あらすじ
太宰治は、自身の作品集「千代女」に続く作品群を収録した「風の便り」を、読者へ贈ります。収録作品は「千代女」以前の作品も含まれており、再読しても新鮮な気持ちになれるよう編集されています。特に、約百枚にわたる「風の便り」は、複数の雑誌に掲載されたものを一冊にまとめたもので、改めて読むことで新しい発見があるかもしれません。太宰治は、責任の重さを感じながら、大切な時を迎えているようです。
所收――「風の便り」「新郎」「誰」「畜犬談」「鴎」「猿面冠者」「律子と貞子」「地球圖」
 昨年の夏に出版せられた創作集「千代女」の以後の作品を集めて、ただいま讀者にお贈りする。ペエジ數の都合で、「千代女」以前の作品も編入せざるを得なくなつて、心苦しいのであるが、いま此の機會に再讀なさつても、充分に新鮮の感じがするやうに、心掛けて編輯した筈である。
 卷頭、約百枚の「風の便り」は、文學界、新潮、文藝の三册子に、三分して發表したのを、このたび一つにまとめたものである。まとめてお讀みになると、また、ちがふ感じがすると思ふ。
 ちかごろ私は、ひどく責任の加重を感じてゐる。大事な時だと思つてゐる。
十七年、節分の夜。

底本:「太宰治全集11」筑摩書房
   1999(平成11)年3月25日初版第1刷発行
初出:「風の便り」利根書房
   1942(昭和17)年4月16日発行
入力:小林繁雄
校正:阿部哲也
2012年1月7日作成
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