帷子姿の半身

 トントントントントントン……トン。
 表戸を続けて打つ者がある。
「それまた例のお武家様だ……誰か行って潜戸くぐりを開けてやんな」
 こう忠蔵は云いながらズラリと仲間を見廻したが俺が開けようというものはない。
 トントントントンとそう云っている間も戸外そとでは続けざまに戸を叩く、森然森然しんしんと更けた七月の夜の所は本所錦糸堀でひたひたと並んでいる武家屋敷から少し離れた堀添いの弓師左衛門の家である。家内の者は寝てしまったが宵っ張りの職人達は仕事場に集まり、団扇うちわでパタパタ蚊を追いながら、浮世小路の何丁目で常磐津ときわずの師匠が出来たとか柳風呂やなぎぶろの娘は婀娜あだだとか噂話に余念のないさなか、そのトントントンが聞こえて来たのである。
「小六、お前開けてやんな」
 職人がしらの忠蔵は中で一番若輩の小六というのへ顎をしゃくったがいっかな小六が聞かばこそ泣きっ面をして首を縮めた。
「チェッ」と忠蔵は舌打ちをしたが、「由さんお前お輿みこしを上げなよ」
「へ、どうぞあなたから」――由蔵はこう云うと舌を出したが、にわかにブルッと身顫みぶるいをした。さも恐ろしいというように。
「松公、お前立つ気はないか?」
「どうぞお年役にお前さんから……私はどうも戸を開けるのが昔から不得手でございましてね」
「つまらない事云わねえものだ。戸を開けるに得手も不得手もねえ。みんな厭なら仕方がねえ」忠蔵はひょいと立ち上がったがどこか腰の辺がまらない。土間へ下りると下駄を突っかけそこから仕事場を振り返り、
「おいしっかり見張っていねえ」
 こう云ったのは忠蔵自身がやはり恐い証拠でもあろう。それでも足音を忍ばせてそっと表戸へ近寄ると潜戸くぐりかんぬきへ両手を掛けた。
 とたんにトントンと叩かれたのでハッと一足退いたが、連れて閂がガチリと外れ、その音にまたギョッとしながら忠蔵は店へ飛び上がった。と、潜戸がスーと開いて、まず痩せこけた蒼白い手が指先ばかりチラリと見え、それから古ぼけた帷子かたびら姿を半身ぼんやりと浮かばせるとツト片足がかまちを跨ぎ続いて後の半身がヨロヨロと土間へはいって来た。
 顔は胸まで俯向うつむいている。雪のように白い頭髪かみのけを二房たらりと額際ひたいぎわから垂らし、どうやらもとどりも千切れているらしくまげはガックリと小鬢へれ歩くにつれて顫えるのである。身長みたけすぐれて高くはあるが枯木のように水気がなく動くたびに骨が鳴りそうである。左の肩をトンと落とし腕はだらりと脇に下げ心持ちそびやかした右の肩を苦しそうな呼吸いきの出し入れによって小刻みに波のように動かすのである。所々げた蝋鞘ろざやの大小を見栄もなくグッタリと落とし差しにして、長く曳いた裾でかかとを隠し泳ぐようにスースーと歩いて来る。
 ほとんどどこにも生気がない。老武士おいぶしその人にないばかりでなくその老武士がはいって来ると共にあらゆる物が生気を失い陰々たる鬼気に襲われるのであった。店に飾ってある弓や矢やともされてある行燈あんどんまでぼっと光を失ってしまう。
 老武士は顔を埋ずめたまま店先までスーと寄って来たが余韻のないしわがれた低い声で、
弓弦ゆづるを一筋……」とむせぶように云った。
「へーい」
 と忠蔵は応じたが何がなしに総身ゾッとして、木箱はこを探る手が顫えたのである。それでも弓弦を差し出すと、また同じ声同じ調子で、
「小中黒の征矢そや三筋……」
「…………」今度は忠蔵は言葉もなく云われた矢を取って差し出した。と老武士は小手を振ったがこれは鳥目ちょうもくを投げたので、投げたその手で二品を掴むとクルリと老武士は方向むきを変え、そのスースーと泳ぐような足で開いたままの潜戸くぐりから煙りのように闇夜の戸外そとへ消えて行った。

 その翌日のことである――
「ほんとかな? それは? その噂は? ふうむ、不思議な老人じゃの……」
 あつらえた弓をわざわざ見に来た旗本の次男恩地主馬おんちしゅめは声をはずませてこう訊いた。
「ほんとも本当、昨夜ゆうべで十日、きまって参るのでござりましてな……」
 こう云って忠蔵は居住いを正し、真っ昼間ながら四辺あたりを見廻し、
「それで家中うちじゅうもうすっかり怖気おぞけふるっておりますので」
「で何かな、その老人は、どこから来るのか解らぬのかな?」
「へい、それがあなた解るくらいなら……」
「そうさな、恐ろしくもないわけだな……でそれでは今日まで後を尾行つけた事もないのだな?」
「そんな事、かりにも出来ますようなら家内一同夜になるとああまでしょげ返りは致しませぬので……」

    本所の七不思議

 主馬はちょっとうなずいてそれから小声で笑ったが、
「忠蔵、安心するがよいわ。それがし今夜朋輩と参って曲者の正体見現わしてくりょうに」
「どうぞお願い致します」忠蔵は喜んで頭を下げた。
「弓の方は期日までに頼んだぞ」
「それはもう承知でございます」
化物ばけもの沙汰に心を奪われ商売の方をおろそかにしては商人あきゅうど冥利に尽きるというものだ――それでは今夜参ると致そう」
「よろしくお願い致します」
 主馬はそのまま立ち去って行ったがはたして夜になると、朋輩二人を連れ、弓師左衛門の家へやって来た。
 左衛門夫婦も挨拶に出て雑談に時を費したがいつもの時刻に近付くと怱々そうそう夫婦は引き退り後には主馬と朋輩の武士と忠蔵達が五、六人店を通して土間の見える職人部屋に残っていた。
 夜はしんしんと更けて来た。何となく物凄く思われるかして主馬を初め集まっている者は、次第に言葉数が少くなった。とその時表戸をトントントントンと叩く音がする。ハッと皆は眼を見合わせむっと一時に呼吸いきを呑んだ。
 それでもさすがは武士だけに主馬は躊躇ちゅうちょもせず立ち上がり、がちりかんぬきを取り外した。まず細い手があらわれる。それから半身が浮き出して来る。泳ぐような歩き方ではいって来るとその老武士は云うのであった。
弓弦ゆづるを一筋……」と消えるような声で、
「ヘーイ」
 と忠蔵は顫えながら云った。
「小中黒の征矢三筋……」
「ヘーイ」
 と忠蔵はまた応じた。
 くるりと老武士は方向むきを変えると吸われるように潜戸くぐりの隙から戸外そとの夜の闇にまぎれ込んだ。
「方々」と主馬は声をかけた。どうやらその声には生気がない。それでも自身真っ先に立って同じ潜戸から戸外へ出た。首うな垂れた老武士は星月夜の道をスースーと三間ばかり彼方かなたを歩いている。主馬と朋輩と三人の武士は穿いている雪駄せったの音さえ忍ばせ着かず離れず慕い寄った。
 ものの半町も行った頃、その老武士は右へ曲がった。で三人も右へ曲がった。右へ曲がってまた半町老武士はスースーと歩いたが、そこでピタリと足を止めた。と門の開く音がして左側の家並の一所からふと人声が聞こえたかと思うと老武士の姿は見えなくなった。
「…………」
 三人は黙って顔見合わせた。それから静かに足を運び老武士の姿の消えた辺まで用心しながら近付いた。
 道場構えの一宇の屋敷がそこに広々と立っている。森然しん四辺あたりは物寂しくもちろん燈火ともしびの影さえもない。三人はしばらくたたずんだまま余りの不思議さに言葉も出ない。彼ら三人は三人ながらこの辺の地理には慣れている。そしてほとんど毎日のようにこの往来も通っているのである。それにもかかわらずこんな所にこんな立派な道場屋敷の建っているということを一度もこれまで見たことがない。
「どうも不思議だ」とまず主馬が朋輩の一人へ話しかけた。「たしかここには柏屋という染め物店があった筈だのに……」
「さようさ、全く不思議だの」話しかけられた主馬の朋友の南条紋太郎がうなずきながら、「しかも拙者は今日昼頃たしかにこの前を通った筈じゃ。そしてその時はその柏屋がちゃんと店を開いていたのじゃ。いかに大江戸は素早いと云ってもものの一日と経たないうちに格子造りの染め物店が黒門いかめしい武家屋敷となるとはちとどうも受け取れぬ話じゃわい」
「さては狐狸にでもつままれたかの」――もう一人の朋輩荒木内記は呻くような声でこう云った。
「全体どうも本所という土地が化物ばけものには縁の近い土地での。それ本所の七不思議と云って狸囃しにおいてけ堀片葉のあしに天井の毛脛、ええとそれから足洗い屋敷か……どうもここにあるこの屋敷もそのうちの一つではあるまいかの?」
「馬鹿を云わっしゃい、臆病千万」
 と主馬は一口に打ち消したが、その実やはり心のうちではそいつを考えていたのであった。
「主馬殿、ともかくも帰った方が泰平無事ではござらぬかの」――紋太郎は小声で誘って見た。
「君子あやうきに近寄らずじゃ」
「とは云えこのまま帰っては弓師左衛門や忠蔵へ対してちと面目がござらぬではないか」主馬はえ切らずこんな事を云った。それから門へ近寄って何気なくトンと押して見た。すると門はゆらゆらと揺れギーという寂しい音を立てて内側へ自然と開いたのであった。

    静寂を破る弦音

「や、門が開きましたな」
「これはこれは不用心至極」
 三人の者は事の意外にきもを潰してこうつぶやいた。
「門が開いたを幸いに案内を乞いなかへはいり様子を見ようではござらぬか」
 主馬はこう云って二人を見た。
「よかろう。案内を乞うことにしよう」こう紋太郎はすぐ応じた。内記は少からず躊躇したがそれでもやがて決心して二人の朋輩の後を追った。
 三人は玄関の前まで来た。
「頼む」と主馬が声を掛けたが誰も返辞をする者がない。家内は森然しんと静かである。
「深夜まことに恐縮ながら是非にご面会致したければどなたかご案内くだされい」
 再び主馬は声を掛けたがやはり家内からは返辞がない。人のいない空屋のようで陰々として物凄い。三人はにわかに気味悪くなった。
 とたんに、ヒェーッと絹を裂くような鋭い掛け声が奥の方から沈黙しじまを破って聞こえたかと思うと、シューッ空を切る矢音がして、すぐ小手返るつるの音がピシッと心地よく響き渡った。「あッ」と三人はそれを聞くとほとんど同時に叫びを上げたが、それは驚くのがもっともである。掛け声、矢走り、弦返つるがえり、それが寸分の隙さえなく日置流へきりゅう射法の神髄にピタリとまっているからである。
 主馬が真っ先に逃げ出したのはよくよく驚いたのに相違ない。三人往来へ走り出るとホッと額の汗を拭った。
「我ら日置流の射法を学びここに十年を経申すがこれほど凄じい弓勢にはかつて逢ったことございませぬ」
「全く恐ろしい呼吸でござったのう」
「妖怪でござるよ。妖怪でござるよ」
 三人が口々にこう云ったのは不思議な屋敷の門前から五町あまりも逃げのびた時で、三人の胸は早鐘のように尚この時も脈打みゃくうっていた。
 翌日三人は打ち揃って改めてその屋敷まで行って見たが、そこにはそんな屋敷はなくて柏屋という染め物店が格子造りに紺の暖簾のれんを風にたなびかしているばかりであった。
 この弓屋敷の不思議の噂は間もなく江戸中に拡がった。本所七不思議はさらに一つ「弓屋敷の矢声」の怪を加えて本所八不思議と云われるようになった。弓道自慢の幾人かの武士は自分こそ妖怪の本性をあばいて名を当世に揚げようと屋敷の玄関までやっては来たが、大概一矢で追い返されよほど剛胆な人間でも二筋の矢の放されるを聞いては、その掛け声その矢走りの世にも鋭く凄いのに怖気おぞけを揮って逃げ帰った。

「ごめん」
 とある日一人の男が柏屋の店を訪ずれた。年の頃は二十五、六、田舎者まる出しの仁態じんていで言葉には信州のなまりがあった。
「へい、染め物でございますかね」
 柏屋の手代はこう云いながら、季節は七月の夏だというに盲目縞めくらじまあわせを一着なし、風呂敷包みを引っ抱えた、陽焼けた皮膚に髯だらけの顔、ノッソリとした山男のようなそのお客様を見守った。
「いんね、そうじゃごぜえません。噂で聞けばおめえさんの所へ化物が出るということで。ひとつおいらがその化物を退治してやろうと思いましてね」
「ああさようでございますか。それはどうも大変ご親切に」手代はおかしさをこらえながら、
「失礼ながらご身分は?」
「信州木曽の猟師かりゅうどでごわす」
「え、猟師かりゅうどでございますって?」
「ああおいら猟師だよ。一丁の弓でしし猿熊を射て取るのが商売でね。姓名の儀は多右衛門でごわす」
「へいさようでございますか。どうぞしばらくお待ちくだすって」
 手代は奥へ飛んで行ったが引き違いに出て来たのは柏屋の主人の弥右衛門という老人であった。
 弥右衛門は多右衛門の様子を見て思う事でもあると見えて丁寧に奥へ案内した。幽霊の噂が立って以来実際柏屋染め物店は一時に寂れてしまったので、たといどのような人間であろうと、その化物を見現わしてくれて、いやな噂を消してくれる人なら、喜んで接待しようというのが弥右衛門の今頃このごろの心なのであった。
 まず茶菓を出し酒肴を出し色々多右衛門をもてなした。多右衛門は別に辞退もせずさりとていやしくへつらいもせず平気で飲みもし食いもしたがやがてゴロリと横になった。
「やれやれとんだご馳走になって俺ハアすっかり酔いましただ。どれ晩まで一休み。ごめんなんしょ、ごめんなんしょ」
 こういうはじから多右衛門はグーグーいびきをかくのであった。
 暑い夏の日もやがて暮れ、涼風すずかぜの吹く夕暮れとなった。それから間もなく夜となった。その夜が次第に更けてゆく。

    帛を裂く掛け声

 こうしての刻も過ぎた時ようやく多右衛門は起き上がった。
「あ、お目覚めでございますかな」
 じっとそれまで多右衛門のそばかしこまっていた弥右衛門はこうこの時声を掛けた。
「ハア、どうやら目がさめ申した。今、何時なんどきでごぜえますな?」
うしの刻に間近うございましょうかな」
「へえもうそんなになりますかな。が、ちょうど時刻はようごわす。どれ用意をしようかな」
 多右衛門は持って来た風呂敷包みを不器用の手付きで拡げたが、中には桑の木で作ったらしい手垢でよごれた半弓と征矢そやが三本入れてあった。
「どっこいしょ」
 と掛け声と一緒に彼はヒョロヒョロと立ち上がった。雨戸を開けて中庭の方へそのままスーと消えてしまったのである。
 後は森然しんと静かであった。弥右衛門はじっと耳を澄まして中庭の様子を聞こうとしたが何の物音も聞こえない。そのうち次第に眠くなった。これは毎晩のことである。はげしい睡眠に襲われて家内一同眠っているうちにいろいろの事がおこるのであった。
「眠ってはいけない、眠ってはいけない」
 こう弥右衛門はつぶやきながら傍の火鉢から火箸を抜き取りそれを股へ突き立てた。これで眠気は防ぐことが出来る。
 この間も夜は更けて行った。と鳴り出した鐘の音。回向院で撞く鐘でもあろうか。陰々として物寂しい。
 とたんに「ヒェーッ」ときぬを裂くような凄じい掛け声が掛かったかと思うとピューッと空を抜く矢走りの音に続いて聞こえる弦返つるがえりの響き! しかしそれより驚いたのは、その次に起こった笑い声であった。
「ワッハッハッ」と暢気のんきそうに馬鹿にしたようにまず響いたが、「そんな事じゃ駄目だ、駄目だ。それじゃ獣は殺されねえ。ワッハッハッ」とまた笑う。それは多右衛門の声である。
 その笑い声が途絶えた刹那またも裂帛れっぱくの掛け声がした。矢走りの音、弦返りの響き。
「ワッハッハッハッまだ駄目駄目!」と、多右衛門の声がまた聞こえた。三度みたび凄まじい掛け声が起こり続いて矢走りと弦返りの音が深夜の沈黙しじま突裂つんざいたがやはり多右衛門の笑い声が同じような調子に聞こえて来た。
「ワッハッハッハッ、まだ駄目じゃ。人間を射ることは出来ようが獣を射ることは出来そうもねえ。おめえさんの持ち矢はもう終えたのか。それじゃ今度は俺の番だ……俺の弓には作法はねえ。そうして掛け声も掛けねえのさ。黙って引いて黙って放す。これが猟夫かりゅうど射方いかただあね」
 こういう声が消えたかと思うと、忽ち何物か空を渡る声がグーングーン、グーンと聞こえて来た。矢が三筋みすじつるから放されたのであろう。
 その後は何の音もない。と雨戸が外から開かれ多右衛門がそこからはいって来た。左の手に弓を持ち右の手に巻物を載せニタニタ笑いながら座敷へはいると、遠慮なく高胡坐たかあぐらをかいたのである。
「明晩から幽霊は出ますめえ。よく云い聞かして来ましたからの。いや面白い幽霊でね。わしにこんなものくれましただ」
 とんと巻物を下へ置いて。その巻物こそ他ならぬ弓道日置流へきりゅうの系図であった。
 そして系図には習慣しきたりとして流儀の奥義がしるされてあり、それを与えられた武芸者は流儀の本家家元となれる。
 果然、信州は木曽山中の猟師、姓もうじもない多右衛門は爾来じらい江戸に止どまって弓道師範となったのであった。
 日置弾正を流祖とした日置流弓道は後世に至って、露滴ろてき派、道雪どうせつ派、花翁かおう派、雪荷せっか派、本心ほんしん派、道怡どうたい派の六派に別れ、いわゆる日置流六派として武家武術の表芸となり長く人々に学ばれたがこの六派の他に尚八迦流という一流があり武芸を好む町人や浪人達に喜ばれたがこの八迦流の流祖こそすなわち猟師多右衛門なのである。
 それにしても、不思議な妖怪沙汰を起こし日置流系図を多右衛門に与え別に一派を立てさせたのはいったい何者であったろう?
 それについて多右衛門はこんなことを云った。
「今こそ染め物店にはなっているが戦国時代にはあの辺に大きな館があったのだ。日置弾正様のお館がな。――で、亡魂が残っておられ、日置流の頽廃たいはいを嘆かせられ夜な夜な怪異を示されて勇士をお求めになられたのだ。そこへこの俺がぶつかったのさ。で、系図を頂戴し極意を許されたというものよ。毎晩つると矢を買いに出た者は弾正様の使僕めしつかいなのさ」

底本:「怪しの館 短編」国枝史郎伝奇文庫28、講談社
   1976(昭和51)年11月12日第1刷発行
入力:阿和泉拓
校正:多羅尾伴内
2004年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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