一筆啓上。
然ニ私ニ非レバたれか上関迄出し候心積ニ候所、此頃御国より相廻り候船、下の関ニ参候時節、人なく幸ニ黒田了介(清隆)殿御出ニ候得共、今少し御留りの儀故ニ無是非候。私とても了介殿御同伴上坂も致候。(芸州)永井主人(主水正)が事ハ兼而(かねて)長州の政府の論の如ク相辨候所、永井曰ク、然レバ諸隊頭立(かしらだち)候者ニ面会可致と、則諸隊頭立候もの面会せり。
案ズルニ永井ハ諸隊の者と政府の論と、甚ことなり候心積也。
故、政府をたすけ諸隊を撃、或ハ諸隊を助ケて政府を撃との論のよしなり。
京よりミブ(壬生)浪人同伴ニて帰りし、長人ハ虎口をのがれしと大ニ笑合候。上下一和兵勢の盛なる、以長第一とすべく存候。
何レ近程ニも上京御咄申上候。
坂本龍馬
岩下佐次(ママ)
直陰
吉井幸輔様

底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙の写真のキャプションに、(宮内庁 木戸家文書)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年7月28日作成
2011年6月17日修正
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