あらすじ
月夜に、鉄骨でできた電信柱の軍隊が、力強く行進する様子を描いた詩です。彼らは、鋼鉄の腕木を武器に、世界の果てまで、電信を届けるため、寒さも暑さもものともせず、前進を続けます。彼らの足音は力強く、その名は世界中に轟き渡ります。でんしんばしらのぐんたいは
はやさせかいにたぐひなし
ドツテテドツテテ、ドツテテド
でんしんばしらのぐんたいは
きりつせかいにならびなし。
ドツテテドツテテ、ドツテテド
二本うで木の工兵隊
六本うで木の竜騎兵
ドツテテドツテテ、ドツテテド
いちれつ一万五千人
はりがねかたくむすびたり
ドツテテドツテテ、ドツテテド
やりをかざれるとたん帽
すねははしらのごとくなり。
ドツテテドツテテ、ドツテテド
肩にかけたるエボレツト
重きつとめをしめすなり。
ドツテテドツテテ、ドツテテド、
寒さはだへをつんざくも
などて腕木をおろすべき
ドツテテドツテテ、ドツテテド
暑さ硫黄をとかすとも
いかでおとさんエボレツト。
ドツテテドツテテ、ドツテテド、
右とひだりのサアベルは
たぐひもあらぬ細身なり。
ドツテテドツテテ、ドツテテド、
タールを塗れるなが靴の
歩はばは三百六十尺。
ドツテテドツテテ、ドツテテド
でんしんばしらのぐんたいの
その名せかいにとゞろけり。
了
底本:「【新】校本宮澤賢治全集 第六巻 詩5[#「5」はローマ数字、1-13-25] 本文篇」筑摩書房
1996(平成8)年5月30日初版第1刷発行
入力:田中敬三
校正:土屋隆
2006年7月26日作成
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