あらすじ
少年は、夜空に輝く星を見つめながら、その光に心を奪われています。星は、少年にとって大切な「君」を思わせる存在なのです。やがて夜空に星が消え、暁が訪れる時、少年は切ない想いを抱きます。少年は、「君」への想いを胸に、星のように美しくも儚い歌を歌い上げるのです。
ひかりわななくあけぞらに
清麗サフィアのさまなして
きみにたぐへるかの惑星ほし
いま融け行くぞかなしけれ

雪をかぶれるびやくしんや
百の海岬いま明けて
あをうなばらは万葉の
古きしらべにひかれるを

夜はあやしき積雲の
なかより生れてかの星ぞ
さながらきみのことばもて
われをこととひ燃えけるを

よきロダイトのさまなして
ひかりわなゝくかのそらに
溶け行くとしてひるがへる
きみが星こそかなしけれ

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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