あらすじ
遠く離れた場所で、時代に取り残されたかのように生きる父と息子。彼らの生活は貧しく、手紙のやり取りもままなりません。父は息子の元へ、切実な思いを込めた手紙を送ります。手紙には、息子の健やかな成長を願うとともに、厳しい現実に対する苦悩が綴られています。父と息子の切ない絆と、時代を超越した深い愛情を描いた作品です。
「未曾有のキキン」
「大水害」
「餓死の年」
遠いほんとうに遠い
父と息子の住んで居る土地は
時代をとりちがえて生きて居るようにほんとうに遠い
手紙の封筒は
ほご紙を飯粒のりでこさえておくる
切手はどこかのすみからさがして来たようにすすけてしわくちゃだ
父と息子のたよりは
三銭の切手もめったに送らない
父は「死んでしまおうか」と訴えてくる
白髪のお母よ丈夫で居てくれ
小さい弟妹よ、丈夫に育ってくれ
了

底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年1月6日作成
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