あらすじ
厳しい冬の寒さが残る早朝、凍てつく田んぼに水が張られます。水面には、太陽の光を浴びてキラキラと輝く氷が浮かんでいます。田植えの準備が遅れていると、熊は空を見上げて、不満げにうなり声をあげているようです。農夫たちは、重い苗箱を馬に載せ、急ぎ足で田んぼへ向かいます。そして、朱色の盃に注いだ酒を、澄み切った青空に捧げます。
あくたうかべる朝の水
ひらととびかふつばくらめ
苗のはこびの遅ければ
熊ははぎしり雲を見る

苗つけ馬を引ききたり
露のすぎなの畔に立ち
権は朱塗の盃を
ましろきそらにあふぐなり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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