あらすじ
二人は、愛の風景だけでなく、傷ましい名前が刻まれた小さな墓地や、他の人々の静かな死の深淵をも知っています。再び、二人は古い樹の下で横たわり、花々の間で空を見上げます。そこには、何とも言えない静寂と深い感情が漂い、二人の心に静かに語りかけてきます。いくつも傷ましい名前をもつた小さな墓地をも、
他の人達の死んでいつた恐ろしい沈默の深淵をも
知つてゐようと、さらにふたたび、私達は二人して
古い樹の下に出ていつて、さらにふたたび、身を横たへよう
花々のあひだに、空にむかつて。
了
底本:「堀辰雄作品集第五卷」筑摩書房
1982(昭和57)年9月30日初版第1刷発行
初出:「胡桃 夏季号(創刊号)」赤坂書店
1946(昭和21)年7月10日
入力:tatsuki
校正:染川隆俊
2010年11月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。