あらすじ
静かな夜空の下、三稜形の壇に立ち、クラリネットとオーボエを手に、演奏者は力強く音を奏でます。その音は、まるで雨のように降り注ぎ、静寂の世界に響き渡ります。やがて演奏者の前に、力強い肩と黒の上着をまとい、哀しい川を流し、渦巻く風を起こす、謎の人物が現れます。一体、その人物は誰なのでしょうか。
われらがふみに順ひて
その三稜の壇に立ち
クラリネットとオボーもて
七たび青くひらめける
四連音符をつゞけ
あたり雨降るけしきにて
ひたすら吹けるそのときに
いつかわれらの前に立ち
かなしき川をうち流し
渦まく風をあげありし
かの逞ましき肩もてる
黒き上着はそも誰なりし

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
※底本は表題に、「〔われらが書(ふみ)に順ひて〕」とルビを付しています。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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