山脈の裾にある温泉町。そこを走る鉄道の終着駅には、若い機関手、吉田が、終列車でやってきます。吉田は、温泉町の遊郭にはほとんど行かず、出張費の大半を新しい本を買うことに費やしていました。しかし、彼は、ある日、温泉の町で、病気の女性と出会います。彼女は、かつて都会で傷つけられた肉体を癒すため、温泉場を訪れましたが、生活費が尽き、再び以前の職業に戻らざるを得ない状況にありました。吉田は、終列車で来るたびに、彼女の住む町端れの家に訪れ、彼女と過ごすようになります。二人は、次第に深い仲になっていきます。しかし、吉田は、組合の仕事や自身の将来を考え、結婚を決意します。そして、彼女は、そのことを告げに来た吉田から、別れを告げられます。吉田は、彼女への感謝の気持ちを表すため、そして、彼女が自分のことを忘れないようにと、十円札を十枚渡します。二人は、互いに言葉もなく、別れの夜を過ごします。翌朝、吉田は、いつものように終列車で温泉町を後にしますが、彼女は、吉田の後ろ姿を見送るため、線路へと向かうのでした。