あらすじ
部屋で雨音が聞こえる中、少年は積木で様々なものを作り上げます。積木でできた町には、お寺や宮殿、水車、波止場、そして船まであり、少年は想像力を駆使して、自分だけの世界を作り上げていきます。積木でできた町は、少年の豊かな想像力を映し出す、特別な場所なのです。お城や宮殿、寺、波止場。
外では雨が降つてても
お家で私は積木する。
敷布は海でソファは山、
私はそこに町たてよう。
お寺や水車や宮殿や、
そして波止場や舩までも。
柱や壁のでかいやつ、
屋根には塔もおつたてよう。
階段などもつけてやらう。
そこには私の舩が来る。
波止場につく舩、沖の舩、
きけば水夫の歌の声。
ほうら階段おりて来る、
おくりもの持つ王様が。
もう飽いちやつた、もう止さう。
がらんと町はこはれちやふ。
積木はごちやごちやしてしまふ。
もうあの町は何もない。
けれど、あの町まだ見える。
お寺や宮殿、舩、水夫。
私が大人になつたつて、
私はあの町、思出さう。
了
底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
初出:「新美南吉童話の世界―日本児童文学別冊」ほるぷ総連合
1976(昭和51)年7月
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年1月4日作成
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