あらすじ
晩秋の夜、石組みが黒くひっそりと佇む僧園に、一羽の鳥が哀しげな鳴き声を響かせます。星屑が降るような夜空の下、御堂の屋根も沈み行く中で、再び鳥の姿が見え隠れします。静寂の世界に、その鳥たちの姿が、哀愁と神秘を感じさせる物語です。
星のけむりの下にして
石組黒くひそめるを
さもあしざまに鳴き棄てつ
くわくこう一羽北に過ぎたり

夜のもみぢの木もそびえ
御堂の屋根も沈めるを
さらに一羽の鳥ありて
寒天質アガーチナスの闇に溶けたり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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