あらすじ
「人面凝視」は、ある人物の顔を徹底的に描写した作品です。その顔は、まるで精霊が宿っているかのような、不思議な魅力と恐ろしさを持っています。唇は紅色の沼、鼻は丸いピラミッド、目は光る黒曜石の湖、眉は湖を囲む林……といったように、作者は独自の比喩を用いながら、その顔を細部まで描き出していきます。読者は、その言葉の力によって、目の前にその人物が実在するかのように感じ、次第に魅了されていくでしょう。
ふとして眺むれば
彼処(かしこ)に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である
われは今その面を見つつ想う

唇……
おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である
 鼻……
おおそはまろみあるエジプトのピラミットである
 眼……
おおそはうるおい耀く黒曜石の玉を秘めし二つの湖水である
 眉……
おおそは湖水をめぐりて小丘の上に繁れる林である
おおなめらかに広き無毛の原を過ぎ行けば
彼方は千古の密林である。
了

底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1926(大正15)年10月1日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年2月17日作成
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