あらすじ
夜明け前の薄暗い改札口から、旅を終えた人々が続々と現れます。誰もいないホームは、陸の橋のように静寂に包まれています。彼らは、一年に一度の旅を終え、故郷へと帰るのでしょう。春の雨の中、それぞれの職場へと向かう彼らの姿は、黒煙を高く上げて進む機関車のように、力強く未来へと進んでいくようです。
なべてはしけく  よそほひて
暁惑ふ      改札を
ならび出づると  ふりかへる
人なきホーム   陸の橋

歳に一夜の    旅了へし
をとめうなゐの  ひとむれに
黒きけむりを   そら高く
職場は待てり   春の雨

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
※底本は、「作者専用の詩稿用紙に書かれた詩篇を収録し」、多くの詩篇で、詩稿の形式に合わせて上下に二句を配置し、字間スペースなどを調整して下の句の頭が横にそろうように組んである。この形を取っているこの詩篇では、句間を最低全角2字空けとし、下の句の頭を横にそろえた。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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