海野武二氏の批評に就いては、その観点の差異が全く対蹠的なものであり、不断抗議を述べるとならば寧ろ簡略に申しがたく、この場合は残念ながら黙つて通り過ぎるより他方法も見出せないのであります。これは何うもどちらにとつても仕方のないことで、楽観など適ふ筈のものではなく、主観的作家態度の益々深く陥るべき憂鬱であります。

底本:「牧野信一全集第六巻」筑摩書房
   2003(平成15)年5月10日初版第1刷
初出:「時事新報 第一八八六六号」時事新報社
   1935(昭和10)年12月4日
※題名の〔〕、副題の()は、底本編集時に与えられたものです。
※「作者の言分」と題したコーナーへの、「「淡雪」の作者」との回答です。
入力:宮元淳一
校正:門田裕志
2011年9月30日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。