「何方のお葬式でござる」
対手は躊躇せずに云った。
「これは大場宇兵衛殿の葬式でござる」
「なに、おおばうへえ」
「そうでござる」
行列は通りすぎた。宇兵衛は気が転倒した。そして、家へ帰ってみると、玄関前に焚火をしたばかりの痕があった。それは葬式の送火であった。
大場は其の晩からぶらぶら病になって、間もなく送火を焚かれる人となった。
底本:「怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集」春陽文庫、春陽堂書店
1999(平成11)年12月20日第1刷発行
底本の親本:「新怪談集 物語篇」改造社
1938(昭和13)年
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2004年8月20日作成
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