最初の創作集は「晩年」でした。昭和十一年に、砂子屋書房から出ました。初版は、五百部ぐらゐだつたでせうか。はつきり覺えてゐません。その次が「虚構の彷徨」で新潮社。それから、版畫莊文庫の「二十世紀旗手」これは絶版になつたやうです。
 しばらく休んで、一昨年あたりから多くなりました。紙の質も、惡くなりました。一昨年は、竹村書房から「愛と美について」砂子屋書房から「女生徒」女生徒は、ことしの五月に再販になりました。
 昨年は、竹村書房から「皮膚と心」京都の人文書院から「思ひ出」河出書房から「女の決鬪」が出ました。
 ことしは、實業之日本社から「東京八景」が出ました。二、三日中に、文藝春秋社から「新ハムレツト」が出る筈です。それから、すぐまた砂子屋書房から「晩年」の新版が出るさうです。つづいて筑摩書房から「千代女」が、高梨書店から「信天翁」が出る筈です。「信天翁」には、主として隨筆を收録しました。七月までには、みんな出るでせう。
 少し休みたいと思ひます。私はことし三十三であります。女の子がひとりあります。

底本:「太宰治全集11」筑摩書房
   1999(平成11)年3月25日初版第1刷発行
初出:「日本學藝新聞」
   1941(昭和16)年7月10日
入力:増山一光
校正:阿部哲也
2011年10月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。