あらすじ
旅の疲れを感じながらも、心は穏やかな気持ちでいっぱい。小さな竹行李を手に、雲の白い飯場を後にします。道端には美しい花が咲き乱れ、かすかな霧雨が降り注ぐ風景は、心にしみ渡るような静けさです。丘は一面青く、谷あいの棚田には、雨に濡れた堆肥が積まれています。
かぎりなく鳥はすだけど
こゝろこそいとそゞろなれ
竹行李小きをになひ
雲しろき飯場を出でぬ

みちのべにしやが花さけば
かうもりの柄こそわびしき

かすかなる霧雨ふりて
丘はたゞいちめんの青
谷あひの細き棚田に
積まれつゝ廐肥もぬれたり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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