あらすじ
雪深い冬の野原に佇む小さな祠。古びた朱色の鳥居は色あせていますが、杉の古木が冬の空にそびえ立ち、静寂の世界観を醸し出しています。祠の内部には、一年を通して風雨に晒されながらも、大切に扱われてきた日本紙が奉納されています。雪が反射する光に照らされ、その紙の古びた美しさが際立ちます。そして、雪の積もった地面に響く井戸車の軋む音は、静かな野原に不思議な響きを奏でます。
赤き鳥居はあせたれど
杉のうれ行く冬の雲
野は殿堂の続きかな

よくすかれたる日本紙は
一年風に完けきと
雪の反射に知りぬべし

かしこは一の篩にて
ひとまづそこに香を浄み
入り来るなりと云ひ伝ふ

雪の堆のなかにして
りゝと軋れる井戸車
野は楽の音に充つるかな

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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