あらすじ
「ダルケ」と名乗る人物は、最後の別れを告げ、閲覧室の三階から地下室へと降りていきます。そこで湯と水を飲みますが、そのときガス灯が壊れ、炎は燃え盛ります。視界は奪われ、洞窟は暗く混乱した状態に。彼はその中で、哲人と永遠の別れを告げるのです。
われはダルケを名乗れるものと
つめたく最後のわかれを交はし
閲覧室の三階より
白き砂をはるかにたどるこゝちにて
その地下室に下り来り
かたみに湯と水とを呑めり
そのとき瓦斯のマントルはやぶれ
焔は葱の華なせば
網膜半ば奪はれて
その洞黒く錯乱せりし
かくてぞわれはその文に
ダルケと名乗る哲人と
永久とはのわかれをなせるなり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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