あらすじ
冬の夜、雪が降る中、恋人を待ち焦がれる男の姿が描かれます。彼は、遠くから恋人の住む場所を眺め、彼女の姿を探しますが、なかなか出会えません。男は、恋しさに胸を締めつけられ、心は満たされないまま、夜の帳が下りていきます。
江釣子森の右肩に
雪ぞあやしくひらめけど
きみはいまさず
ルーノの君は見えまさず

夜をつまれし枕木黒く
群あちこちに安けれど
きみはいまさず

とゞろにしばし行きかへど
きみはいまさず
ポイントの灯はけむれども
ルーノのきみの影はなき

あゝきみにびしひかりもて
わが青じろき額を射ば
わが悩あるは癒えなんに

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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