あらすじ
険しい崖を登り切った先に広がるのは、樺や柏が生い茂る秘境です。そこに住むのは、不思議な「漢子」と呼ばれる人たち。彼らは、貴重な「白き」を求め、山々を巡り、草木の実を採集しています。漢子の足跡が草地を乱すと、山の上の火口から風が吹き荒れ、漢子はたくさんのきのこを背負いながら、青い野を望み、静かに笑って進んでいきます。その崖上にたどりしに
樺柏に囲まれて
はうきだけこそうち群れぬ
漢子首巾をきと結ひて
黄ばめるものは熟したり
なはそを集へわれはたゞ
白きを得んと気おひ云ふ
漢子が黒き双の脚
大コムパスのさまなして
草地の黄金をみだるれば
峯の火口に風鳴りぬ
漢子は蕈を山と負ひ
首巾をやゝにめぐらしつ
東に青き野をのぞみ
にと笑みにつゝ先立ちぬ
了
底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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