T 芸州広島
 弥生ヶ岡の
 花時雨
S=弥生ヶ岡
 花が散る、花が散る。
 群集がワーと喚声を挙げた。
 大声に、
T「喜平次の
 馬鹿野郎!
 斬られて了え!」(少し大きな字)
 有馬喜平次を先頭に紫羽織十五人組が抜刀でじりじり迫る。
 群集、
T「宮本先生
 其奴を
 叩ッ斬って下され!」(文字少し大きく)
 宮本武蔵、両刀を抜いて毅然と立つ。
 群集が又、
T「喜平次は
 鬼だ!」(少し大きく)
 と言って、
T「此の町の毒虫だ!」(少し大きく)
 紫羽織の一人、怒って武蔵に斬って掛かる。
 一足退いて武蔵、其奴を叩ッ斬る。
 ワーと挙がる喚声。
 乱闘、派手な奴。
 群衆の喚声。
 武蔵の大奮戦。
 遂に喜平次、叩ッ斬る。
 ワーと挙がる見物の喚声。
(F・O)
S=大川
 乗合舟。
 大勢の乗客の中に旅の商人が一人、
 (薬売の様な風体)
 それが、話し手である。
T「その宮本先生の
 強い事、強い事」
 と言って、
T「先づ
 日本一で
 御座んしょうね」
 と言った。
 感心する乗合の客。
 舟端で聞くとも無しに此の話を聞いて居た、女賊白狐のおしまが、そッと微笑んだ。
 そして、独り言、
T「そんな強い先生に
 一度、遭って
 見たい」
 と言った。
 川の流れ。
(F・O)
T 兎も角
 当時、宮本武蔵の名は
 津々浦々に響き渡っていた
S=道場の表
 念流剣道指南、森脇左十郎の門外である。
 今しも、その表に立ち止った一人の武者修業の侍(早水団九郎)
 のこのこ門内へ入る。
S=玄関で
 団九郎が取次の侍に向って大声挙げて叫んだ。
T「拙者、天下の浪人
 宮本武蔵政名と
 申す者」
 「ソーラ来た」と取次の侍早顔色が無い。
 団九郎、尚も大声に、
T「先生に一本
 御手合せ
 願い度く」
 取次の侍「暫時御待ちの程を」と言って、
 泡喰って、奥へ注進する。
 してやったりと団九郎、ほくそ笑んだ。
(F・O)
 やがて、
 取次の侍が、恐る恐る出て来て、其の場にペタリと平伏した。
 「如何で御座る」と団九郎。
 侍が、
T「先生
 只今御病気中に
 御座れば」
 ナニッ病気、と団九郎、
 取次の侍、紙包を取り出して、
T「誠に軽少に
 御座るが
 ホンの草鞋銭」
 と団九郎の前に差し出す。
 してやったりと団九郎、「それは残念」とか何とか言い乍ら、その紙包を受け取った。
S=表
 出て来た団九郎、紙包を取り出して中の金子を、紙入れに収めて、
 せせら笑って、立ち去った。
(F・O)
S=別な道場の表
 今度は一刀流の先生、浮田源兵衛の門前だ。
 団九郎、悠々として、門内に入る。
S=玄関
 頼もう、と呼ぶ声に応じて取次の侍。
 団九郎声張り上げて、
T「拙者天下の浪人
 宮本武蔵政名と申す」
 で取次の侍、例の如く驚いた。
(F・O)
S=門前
 団九郎、紙包貰って出て来た。封を破って金子を紙入れに収めて、
 せせら笑って、立ち去った。
(F・O)
S=又他の道場の表
 今度は心貫流貝沢万右衛門先生の門前。団九郎、例に依って、フンゾリ返って門内に入る。
(F・O)
 やがて又、
 団九郎、
 ふんぞり返って出て来た。
 紙包の中の金子を紙入れに収め、
 せせら笑って、立ち去る。
(F・O)
 (団九郎は一見強そうな男である事。道場は三つとも、貧弱な道場である事)
S=旅籠美濃屋の一室
 宿帳の大写。
 団九郎、宿帳を取り上げて、さらさらと姓名を書いた。
 受け取った亭主が見ると、
 宿帳の大写。
 肥後熊本浪人
 宮本武蔵政名、とある。
 エッと亭主が驚く。
 団九郎、床を背に豪然と坐す。
 亭主が、
T「それでは
 貴方様がッ」
 ナンダと団九郎。
 亭主が、
T「あの有名な
 二刀流の先生」
 「如何にも」と団九郎、威張ったものだ。
 亭主も大喜びに「それは、それは
T「ようこそ
 御泊り下さいました」
 と下へも置かぬ待遇です。
 団九郎すっかり悦に入った。
 亭主は宿帳をつくづく見て、
T「この宿帳は
 永く当家の家宝として
 子々孫々に伝えます」
 と押し戴いたので、
 団九郎先生益々得意然として居る。
S=帳場では
 又大騒ぎである。
 二階から下りて来た女中の報告で、
 番頭や女中が、
T「宮本武蔵?」
 と囁いて居る。
 その時、
 丁度今旅籠に着いて足を洗って居た白狐のおしまが、その声を聞いて、アレッと言った顔。
S=団九郎の室
 亭主を前に団九郎、身振り手振りも面白く、
 勝手な武勇伝に、熱を上げて居る。
 亭主、謹んで聴いて居たが、
 「では又、後程」と引き退る。
S=廊下
 出て来た亭主は宿帳持って、
 隣の室へ入る。
 女中に案内されて、おしまが通り過ぎる。
S=隣室
 入って来た主人。
 其処に泊って居るのが、本当の宮本武蔵である。
 武蔵、亭主から宿帳を受け取った。
 開いて、見て、アレッ、と呆れた。
 「宮本武蔵」と独り言し乍ら、
 亭主に「宮本武蔵どのと言うのは?」
 と訊く。
 亭主が聞かれて「よくお訊ね下さいました」
 実は、
T「隣りの室のお客様が
 宮本武蔵先生」
 これには武蔵、ばからしゅうて暫時言葉も出なかった。
 やがて、心に何か決する処があってか、
T「宮本先生と
 御同宿致すとは
 願ってもなき倖せ」
 そうで御座います、と亭主。
 武蔵が、
T「御亭主
 折入って
 御頼みがある」
 と言う。
 何で御座いますか、と亭主。
S=おしまの室
 おしま褞袍と着換えてやっと落ち着いた処。
 嬉しそうで独り言、
T「どうやら
 宮本武蔵って先生に
 遭えるらしい」
 と言う。
S=団九郎の室
 武蔵を伴って亭主が団九郎の前に、
 平伏して、頼み込んで居る。
 団九郎、例の如く、ふんぞり返って居る。
T「身共の弟子に
 なりたい?」
 武蔵が、
T「先生の門人として
 道中御供
 致し度う御座る」
 ウンウンと団九郎。
 亭主も傍から頼む。
 団九郎がよろしいと承知したので、
 二人は喜んで礼を述べる。
(F・O)
T さて
 翌る日――
S=街道
 早水団九郎、荷物を全部、宮本武蔵に持たせて威張り返って歩いて行く。
 団九郎歩き乍ら武蔵を振り返る。
T「今迄何流を
 学んで居った?」
 武蔵が「ハイ
T「吉岡憲法先生の
 吉岡流を少々ばかり」
 団九郎、ウンウン、アーアー。
T「吉岡の憲公か」
 まるで憲法が自分の弟子みたいな調子である。
T「憲公も、噂ほど強う無い喃」
 これには武蔵、思わず苦笑する。
 武蔵、道端の草をむしり取って、団九郎の背後から、その首筋をその草で、そッと撫でる。
 (薄の様な草)
 団九郎、首をちぢめる。
 がその儘歩いて行く。
 武蔵又こそぼる。
 団九郎、立ち止った。首筋を撫でて見て、
 武蔵に、何か居るか見て呉れ、と言う。
 武蔵、覗き込んで叫んだ。
T「アッ、毛虫ッ」
 で今迄威張り返って居た団九郎がワーと真蒼な顔で跳び上った。(仰々しく驚く事)。
(F・O)
S=街道の茶店
 白狐のおしまが休んで居る。
 傍に武者修業らしい武家一人。
 おしまがじろッと侍の方を凄い眼で睨んで、
 独りほくそ笑む。
 と「茶代を置くよ」と言い捨てて立ち上る。
 武家、つと懐に気附いて手を入れて見る
 と紙入れが無い。
 おしま茶代を置いて去ろうとする。
 侍「アッ、これ」と、
 おしまに追い附いた。
 いきなり、利腕つかんで捻じ伏せた。
 「何をするんだい?」とおしま。
 侍、おしまの懐から己の紙入れを奪い返して、
T「素太い女奴ッ」
 とおしまを膝下に組み敷いて、
T「代官所へ
 突き出してやる」
 其処へ、武蔵を供に団九郎が現れて、
 此の様子を見るや、馳け出して、
 侍を突き飛ばし、おしまを背後にして立つ。
 武者修業の侍が、突かれて怒った。
T「何だ
 貴様ァ」
 その声に団九郎、少し驚いたが、女の手前威張って言った。
T「拙者天下の浪人
 宮本武蔵政名と申す」
 聞いて、その侍は、驚いた。
T「デハ貴殿が
 宮本先生」
 そうじゃ、と団九郎。
 その侍、ハハッ、と平伏して「知らぬ事とは申せ無礼の段平に」と謝まった。
 で、団九郎、女の見て居る前で、断然男ッ振りを上げて、
 おしまは、愈々、此の日本一の先生が好きになったと言った顔で、頼もしそうに団九郎の顔を惚れ惚れと見上げました。武蔵は相変らずの微笑で始終の様子を見て居ります。
(F・O)
S=旅籠若狭屋の一室
 団九郎とおしまが、今着いて、
 やっと、くつろいだ処。
 おしまが団九郎に、
T「妾なんぞが
 御一緒に
 お供して」
 と言って、
T「御迷惑で
 御座いましょうね」
 団九郎が中々もって迷惑どころか、却って喜んで居りまする。
 おしまが、言いにくそうに、
T「御迷惑で
 御座いませんのなら」
 と言って、艶な瞳で、団九郎をチラと見て、
T「いつまでも
 御一緒に御供が
 致し度う御座いますわ」
 と言われて、
 団九郎、身体がゾクゾクして来た。
 武蔵が風呂から帰って来た。
 おしまは、代って風呂へ出て行く。
 うっとり見惚れた団九郎。
(F・O)
S=同じ室
 団九郎、室の隅の鏡を出して来て、
 つくづく己の顔を見て独り言。
T「近頃は
 斯う言う顔が
 女にもてるらしい」
 室の隅の柱にもたれて居た武蔵が、
T「馬鹿だなァ
 先生は」
 と言う。
 ナニッと団九郎、いきごんで武蔵を見る。
 武蔵が、
T「そんな顔は
 女にもてませぬ」
 団九郎、語気荒く、
T「しかし
 あの女は
 身共にッ」
 と喰って掛かるのを、
 武蔵が、
T「だから
 先生は馬鹿だ
 と申した」
 と言われて、
 団九郎烈火の如く怒った。
T「師に向って
 無礼の雑言ッ!」
 と掴みに掛る。
 利腕掴んで武蔵、団九郎を投げる。
 投げられて、オヤッと団九郎、意外な顔。
 又、組み附いて又投げられた。
 ドシンと大きな音。
 その時、ガラッと障子が開いて、風呂上りのおしまが、
T「何で御座いますの
 今の音は?」
 と訊かれて室の隅で、団九郎、変な顔。
 武蔵が、
T「今先生に
 柔道の稽古を
 致して貰いました」
 まァとおしま。
 武蔵が、
T「今の物音は
 拙者が
 投げられました音」
 と言われておしまが、うっとりと、
 「まァ
T「お強う御座いますのね
 先生は?」
 団九郎先生、投げられて腰が痛いが、泣くに泣かれぬ苦笑い。
(F・O)
S=街道の朝
 団九郎とおしま、後から武蔵がお供する。
 団九郎、おしまに、
T「拙者の顔は
 女にもてんと
 申しおった」
 まァとおしまが、
T「だって先生
 此処に一人
 そのお顔に」
 と団九郎に寄り添って、
T「ぞっこん
 惚れた女が
 あるじゃ
 御座いませんか?」
 と言う。
 団九郎、すっかり悦に入ってしまった。
 おしま、草鞋の紐が解けたので、
 立ち止った。
 団九郎と武蔵は先へ行く。
 おしま漸く紐をしめ直して立ち上った時、
 一人の侍とすれ違った。(門人数名を供に連れている)
 こらッと、その侍白倉源五左衛門、おしまの腕を掴む。
 おしまの手に白倉の紙入れ。
 奪い返して白倉が、おしまを突き倒す。
 倒されたおしまが、
T「畜生、
 吠え面掻くなッ」
 ナニッと白倉。
 おしまが、
T「宮本先生を
 呼んで来るよ」
 と言って、
T「日本一の強い人
 宮本武蔵先生を」
 源五左衛門が、
T「面白いッ、呼んで来い!」
 と言って、
T「宮本武蔵を
 呼んで来いッ!」
 仕出しが若干立ち止る。
 団九郎と武蔵が、おしまが遅いので戻って来た。
 早くもそれと見て、おしまが「先生ッ」と馳け寄って、縋る。
 団九郎、おしまを背後にして、
 威張り返って源五左衛門の前に進み、
T「身共天下の浪人
 宮本武蔵政名
 と申す者」
 へへッと驚くかと思いの外、白倉源五左衛門一歩進み出て、
T「貴様が武蔵か?」
 えッと団九郎、少し蒼くなる。
 源五左が、
T「白倉源五左衛門が
 勝負しよう
 道場へ来いッ」
 と言う。
 団九郎、しまったと思ったが遅い。
 おしまが袖を引いて、引ッ叩いておやりなさいと言う。
 団九郎、虚勢を張って、ようしッ来いと承知した。
 其処で、源五左と団九郎、肩を並べて歩き出す。
 後から、おしまに武蔵、更に門人一同。
 武蔵、ニコニコ笑って行く。
 群集も、ぞろぞろ後から従う。
 その群集の一番最後の遊び人風の男が二人、歩き乍ら話し合う。
T「どちらが
 勝つだろう」
 と甲が言えば、
 乙が、
T「そりゃ、宮本武蔵サ」
 甲が、いやいや、
T「白倉先生も
 強いぞ!」
 乙がナニッ、
T「よしッ一番
 賭けよう」
 と気が早い。
 面白いと甲も乗り気だ、が金は無し。
T「金あるか?」
 乙が「無いから、仕方がねえ」
T「負けたら
 着物をぬぐんだ」
 ようし来たと甲。
 わいわい言って居る。群集の先頭で団九郎生きた心地がしない。
(F・O)
S=吉原神道流剣道指南
     白倉源五左衛門の看板
S=道場の表
 格子窓から覗き込んで居る人々。
 遊び人甲乙も居る。
S=道場内
 用意万端整えて白倉、悠然と進み出る。団九郎も武蔵に襷鉢巻を結んで貰って中央に現われた。
 固唾を呑む門人とおしま。
 武蔵は例の微笑を浮べて、片隅で見て居る。
 団九郎と源五左、一礼してサッと分れた。
 団九郎二刀を振りかぶって勇ましい姿。
 と忽ち、
 団九郎、一つコツンと叩かれた。
 オヤオヤと驚くおしま。
 続いて、二ツ三ツ。
 兎も角、団九郎、無茶苦茶に叩きのめされ逃げ廻っては又叩かれ、
 (三枚目的な立廻りよろしく)
 遂に、長うなってしまった。
 おしま、げっそりした。
 源五左せせら笑って団九郎を足で踏み、
T「これが日本一かッ」
 と大笑する。
S=表
 遊び人乙、クルッと裸になった。
 済まんなァ、と甲は乙の着物を受け取る。
S=内部
 今迄黙って居た武蔵が立ち上った。
 源五左を呼び止めて、
T「只今のは
 小手調べ」
 エッと源五左。
 武蔵が、
T「身共が真の
 宮本武蔵」
 まァと驚いたのはおしまである。
 源五左、よし来いと身構える。
 武蔵が、悠々、大小の木太刀を掴んで一振り二振り。
 悠々と道場の中央に仁王立ち。
 余りの事におしま言葉も出ない。
 武蔵、サッと身構えた。
 白倉サッと斬り込む。と忽ち、
 面を殴られて、ワッと倒れる。
 その時、門人が五六名、武蔵に打って掛ってもよろしい。
 兎も角、白倉サンザンにやられた。
 武蔵、木太刀を捨てて塵打ち払い、悠然と立ち出でんとする。
 おしまが呼び止めた。
 武蔵が、
T「先生を
 お頼み申す」
 「御冗談ばかり」とおしま。
T「あんな奴
 妾、大嫌い」
 武蔵が傍に倒れている団九郎に、
T「お聞きなされたか
 今の言葉?」
 と言って、
T「だから身共が
 そのお顔は」
 と言って、
T「女にもてぬと
 申したのさ」
 と、今度はおしまに向って、
T「これから
 男に惚れるなら」
 と言って、
T「名前に惚れず
 人間に惚れる事で
 御座る喃」
 と言い捨てて去る。
 呆然たるおしま、団九郎。
S=表では
 裸になった遊び人の乙が、済まんなァと着物を着て、甲が裸になった。その着物を乙が受け取った。
(F・O)
S=街道
 武蔵と団九郎が行く。
 今度は武蔵が先生で、団九郎が弟子である。
 主従、楽しく語らい乍ら行く。
(F・O)
S=峠の上り口の茶店
 武蔵と団九郎が休んで居る。
 茶店の亭主が、心配そうに話しました。
T「峠をお越し
 なさる時
 御要心なさいませ」
 「どうした?」と武蔵。
 亭主が、
T「天狗様が
 お出ましに
 なります」
 団九郎が驚いた。
T「天狗?」
 それは又本当か、と膝乗り出す。
 亭主が、
T「昨日
 山向うの庄屋の家に
 白羽の矢が」
S=庄屋の家
 屋根に白羽の矢が、突きささって居る下で大勢の百姓がわいわい言って居る。
T「嫁入前の庄屋の
 娘が可哀そうに
 人身御供に」
S=元の茶店
 亭主が話す。
 団九郎が、
T「心配致すな
 亭主
 此の御方は誰あろう」
 と武蔵を指さして、
T「新免二刀流の開祖
 宮本武蔵先生」
 と言って、
T「拙者は先生の高弟で
 同じく新免二刀流の
 達人」
 と威張って、
T「勇名天下に響き渡った
 早水団九郎」
 亭主も感心した。
 武蔵、立ち上ると、傍の草叢の方へ行く。
 団九郎尚も亭主に、
T「烏天狗
 二十や三十」
 鼻へし折って、と手振り身振りで威張り出す。
 フト武蔵の居ないのに気がつく。
 振り返ると、
 武蔵が草叢を覗いて居る。
 団九郎が、先生何で御座る、と言う。
 武蔵が振り返って、
T「大きな蛇が、居る」
 団九郎、跳び上った。
T「蛇ッ!」
 武蔵の手が草叢の縄を掴む(縄である事をはっきり見せて下さい)。
 団九郎は武蔵が蛇を掴んだものと思って、
 「先生、およし遊ばせ」と早逃げ腰だ。
 武蔵、縄を掴んで、
T「そーら
 蛇だッ」
 と投げる。
 その縄が団九郎の頭から背中へ引ッ掛かると、
 団九郎跳び上って、ウアッと逃げ出した。
 武蔵と亭主が大笑いである。
(F・O)
S=庄屋の家の表――夕方
 屋根の白羽の矢。
 表には葛籠つづらが置いてある。
 見送りの百姓達で家の表、賑々しい。
S=内部
 娘の室から驚いて庄屋が出て来た。
T「娘が
 見えません」
 と言う。
 えッ、と驚く一同。
 サー大変、慌て出す。
S=表
 馳け出す人々、口々に、
T「お絹さんが
 逃げたッ!」
 と言って、
T「皆んな
 探して呉れ!」
 と口々に、
T「天狗様の
 お怒りが
 怖しいぞ!」
 と叫んで、
 八方に走り去る。
S=村の小川の水車の辺りで
 六助とお絹のラヴシーン。
 お絹が涙で眼を光らして、
T「隣り村へお嫁に
 行くぐらいなら」
 と言って、
T「いっそ天狗様に
 喰われて
 死んだ方が倖せです」
 と言う。
 六助が、
T「二人で
 逃げよう」
 と急き立てる。
 いいえとお絹が、
T「天狗様の御祟りが[#「御祟りが」は底本では「御崇りが」]
 怖しうて……」
 困ったなァと六助。
S=附近――
 お絹を探して村人が五六人。
S=水車の処
 人の足音に六助驚いて去る。
 村人はお絹の姿を見て駈けて来る。
 お絹はワッと泣き崩れる。
(F・O)
S=庄屋の表
 葛籠が人々の手によって山へ送られる。
 庄屋や母親や親類縁者が、泣きの涙で供をする。
(F・O)
S=山道――夜
 葛籠を担いで村人が上って行く。
 松明を翳して行く。
(F・O)
T その夜
 深更――
S=荒れ果てた辻堂
 辺りは古い杉の木が茂った深山幽谷である。
 見るからに物凄い処である。
 例の葛籠が置かれてある。
 葛籠の中のお絹。
 と杉木立の真黒な処から、
 ニューと天狗が現れた。
 要心深く辺りを見廻した。
 葛籠の傍へ寄って人影なしと見て天狗の面を取って辻堂の縁に置く。
 山賊である。合図をすると、児分が二人現れる。
 葛籠を開ける。
 内のお絹、恐る恐る、見ると、
 山賊の好色の笑。
 アッと叫んだお絹。
 辻堂の中から手が出て、縁に置かれた天狗の面をそッと掴んだ。
 山賊輩はお絹を葛籠から担ぎ出す。
 争うお絹。
 と、
 辻堂の扉がバタンと勢いよく開いた。
T「こーら」
 タハッと驚く山賊が振り返ると、
 真黒な辻堂の中に天狗の顔が物凄く光って居る。ワーと山賊、腰を抜かす。
 辻堂の天狗が(団九郎)、
T「吾こそは
 此の仙境に
 棲む天狗なり」
 そら出たと山賊達、腰を抜かす。
 団九郎の天狗は悠々と現れ出て、
T「我名を騙る
 憎い人間ども」
 山賊達、震え上る。
 処が団九郎、調子に乗って首を振って居た時、
 天狗の面が落ちる。
 驚く団九郎。
 山賊も驚いた。
 それッと山刀抜いて斬って来る。
 団九郎、辻堂へ逃げこむと入れ違いに、
 武蔵現れて、
 三人を斬り捨てる。
(F・O)
S=山道――暁
 武蔵と団九郎がお絹を伴って、
 下りて行く。
 お絹道々、武蔵に話す。
T「助けて戴きましたのは嬉しう御座いますが」
 と言って、
T「隣り村へ
 お嫁に行かねば
 なりません」
 と悲し気に、
T「それが、悲しう
 御座います」
 と言う。
 聞いて、うなずく武蔵。
(F・O)
S=山の麓――朝
 お絹の安否を思って上って来る両親や村人達。
 下りて来た武蔵等。
 それと見て驚く村人達。
 お絹は寄って母親の胸に泣き伏す。
 武蔵と団九郎、悠々と村人に近附く。
(F・O)
S=庄屋の家の内部
 祝いの酒宴である。
 天狗退治の大勇士とあって団九郎は得意満面で盃を重ねている。
 武蔵はさて一同の者に、
 天狗退治の有様を話す。
 感心して聞く庄屋や其他村人。
 武蔵が話す。
T「我が慈悲道得の刀を
 受けよと言うより早く」
 と話す武蔵「スラリとばかり
T「両刀抜き放ちて
 飛びかかり」
 身振り手振りも面白く
T「この時妖雲
 谷を覆い
 山は轟々
 と鳴り響く」
S=辻堂
 猛々と立ちこめた白煙。
 武蔵の奮戦。
 荒れ狂う天狗。
 (トリックよろしく。少し大時代に天狗退治をやって下さい)
 遂に天狗を叩き斬ると、
 苦しみもがく天狗。
 空中に舞い上り、
 杉の梢に飛び付いた天狗。
 「ウヌ、取逃がしたかッ」と武蔵。
 天狗、空中より、
T「やれッ
 宮本武蔵
 よく聞け!」
 ナッ、ナッ、なんと武蔵。
 空中の天狗、
T「汝が非凡の働きにより
 我は鞍馬山に退散せん」
 と叫んで、
T「そも、そも、我は
 巳年生れの天狗なり」
 と言って、
T「されば、その娘を
 巳年の男に与うべし」
 何と? と地上の武蔵。
 空中の天狗が、
T「巳年の男に
 与うべし」
 ドロンドロンドロンで空中遙かに飛び去ったり。
(F・O)
S=元の庄屋の家
 語り終る武蔵。
 聞いた庄屋が、
T「巳年の男で
 御座いますか」
 左様、と武蔵がうなずいて、さて、
 T「聞けば近々
 御婚礼との事で
 御座るが」
 ハッハイと庄屋、心配そうに、
T「相手の男が
 巳年でないと」
 悪う御座いますかと訊く。
 武蔵が、
T「天狗の祟りが[#「祟りが」は底本では「崇りが」]
 怖ろしう御座るぞ」
 ハテ困った、と庄屋。
T「此の村で、巳年の男と
 言えば」
 彼奴と彼奴と、と数える。
 村人の一人が、
T「六助さんも確か巳年じゃ」
 二人は嬉しそうに語って居る。
(F・O)
T 数日の後――
S=村はずれの街道
 庄屋や六助お絹の若夫婦や、
 其他村人達に送られて、
 武蔵と団九郎が旅立ちであります。
 去って行く二人。
 六助とお絹は何度も去って行く二人に礼を述べる。
(F・O)
T ある城下町
S=街角
 立札。
 一、爾今当城下に於て
 仇討の助太刀を
 致したる者は金百両也
 の恩賞を与う者也
 その立札の前に立ち止った、武蔵と団九郎。顔見合せて、「何と面白い事じゃ喃」と言って居る時、一人の浪人者がドンッと団九郎に突き当って御免、と其儘立ち去る。
 (坂部文六である)
 団九郎、紙入れを掏り盗られた事に気附いて、アッ、しまったと立ちすくむ。
S=附近
 文六すたすた去る。
 団九郎大声に、
T「泥棒ッ」
 と叫んで文六の後を追う。
 逃げる文六と、追う団九郎。
S=通り
 向うより、侍が五人ばかりやって来た。
 それと見るや、逃げて来た文六、突然、立ち止ってクルッと振り返る。
 追って来た団九郎。
 文六突然、スラリと大刀引き抜いた。アレッと団九郎一足退る。
 文六、大声に、
T「珍しや、父の敵
 頓間野良兵衛ッ!」
 ナッ、ナニをぬかすと団九郎。
 通り掛かった侍五人は大喜び。
 立札の大写(フラッシュ)
T「百両ッ」(少し大きく)
 スラッと五人が大刀抜いて、
T「助太刀致すッ」
 と団九郎に迫る。
 団九郎、跳び上って驚いた。
 一目散に逃げる。
 後を追う五人の侍。
 文六は追おうとせず刀を収めて、懐中の紙入れを取り出し、銭勘定をし乍ら去る。
S=附近
 逃げて来た団九郎、武蔵の姿を見て、
 やれ有難や、とその背後に隠れる。
 追って来た五人の侍。
 武蔵が「人違いじゃ」と言い乍ら一同を叩き付ける。
 ヤレ安心と団九郎、ホッとする。
(F・O)
T 此処のお殿様
 近頃はやりの
 仇討病患者――
S=城中広間
 お殿様。
 (此のお殿様少々三枚目のお殿様である事)
 極く若い殿様である。
 脇息に凭れて、退屈そうな様子である。
 側に老臣が一人控えて居る。
 お殿様が一ツ大きな欠伸をなすった。
 厭だ、厭だ、退屈だなァ、と言った顔が、
 突然、晴れやかな顔になる。
 老臣に「爺ッ」
 ハッと老臣。
 お殿様が、
T「其の方」「娘があった喃」
 と訊ねられた老臣。
T「当年十八歳に
 相成りまする」
 うんそうかと上機嫌の殿様が「どうじゃ爺、
T「其方、誰かに
 殺されて呉れぬか?」
 エッと老臣が訳の分らん顔。
 殿様が「分らん奴だ
T「其の方が、誰かに
 斬られて死ぬのじゃ」
 あの拙者が、と老臣「メッ、滅相も無い」
 殿様が「イヤイヤ
T「心配致すな
 其の方の娘に
 立派な仇討を
 させてやる」
 老臣も呆れ果てた。
 殿様が嬉しそうに、
T「女の仇討は
 珍しいぞ」
 老臣がイヤイヤ、
T「御免蒙ります」
 断わられて、お殿様、悲観した。
 つくづく独り言、「あーあ
T「仇討が
 見たいなァ」
 と仰しゃった。
(F・O)
S=橋の上――夜
 お殿様と老臣と家臣が五名程川端を歩いて居る。御忍びである。
 お殿様は橋の袂に、何かを見て、お止まりなされた。
 其処に寝て居る乞食。
 お殿様、ジッと其の乞食を見て居られたが、
 「そうに違い無い」と独り言。ツカツカと乞食の傍へ寄り「これこれ」と肩を叩く。
 乞食、ムニャムニャ言い乍ら、起き上る。
 ふと見れば、立派な数名、自分を取り囲んで居る。吃驚して「どうぞ命ばかりは」
 殿様が乞食に、
T「隠すな、隠すな」
 と言われて、乞食、何の事だか訳が分らん。
 殿様が、
T「其の方、真は
 武士であろう?」
 乞食はポカンとして居るが、
 殿様は独り悦に入って、
T「敵討であろう
 喃?」
 エッ? と乞食は分らないが、
 殿様の独り合点は尚続く。
T「非人に迄、身を落し
 さだめて辛いであろう」
 とハラハラと落涙して、
T「其の方の至孝
 天に通ぜぬ
 道理が無い」
 と乞食の手を掴んで、
T「仇討本懐の日を
 祈り申すぞ」
 と老臣に金子を包ませて、
 それを乞食に与え、
T「些少乍ら
 余の志じゃ」
 乞食はまるで、鳩が豆鉄砲を喰った形。呆然と殿様を見守る。
 坂部文六が、木蔭で、此の様子を見て、ほくそ笑んだ。
(F・O)
S=宿の横手――夜
 坂部文六、杖を付いて、
 フーフー、云い乍ら、歩いて来る。
 苦しそうに唸って居る。
 其処へ殿様と老臣連の御忍びが通り掛った。
 殿様、フト文六を見て、
 「如何召された」と抱き起す。
S=その二階
 手摺りに凭れて、下の様子を見て居る、武蔵と団九郎である。
S=下では
 殿様の前に手を付いた
 文六が懸命の熱演である。
T「父の敵を求めて
 放浪八年」
 「八年?」と殿様驚いた。
 文六尚も苦しそうに、
T「未だ、仇敵に
 廻り逢わざるに
 路用の金子は
 尽き果てて」
 殿様聞くより「アイヤ
T「皆迄申すな
 泣けて来る」
 と文六の手を握って、
T「辛いで
 あろう喃」
 と言って、老臣を振り返って、それッと言う。
 文六横目でソレと見て成功と喜んだ。
S=二階
 武蔵が団九郎に耳打ちする。
 団九郎心得て袍褞の[#「袍褞の」はママ]儘、大悦びで、今しも殿様が、文六に金子を与えんとする時、
 ヒラリと二階から、その中へ、とび下りた団九郎。
 驚く一同。
 団九郎、文六に向って、
T「珍しや、父の敵
 頓間野郎兵衛ッ」
 アレッと文六、驚いた。
 殿様も老臣も家臣も驚いた。
 文六「これッ何を申す」と言っても団九郎、
 無二無三と斬って来る。
 殿様が、
T「さては
 騙り者か」
 と言う。
 文六浮かぶ瀬も無い。
 家臣等も、やっと思い出した。
 「立札」
T 百両
 でズラリと抜刀して、
T「助太刀致す」
 と文六に斬り掛かる。
 文六驚いて遂に逃げ出す。
 追う一同。
 二階の武蔵は見送って、何か決心して、ツと室へ入る。
(F・O)
S=元の川端――夜
 文六逃げて来た。
 追い付いた団九郎と家臣等。
 家臣等はグルッと取り囲む。
 文六、必死に叫ぶ。
T「こら、嘘を申すな
 嘘をッ」
 団九郎が「何が嘘だ!」と鼻息荒く、斬って来る。
 文六が逃げ乍ら、
T「貴様こそ
 拙者の為には
 父の敵」
 ナッナニをぬかす、と団九郎。
 文六が一同に、
T「各々方
 此奴が
 真の敵!」
 団九郎も負けて居ない。
T「貴様が敵じゃ
 馬鹿野郎!」
 文六が、立廻り乍ら、
T「此奴の顔を
 見て下され
 顔をッ」
 と言って、
T「親の敵らしい
 顔で御座ろう?」
 団九郎が、
T「貴様の面こそ
 敵面だ!」
 家臣共はどちらが敵だか分らない。
 殿様も分らない。
 で、
T「面倒だ
 両人共斬り捨てえ」
 ハハッと家臣、今度は、二人に斬り付ける。
 サア、二人は蒼くなった。
 敵同士が協力して戦う。
 宿を出た武蔵がやって来た。
 既に、危い二人を救けて、
 家臣共を尽く川へ投げ込み、又は打ちのめし、最後にお殿様をチャチャクチャに叩き付けてフラフラになったお殿様の首筋掴んで、
T「仇討の熱病
 患者奴!」
 と橋の上から川の中へ投げ込んで、
T「熱を
 冷まして来い!」
 と叫ぶ。
T 翌る朝
S=通り――屋敷町
 登城の途の若侍五名、
 フト立ち止る。
 彼方で、
 団九郎と文六、すれ違った。
 文六、
T「珍しや
 父の敵
 早水団九郎!」
 オヤッと若侍、急ぎ足に二人の傍へ。団九郎、見事な、敵だ。
T「片腹痛い
 返り討ちだ!」
 と両方が、ズラリと抜刀する。
 若侍五人が、思い出した。
 立札の大写。
 ズラリと抜刀して、
T「助太刀致す!」
 と待ってました、とばかり
 団九郎、刀担いで、逃げ出した。
 卑怯者ッ、とばかり、文六と若侍達後を追う。
 追い駈ける若侍。
S=或る神社の表
 団九郎がその境内へ逃げ込んだ。
 続いて文六や若侍も続く。
(急速にF・O)
S=同じ神社の表
 侍五名が物凄うやられた形で、フラフラで逃げて行く。
 文六と団九郎が見送って大笑い。
 二人仲良く去って行く。
S=境内
 武蔵が大小の木太刀を手に悠々と腰打ち掛けて居る。
S=通り
 強そうな二人の武士が歩いて居る。フト立ち止る。
 前方で例の通り、文六、団九郎がヤーヤー珍しや、をやって居る。
 ソレッと二人は抜刀して、
 助太刀致す、と団九郎に斬り掛かる。
 団九郎、例の如く逃げ出す。
 一同、後を追う。
S=神社の境内で
 武蔵が二本木太刀を手に持って居る。
S=神社の表
 団九郎、逃げ込んだ。
 後追って抜刀の文六と侍二名。
(又急速にF・O)
S=同じ神社の表
 文六と団九郎、前の侍二人の足を曳きずって出て来て、
 道へおっ放り出す。
 投げ出されてフラフラの二人の侍、這う様にして逃げて行く。
 二人又仲良く出掛けて行く。
(急速にF・O)
S=同じ神社の表
 団九郎、逃げ込む。文六と今度は十余名の侍が追って入る。
(又急速にF・O)
 十余名の侍がフラフラにやられて出て来ました。
(F・O)
此の手で、も一度、三十名位の奴を見せてもよいと思います。
T 斯くて――
S=大広間
 殿様の御座へ、殿様がお座りになる。
 殿様は頭に繃帯をして御座る。
 平伏して居る家臣一同(百名ばかり)。
 その家臣が一斉に頭を上げると、ナンとどれもこれも繃帯だらけ。
 殿様、オヤッと驚く。
 老臣から何から隅から隅まで繃帯だらけ。殿様ほとほと、呆れてしまった。
S=町
 例の立札が、大地に叩き付けられて居る。
S=街道
 意気揚々と武蔵等二名が、
 此の城下を去って行きました。
(F・O)
T 慶長十七年卯月十三日
 豊前小倉の海上の
 離れ島に
(O・L)
T 父の敵佐々木巌流と
 彼を護る剣士三十余名と
 決戦す
S=海上
 数艘の小舟に分乗した、佐々木巌流の一隊。
 豪然たる巌流、先頭の舟上に立つ。
 他の方面からは、
 武蔵の舟が急ぐ。
 舟上の武蔵。
 両方の舟が荒波蹴立てて急ぐ。
 やがて巌流等の、
 舟は島に着く。
 続いて反対の岸へ武蔵の舟も着く。
 海岸を巌流を先頭に進む三十有余名。
 武蔵も決然、波打ち際を歩む。
 両者相会す。
 巌流大刀の鞘を払って、鞘を捨てた。
 武蔵も応とばかり、両刀抜く。
 荒波、どッと押し寄する処。
 武蔵、懸命の乱闘、
 波と乱闘の交響楽だ!
 遂に武蔵、一同を斬り伏せる。
(F・O)

底本:「山中貞雄作品集 全一巻」実業之日本社
   1998(平成10)年10月28日初版発行
底本の親本:「山中貞雄シナリオ集」竹村書房
   1940(昭和15)年発行
※「F・O」はフェード・アウト、「S」はシーン、「T」はテロップ/タイトル(字幕)、「O・L」はオーバー・ラップはエフェクトです。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:平川哲生
校正:門田裕志
2012年9月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。