか大胆ね、昼間つから、あんたを抱いたりしてさ」
 あたりをはばかつて小声ではあつたが、十七の小娘はゐたたまらぬ感じで、うつむいてゐた、――見られたのかと思ふと、すべての非が自分にあるかのやうに、彼女らしくなく、おどおどした。
「――怒つてるんぢやないのよ、ほめたげる、と云つてはをかしいけど、まア、私の云ふ気持も解るだらう、義姉ねえさんは少し増長してるから、うんと痛めつけてやりたいのよ、――ねえ」と、煽動しにかかつた。
「お砂糖入れるの、――早くお飲みよ、場合によつちや、兄さんを取りかへしたつていいんだから、しげちやん、その覚悟があつて」

     ○

 半月と少し前、おしげはあやまちを犯して了つたのだ、――生々しい記憶でありながら、まるで他人事のやうに茫然とした感じであつた、事実であることだけがはつきりしてゐて、その時の自分の性根や行動がいくら考へ直しても掴めなかつた、とんでもないことをしたとの後悔も自分の身体でなくなつたやうな生理的な不快さが残つてゐる間だけで、それが日を経て失くなると、何とも思はなくなつてゐた、その後悔も翌日になつてやつと胸に湧いて来たので、豊太郎の懐に飛び込んで行つたのは、誰かに復讐ふくしうするやうな、酸つぱくて哀しい感情に押されてであつた。
 誰かに――と云ふことだけはおしげによく解つてゐた、母親と、義理の父と云ふのさへいやな、母親の近頃の連れあひ新吉とに対する意地からにちがひなかつた。
 朝から秋雨が降つてゐた、奥で働いてゐる女中のおふぢに云はれて、裏口へ出て見ると、母親のおはまが傘のしづくを切りながら、立つてゐるのだ、またかとその要件は察したが、
「なアに」と、わざと不機嫌に云つた。
「けふ、お休みを貰へないかい」
「駄目、十五日ぢやないの、――それにゆうべからお神さんが品川へ帰つてるんだもの」
「困つたねえ、どうしたもんだらう」
 大袈裟おおげさに沈み込んで見せるのを、
「先月、病気して休んだんだから、当分ぬけられないわ、――用事はそれつきり?」
 いかにも忙し気に、店を拭いてゐた雑巾をもてあそんだ。
「――そこを何とか若旦那にお頼み出来ないだらうか」
「うるさいのねえ」
「――私はかまはないんだけど、新吉さんに恥をかかせるわけにはいかないからね」
 おしげはむつとした、――自分の亭主を新吉さんなんてさんづけにしてゐる、さう思ふと、どうせ、さうよ、母ちやんは私なんかより亭主の方が大事なんだからと、駄々児のやうに呶鳴どなりたくなつた。
「さう、新吉さんのためなら、私はどうなつてもいいのね」
「そんな、――お前」
「知らないわよ、――私のお給金の前借りばかりしやがつて」
 そこまで云ふと、おしげは感情がこみあげて、咽喉がつまつたが、辛うじて泣かなかつた。
「――義理でも、お父つあんぢやないか、そんなひどい口をきくもんぢやないよ」
 おはまはまだ三十七であつた、――おしげの実父と死別れてから、色んな男とついたり離れたりして来た、篠原新吉と云ふ公園で何をしてゐるか誰も知らない男と一しよになつたのは、去年の夏すぎで、彼女よりも年下であつた、別に形相ぎやうさうは恐しくはないが、油断のならない眼を冷く据ゑて、グリグリに青く頭を刈りつめ、ずんぐりと脊は低くかつた、全体にうす気味が悪いと云ふのが当つてゐた。
「何がお父つあんなのさ、義理なんかありやしない、あんな働きのないやつ」
 おはまも、土手の蹴とばし屋の女中をしてゐた、母親と娘と二人で男を養つてゐるわけであつた。
 それから、彼女はおしげにくどくどと訴へはじめた、――福ずしの旦那に、新吉さんがかたく約束したのだ、旦那はおしげに気があつて、ならば「たむら」をよさせて、自分の店に引取りたがつてゐた、と云ふのは、おはまの表面的な穏かな云ひ方にすぎず、子供の頃から仲たがひしてゐる豊太郎と、おつねを争つて負けた後、未だ独身の彼は、露骨におしげを妾にと望んでゐたのだ。出入りしてゐる新吉がそれを安受け合ひして来たのであらうとは、おしげにも想像できた、――そして今日は東京劇場へ連れて行くと云ふので、彼はきつと御伴おともさせますと引き受け、前売切符を二枚用意してあると云ふ。
「後生だから、何とかしとくれよ――さうでないと、新吉さんの顔はまるつぶれぢやないか」
 おはまは娘を掻き口説いた。
「勝手ぢやないの、そんなの私の知つたことぢやないわ」
 取りつく島もなかつた、忙しいんだから、帰つてよ、とおしげはづけづけと云つた。
「考へてみなさいよ、――福ずしさんと遊びに行くからと云つて、うちの旦那に暇が貰へると思つて?」
 雨は一層きつくなつた、その中を母親は帰つて行つたが彼女が困れば困るほどいい気味だと、おしげは痛快だつた、そのくせ、すぐあとから、また新吉にののしられてゐるのではないかと心配になつて来た、いつも二言目には、うちのあちやんが、と云ふのが口癖で、心の底からおはまを愛してゐる彼女は、さうなると、いよいよ新吉に憎悪の念を集めた、どうして母あちやんみたいないい女があんな下らない男に惚れてるんだらう、別れちまへばいいのにと、彼女は母親を独り占めにしたくなつた、せめて、もう少しお父つあんと呼ぶだけの価値のある人間だつたら、どれだけ肩身が広いだらう、定休日にもすすんで、象潟町きさかたまちの足袋屋の二階――おはまが間借りをしてゐるところへ戻つて、延び延びと骨休みもし、あまつたれも出来ようと情なかつた、どうかして、新吉と別れさせる方法がないものかと考へてゐた。
 土曜日の十五日で、店は転手古舞てんてこまひの忙しさであつた、おまけにおつねが留守のため、手が足りなく、ぼうつとして九時すぎ料理場で立つたままおそい夕飯を食べてゐると、帳場にゐた豊太郎が眼顔で、早く二階へ昇つて了へと教へてゐるのだ、え、と聞きかへして、はつとした、店の方から、新吉の乱暴な言葉が伝つて来た。
「いけない、隠れて」と、旦那が云ふので、食ひさしの茶碗を棚へ置き、足音を忍ばせて、階段を昇つた、上は彼女たちの寝室になつてゐた。
 響いて来る新吉の怒り声に、ああ、いやだ、いやだ、とおしげは小娘らしい感傷で、私ほど不幸せな女はないと悩むのであつた。頭が痛いほど口惜しくつて、いつそ、下りて行き、お前は一体何だ、何をうるさく因縁をつけに来やがつたんだと呶鳴りかへしてやらうかと立つたり坐つたりしてゐた、しかし、それもここの家の迷惑を考へては、よほどのことにと畳を蹴立てて走り出しさうになるのをひかへねばならなかつた。
 ざアざアと屋根を叩く雨の音が彼女を落ちつかせた、窓を開くと、さすが冷気が流れてゐて、微かに煙るアーク燈の光りのあちらに五重の塔がくすんだ影を陰欝に浮き立たせてゐた。
 朝からの気疲れがおしげの身体を包んだ、新吉なんか怖かないやと思つてゐるうちに、そこにもたれてほんの暫くまどろんだ。
 いい加減の頃合を見計つて、おしげは階下の様子をうかがつた、新吉はもうゐないらしいので、そつと下りた、旦那をはじめ、雇人たちに、すみませんを繰りかへして謝るのが辛かつた、おきよやおとしが、しげちやんの母あちやんも大へんな御亭主を持つてるのね、と皮肉を浴びせた。
 女たちは店をしまつて、お湯へ行つた、おしげだけはあまり頭がづきんづきんするので、よして独りでことこととそこいらを片付けてゐた。
「おしげ」と旦那が呼んだ、――「話があるから、あとで来てくれ」
 若い夫婦の部屋は離れになつてゐた、雨の中を小走りに行き、濡れた髪の毛に触つて見てから、
「ごめんなさい」と、障子を開いた、お神さんは今夜も品川から帰れぬと電話があつて、豊太郎が一人で、三味線や置きものをうしろに、火鉢に手をかざしてゐた。
「お入り」
 彼は何故か苦が笑ひをしてゐた、火鉢の前においでと云つて、
「――何だつてね、福ずしがお前をほしがつてるんだつてね」
「さア、よく知らないんですけど――」
「さうかい」と、煙草を取りあげた。
「あいつがお前に何とか云つたら、承知するつもりなんだね」
「――いやだわそんなこと」
 おしげはむきになり、言葉づかひを忘れて、打ち消した。
 豊太郎はうなづいた、それから、調子をかへて静かに云ひ出したのだ。
「――笑はないで聞いてくれ、本当を打ちあけると、私は随分以前から、お前が好きだつたのだ。けれど、主人を笠に云ひ寄つたなぞと思はれるのも業腹ごふはらだから、ぢつと押へて黙つてゐた」
 おしげは、常日頃客たちとふざけて、際どい冗談も平気で云つてゐたが、こんな風に二人だけゐて、真面目に手を取らんばかりにされた経験はなかつた、どうしていいのか迷つて了ひ、があんと耳鳴りするのに、心はうろうろするばかりであつた。
「一生云はないつもりでゐた、――ところが、今夜、福ずしのことを知つて了つたんだ、さうなると、私もおとなしく引込んでゐるわけにはいかない、私は福ずしとは昔から含みあつた仲だ、私にも意地があると云ふものだ」
 おしげはうなだれて、唯わくわくとしてゐたが、意地と云ふ言葉にその胸をつかれた、ほろにがいものが走つた。
「――私の気持を――」と、尚も豊太郎はやさしく云つてゐた、おしげは、どうでもなれ、と新吉たちの姿を眼の底に焼きつけながら、彼のなすままにまかせた、女蕩をんなたらしの旦那に誘惑されるのもお前たちの罪だぞと一生懸命に罵りつづけて、堕落してやるぞ、堕落してやるぞと思つた。
 おしげは旦那を別に好いてはゐなかつた、どちらかと云えば、生白くにやけて、毛髪の薄く眉目びもくなぞも、はつきりしないやさ男ぶりは、気に入らなかつた、お神さんや、他の女たちにべたべたするのも、男らしくなくて、あき足らなかつた、――普通ならば、いかに手練手管てれんてくだを弄されても、身を投げかけることはしなかつたかも知れない。
 さうした事件があつてからは、彼女は豊太郎にふと愛情を抱きはじめてゐる自分を発見してびつくりした、おつねが帰つてゐるので、二人だけで逢ふ機会はなかつた、何かの調子で眼があつたりすると、彼女は動揺して、彼の方に惹きずられる力を感じた、彼を見る眼はねつつこく光つてゐるやうな気がした、おつねがいい世話女房らしく立ち廻つてゐるのに軽い嫉妬も湧いて、しかし、そんな自分が忌々いまいましかつた、――もとより豊太郎は色好みとの噂通り、その場の戯れにすぎなかつたであらうと最初からあきらめてゐるので、さうした彼に対する気持も根強いものではなく、その日その日にとりまぎれて了つた。
 十一月に入つた日、裏口へ塵芥ごみを捨てに行くと、離れから起き出たばかりの豊太郎が顔を洗つてゐた。
「おい、ちよつと袖を持つてくれ」
 お神さんは何をしてゐるのかと、おしげは見廻してから、云はれる通りにした、すむと、これをしまつてと歯磨類を手渡し、薄暗い台所の鏡に向つて髪に油を塗りはじめた、そのうしろを、狭いので身体を横にして抜けようとした時、豊太郎はとつさに振向いて、おしげを抱いた、本能的にすくんだ彼女をしめつけて、四日の晩、初酉はつとりに連れてつてやるよ、店をしまつたら、花屋敷の側で待つてな、とささやくのであつた。
 彼女は店に出て、テーブルにからぶきんをかけてゐたが、豊太郎の腕がいつまでも胸を圧さへてゐるやうで、そのぬくもりさへ着物についてゐるのではないかと、自分の手をあてて見たりした、――やはり一途いちづに悦ばしかつたのだ、しかし旦那がああ云つたけど、一しよに行つていいものかどうか、話をして見たくもあり、もう綺麗薩張さつぱり忘れて了ひたくもあつた。
 彼女の横で、ぶくぶくに肥えたおふぢが、
「しげちやんたちはいいわ、――お酒のみの相手をしてられて陽気で、ああ、私もお店に出たい」と、独り言を云つてゐた、彼女は容貌が醜いので、板場の手伝ひをさせられてゐて、それが不平で仕方がなかつたのだ。
「え」と、おしげは考へを破られて聞きとがめた。

     ○

 おきよが目撃したと云ふのはこの朝のことなのだらう。
 彼女はおしげをおだてて、
「私が都合つけたげるから、外で逢つてもいいのよ」と、まで云つた。
 おしげは、最後まで遂に、そんなことと笑つて、事実を告げなかつた。
「――まア、これはここだけの話、とにかく、私もその気だから、あんたもねえ」
 もう一度念を押して、おいくらと、おきよは金を払ふのであつた。
 おしげは、おきよに焚きつけられて、うかとすれば、そんな気にならないでもなかつたが、この姉娘に対するより深い反感がやつとせきになつてゐた。
 四日はひるすぎから、またしても小雨になつた、もつとどしや降りに降つて了へばいいと、何やら決心のつかぬのが、それで決定されると頼みにした、雨が云ひわけになる、寂びしい花屋敷前が眼にうつるのだ。
 宵の稍々やや手すきの頃、しうちやんとみんなで親しく呼んでゐる青年が来た、おしげは、ああ、この人がゐたのを忘れてゐたと、すがりつきたい思ひがした。
 彼は母親たちが間借りしてゐる足袋屋の息子であつた、私立大学を出て、別にすることもなく家業の手伝ひはほんの申しわけで、遊んでゐた、底抜けの酒飲みで、はじめると夜が明けるまで盃を放さなかつた。
「どうしたの」と、おしげは、むすぼれてもつれてゐたものが解けかかつたやうにほつとした表情で、彼の側に寄つた。
「何が」
「何がつて――」と、彼女は困つて、尻下りのあまえた声を出した、――どうしたのとは、自分のことで自分に云つたのだと気づいたからであつた。
「――ほら、母あちやんがさ」
 むつつりした秀一は、じろりとおしげを見た、――彼は先日、本当か嘘か酔つた拍子に、君の母あちやんに惚れたよ、と放言したことがあつた、何云つてんのよ、あんな年よりにと茶化しかかつたが、その時思ひかへして、それ冗談なんでしよ、と詰め寄せた、すると、真顔になつて、冗談ぢやないよ、と云ひ切り、おしげが、無理しないがいいわ、と云つても、次から次へと空の銚子を振つて催促したものだ。
 後になつて、秀ちやんが新吉から母あちやんを奪つてくれれば、助かるだらうと夢のやうな願ひごとをしはじめてゐた、彼が「たむら」へ来るたびに、けふは母あちやんとどんな話をしたの、一しよに活動へ連れてつたげてよう、なぞと云つて、どれだけおはまと交渉を持つてゐるかを探らうとした。
「母あちやんだつて、秀ちやん好きよ、きつと、――私にはよく判るの」
「判るもんか」
 月始めから、新吉はてきやの連中と大阪へ旅立つたと聞いたのも彼からであつた、――おしげはまるでおはまのところへよりつかなかつたのだ。
「さう、――ぢや、鬼のゐぬ間の洗濯ね」
「うん」
 何気なく聞き流したその「うん」が彼女にも意外であつたが、おしげに影響してゐた、早速、次の日、一時間ばかりですませますからと、象潟町へ久しぶりに訪れた、二階では、夜番のおはまは臥てゐたが、顔を見るなり、秀ちやんはけふゐないの、とたづねるのであつた、何だい、お前なの、びつくりしたよ、と起きる母親に、重ねて、秀ちやんが何か云つてた、とまくし立てた。
 ぢつと眼を離さずに、母親の様子からも、秀一との間を嗅ぎ出さうとしてゐた、若い頃から身のをさまらぬおはまを娘はよく知つてゐたのだ、新吉がゐるうちはとにかく、不在であるならば、とおしげは我になく気になつた。
 最初は母親と彼がむすびつけばと望んでゐたのに、知らぬ間に、変つて来てゐたのは、彼女も男を知つたからであらうが、彼女は深くその矛盾について考へてはゐなかつた。――
「母あちやんか、母あちやんは稼ぎに行つたよ」
「さうお」と、おしげはむつとして見せたくなつて、急にそつけなくすると他のお客のテーブルへ行つた。
 それでもまた、お銚子を運ぶのにことよせて、秀一に話しかけてゐた。
「ねえ」と云つたが、何も云ふことはなかつた、――「雨はやんだか知ら」と、表へ飛び出して、あら、あがつちやつたと云つて、いけない、旦那との口約束があると思ひ出すのであつた。
「――いやに、しけ込んだね」
「憂欝なのさ」
「ふん、憂欝か、――君でもね」
「あんたなんか私のことを知らないよ」
 暫くすると、秀一は酔つて、癖で次第に青くなつてゐた、おしげは、その酔ひが今夜は彼女にも移つてきたやうに思はれた。
「もつと、お飲みよ」
「無理しないがいいわ、ぢやないのか、――飲むよ」
 お酌して、ねえ、とまた云つた。
「ねえ、――私、母あちやんて人はあばずれだと思ふわ」
 何を云ひ出すのかと、秀一は、あばずれか、とをかしがつた。
「――笑ひごとぢやなくつてよ、――秀ちやんなんか、母あちやんにつちや駄目よ」
 彼は、凝つちや駄目かね、と繰りかへした。
「本当よ」と、じれつたさうに、おしげは力を入れた、「だから――」
「だから、何だ」
「だから、さ、だからと云つたら――」
 おしげは口惜しさうに泣きはじめた。
「いけないね、秀ちやんは」と、おつねが二人の横に立つて、――「うちの子をいぢめると承知しないから、さア、仲直りなさいよ」
 おしげは板場へすつ込んで、泣けるだけ泣いてゐた、そつと、肩を叩くものがゐるので、濡れた頬もかまはずにあげると、旦那であつた、彼は、あとで可愛がつてやるから、子供みたいに泣くのはおよし、とえり首に手を廻した。
 いや、と彼女はもぎ取るやうにした。袖で涙を拭いて、ぢつと立つてゐたが、役者のやうににこにこと表情を作つて見た、出来たと自信がつくと、それをマスクのやうにかけて出て、
「ごめんなさいね」と、丁寧に秀一にあやまつた。
「ごめんね、――返事してよ」
「うん」
 ――おしげは、さうだ、秀ちやんとお酉様へお詣りしようと思ひついた、豊太郎にも、おきよにも面当つらあてになると考へた。
「かんばんまで遊んでるでしよ」
「うん――いいよ」
「それからね、仁王門の側で待つててくれない」
「――待つててもいいけど、なぜ」
「お酉さま」
「ああ、――今年は三の酉もあるんだね、不景気、火事多しか」
「いやなの」
「誰もいやと云ひやしない」
 すつかり晴れあがつてゐた。おしげは、豊太郎に早めに暇を貰つて、着がへるとさつさと新しいよそ行きの下駄を出した。
「花屋敷の表だよ、いいね」と、しつこく豊太郎は小声で云つた。
 うなづいて、仁王門まで駈けて行くと、酔つ払つた秀一は、門柱と押しつくらをしてゐた。
「――滑稽ね、腕押ししてたの」
「ああ」
 米久よねきう通りへかかる時、おしげは暗がりを見すかすやうに、小腰をかがめて、花屋敷の方へ眼をやつた。
「何してるんだ」
「知つた人がゐるやうな気がしたもんだから」
 十二時をすぎたばかりの鷲神社は、初酉のお札を貰はうとする人たちで、身動きも出来ないほど、混雑してゐた、二人はその中に捲き込まれたが、しつかり掴まつといでと、秀一は手を握つてくれた、大きな人群れはまるで蛇のやうにうねつて、ともすればおしげはさらはれさうになつた。
「秀ちやん、下駄がどつかへいつちやつたよ」
「――見つかりやしないよ、――」
(昭和十年十二月)

底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房
   1967(昭和42)年
入力:山根鋭二
校正:伊藤時也
1999年10月19日公開
2005年12月30日修正
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