あらすじ
東郷大将の肖像画と「皇国の興廃此一戦に在り」という言葉を掲げている男がいます。彼の住居には頻繁にサーベルを持った男たちが訪れ、近所の人々も彼の様子を窺っています。東郷大将の言葉は、この男にとって特別な意味を持つようです。彼は、日露戦争の英雄である東郷大将を、人々とは異なる視点で捉え、独自の解釈で崇拝しているのでしょうか。東郷大将の肖像が壁にはられていた
それからあの
「皇国の興廃此一戦に在り
各員一層奮励努力せよ」
という同じ東郷大将の筆蹟もあった
彼の家に二度三度
サーベルがやってきてこれを見て行ったし
近所のおしゃべり女房が窓の外から
この平凡な風景を見て行ったし
どうやら東郷大将は彼のために
煙幕作業をやっている
日露戦争の折には
人民の敵ツァーの艦隊を全滅させて
ロシアに革命を早くさせたといって
感謝されているこの提督を
彼は別な意味からはがそうとはしない
了
底本:「今野大力作品集」新日本出版社
1995(平成7)年6月30日初版
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年2月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。