あらすじ
夕暮れの中尊寺の境内。鐘の音は遠くの山々へと響き渡り、緑の葉に覆われた堂宇は静かに闇に包まれようとしています。そこに一人の僧が座り、膨らんだ腹をさすりながら、義経の像を指さして何かを語りかけています。その言葉は、静寂の中に静かに響き渡る、不思議な力を持つものだったのです。
白きそらいと近くして
みねの方鐘さらに鳴り
青葉もて埋もる堂の
ひそけくも暮れにまぢかし

僧ひとり縁にうちゐて
ふくれたるうなじめぐらし
義経の彩ある像を
ゆびさしてそらごとを云ふ

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
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