あらすじ
深い森の中にそびえ立つ館。その館の周辺には、鳥たちのさえずりが響き渡り、岬の灯火が遠くに見えます。釣人たちは、静かに藪と瀬の間を歩き、魚を求めています。夜には、赤い蛾が飛び交い、その鱗粉が煌煌と輝きながら、緑色の蝦に寄り添う姿が見られます。静寂の中で、美しくも幻想的な自然と人間の営みが、静かに描かれています。
館は台地のはななれば
鳥は岬の火とも見つ
香魚釣る人は藪と瀬を
低くすかしてわきまへぬ

鳥をまがへる赤き蛾は
鱗粉きらとうちながし
緑の蝦を僭しつゝ
浮塵子あかりをめぐりけり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。