あらすじ
「娘」は、父親の愛情と、戦前の厳しい時代を生きる家族の姿を描いた作品です。父親は、生まれたばかりの娘への愛情を言葉で表現し、彼女の成長を喜びながらも、彼女が生きる未来への不安も抱いています。戦争の影が忍び寄る中、家族はどのように生きていくのでしょうか。 お前は俺の子供
おれはお前の父親
おれはお前の親となって六月だ
お前は生れた時
この頭がおれの握り拳位だった
ずい分と大きくなったな
お前の顔がおれに似て居るようだし
今添寝して居る母にも似て居る
誰彼がそう云った
それはほんとうだろうか
ねむったお前
お前は今ずい分よくねて居る
さっきはあんなにおれに困らせたんだが
母の乳房に乳がなくなりゃ
お前にとっては全く一大事だから
泣いて泣いて
のけぞり返って足をつっ張って
母が重湯をこさえて来るまで
泣き 泣き 泣いた
お前はおれの子供
おれはお前の父親
おれはお前に頬ずるしてやる
早く大きくなれ
お前はやせても立派な女工さんになれ
一九三一年
了
底本:「今野大力作品集」新日本出版社
1995(平成7)年6月30日初版
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年3月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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