シルクハツトと洋服と、
きれいな きれいな かたかけと、
ステツキもつてる かかしさん。

にはとりさんが
やつてきて、
コケ、コケ、
ステツキを けとばした。
コツ、コツ、コケ、コケ、
コケ、コツ、コケ。

にはとりさんは かなしかろ、
シルクハツトも かたかけも、
洋服も ステツキも もつてない。

にはとりさんが 言ふことに、
「シルクハツトと 洋服さん、
ステツキさんと かたかけさん、
あいつはなんだ、かゝしめだ。
かかしのくせに なまいきだ。」

これきいて よろこんだ
ひよつこさん、
ピヨ ピヨ ピヨ ピヨ
はねてきて、
かかしのステツキを けとばした
ピヨ ピヨ コツ コツ
ピヨ コツ ピヨ。

にはとりさんと ひよつこさん、
はたけの たねを ほじくりだす、
コツ、コツ、コツ、コツ、
ほじくりだす。
ひやくしやうさんが やつてきて
おめめ ぱちぱち おどろいた。

ひやくしやうさんが いふことに、
「おまへは それでも かかしかい。
なまけかかしめ みておいで。
いまに どうするか、
まつてゐろ。」

シルクハツトと 洋服と、
きれいな かたかけと ステツキは
ブル、ブル、ブル、ブル、
ブル、ブル、ブル。
こわくて ふるへる、
ブル、ブル、ブル。

にはとりさんと ひよつこさん、
ピヨ、ピヨ、コケ、コケ、
ほじくつた。
まだ まだ ほじくる、
まだ ほじくる、
はたけの たねを
まだ ほじくる。

これみて おこつた
ひやくしやうさん
「いたづらにはとり
ひよつこめ。」
かかしの ステツキを ふりあげた。

そのとき ふいに よるがきた。
にはとりさんも、ひよつこさん、
どこに どうして ゐるのやら、
さつぱり みえなく なつちやつた。

そこで よろこんだ にはとりさん
ひよつこさんは ピヨ、ピヨ、ピヨ。
コケ、コケ、ピヨ、ピヨ、
コケ、ピヨ、コケ。
シルクハツトも 洋服も
きれいな きれいな かたかけも、
むね なでおろして よろこんだ。

かかしの
おとうさんが
やつてきて、
かかしを
つれて
いつちやつた。

くわいちゆう
でんとうを
ひからせて、
にはとりの
おとうさんが
やつてきた。
にはとりさんと
ひよつこさん、
ピヨ、ピヨ、
コケ、コケ、
いつちやつた。

ひやくしやうの
おとうさんが
やつてきて
「なにを ぐづぐづ
してるだよ。」
ひやくしやうさん
つれて いつちやつた。

そこで
あかるくなつたとさ。
これで おしまひ
さようなら。

底本:「日本児童文学大系 第二六巻」ほるぷ出版
   1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「子供之友」婦人之友社
   1925(大正14)年10月
初出:「子供之友」婦人之友社
   1925(大正14)年10月
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年1月24日作成
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