方今宇内の列國爭ふて海軍海事の發達に汲々たるは何ぞや、他なし、制海の權を握りて、國家の威福を伸張せんとするにあり、思ふに帝國は世界無二の海國なり、國威を宣揚し、國益を増進せんと欲せば、宜しく海上の權力を收め、海運の發達を計り、貿易の興隆を勉めざる可からず、而して、此目的を達するの道、國民の海事思想を奬勵するより急なるはなし、頃日、押川氏一書を著し題して海底軍艦と云ふ、其着想奇逸にして、結構また雄偉、閲讀の際、自ら海事思想を養ひ、憂國の精神を皷舞するに足るものあり、余深く其發刊を喜び、一言を記して、之が序と爲す。

伯爵 吉井幸藏

底本:「海島冐險奇譚 海底軍艦」名著復刻日本児童文学館、ほるぷ出版
   1975(昭和50)年10月発行
底本の親本:「海島冐險奇譚 海底軍艦」文武堂
   1900(明治33)年11月15日
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入力:川山隆
校正:土屋隆
2009年8月31日作成
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