「そんなら銭を出すが売ってくれまいか」「ホウ銭を出すといふのか、では三十銭おいて行け」「高い二十銭にせぬか」「よしハヽヽヽうまいもうけだ」とかげで舌を出した。太郎は家へ帰ると、「お父さんコレ、コノ犬を買って来たよ」「何、可愛らしい小犬だナア」お父さんはしきりにその犬をほめて居ました。小犬はかはいらしい目をバチ/\させながらお父さんにじゃれつきました。「アヽさうだ、お父さん馬に草をやらねばならないのだっけ」「アヽさうだ、それではやってくるがいゝ」「ではうらへ行って来ます」と出かけると、二匹の犬は其の後をなつかしさうに尾をふり乍らついて行った。
二匹の犬は太郎が馬に草をやってしまふまで見て居ました。それがすむと二匹の小犬は一匹は太郎のきもののすそをくはへて、コチラへ/\といふやうに引っぱります。又後の一匹は時々後を向いては太郎に、コチラへ/\といふやうにまねきます。太郎は面白く成って後へついて行きますと田舎へ出て来て、たんぼの中を何町も行きますと一つの古い社があります。そのうらに大きなもみの木がありました。犬はその根元を一生懸命にほって居ます。太郎も面白く成ってそこをほって居ると一つのふくろが出ました。その結目をとくと中からお金がどっさり出ました。お金は今しも入らうとする太陽に照らされて、キラ/\/\と目もまばゆいばかりに光りました。太郎は「アッ」といって思はず後へしりもちをつきました。とたんにサーッと金と銀の光が太郎の目を流れるやうに ました。
太郎は驚いてあたりを見まはしますと二匹の犬の姿は消え、二人の清く美しい又尊とい女神が二人姿を現はしました。二人の女神は驚く太郎をせいしながら「太郎よ、わたしは海の神ぢゃ」「太郎よ、わたしは地の神ぢゃ」「かりに小犬に姿をやつして」「人間界に来て見れば」「思ふにはにずざんこくなものだ」「しかし其の中にはお前の様な」「心の清い情深い人もある」「いや実にお前は感心だ」「その心にめでて古来いくたの人のたんけんしやうとして及ばなかったこの宝は」「皆お前にやる」「ヘヘッ」太郎は思はずそこにひれ伏しました。さうして顔を上げると二人の女神の姿は見えず社などはありませんので、あたりを見まはしますと自分はあの畑でグッスリねこんで居たのでした。よく見ればあの二匹の犬は静かに舌でペロリ/\と太郎の顔をなでました、では夢かと思ふと夢ではない、自分のそばにはあの宝がドッサリ積んでありました。太郎は喜びその宝をとって帰りたちまち其村一番の金持となり、やがて村長にあげられよくその村を治めましたとさ。めでたし/\
一一・六・三綴