あらすじ
激動の時代を生きる人々の姿が、力強くも繊細な筆致で描かれます。波濤のように押し寄せる運命、そしてそこに立ち向かう彼らの生き様は、読者の心を深く揺さぶります。愛、友情、そして希望が織りなす、壮絶にして美しい物語です。
おお はるけき方より寄せ来る波濤よ
汝が最大の実力と自信を持って
岩礁を打て、万丈のしぶきを上げよ
その時、海神は大空に懸る天日をおおいて。
凄惨なる自然の風景を
汝がその雄々しき門出の餞(はなむけ)に送るであろう
ああ、かかる時、
汝の使命は
世のその努力の頂点(クライマックス)に到達すべきである
されど汝は
かの海洋はるかに煙を吐きつつ走る
すべの船を
船に乗れる同胞を、愛人を
使者を
どよもす波濤の底へ没し去らんか、
おお汝波濤よ 若しさらば汝等の哀しみ 歎くを如何にせん。
了

底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1926(大正15)年9月10日
※初出時の表題は「海濤よ―人情素描―」です。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年3月8日作成
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