あらすじ
丘に立った「われら」は、果てしなく広がる青黒い「あやしきもの」を眺めています。それは、巨いなる塩の水、「海」でありながら、どこか「伝へてきゝしそのもの」とは違う、奇妙な感覚を抱かせる存在です。薄れゆく日差しの中、「われら」は、海からの潮騒と、波頭が砕ける音に耳を傾け、その不思議な光景を見つめているのです。青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなくのぞみけり
そは巨いなる塩の水
海とはおのもさとれども
伝へてきゝしそのものと
あまりにたがふこゝちして
たゞうつゝなるうすれ日に
そのわだつみの潮騒の
うろこの国の波がしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき
了
底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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