あらすじ
広大な宇宙と悠久の時の中で、小さな自分の存在に悩み、哲学の無力さに失望した一人の若者が、絶望の淵に突き落とされます。死を決意した彼は、巌頭に立ち、心中を決意するのですが、そこで驚くべきことに、大きな悲観が大きな楽観へとつながることに気づくのです。
 悠々たる哉天壌てんじょう遼々りょうりょうたるかな古今。五尺の小躯を以て此大をはからむとす。ホレーショの哲学ついに何等のオーソリチーをあたいするものぞ。万有の真相は唯一言にしてつくす。曰く「不可解」。我このうらみを懐いて煩悶ついに死を決するに至る。既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。始めて知る、大なる悲観は大なる楽観に一致するを。

底本:「現代日本記録全集 16 青春の記録」筑摩書房
   1968(昭和43)年11月25日初版第1刷発行
※底本編者によると思われる本文末の解説は省略しました。
入力:かな とよみ
校正:sogo
2019年4月26日作成
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