あらすじ
明治元年の江戸。絵師の月岡芳年は、上野戦争の戦場を巡り、血なまぐさい光景を写生帳に収めていた。その姿を見た官兵に捕らえられそうになった時、彰義隊士の日下部欽之丞が現れ、芳年を助ける。その後、欽之丞は芳年の家に身を寄せ、二人で奇妙な共同生活を始める。しかし、芳年の絵を描くことに対する執念と、欽之丞を巡る女たちの思惑が、彼らの運命を大きく変えようとしていた。
 霖雨(りんう)と硝煙のうちに、上野の森は暮急(くれいそ)ぐ風情でした。その日ばかりは時の鐘も鳴らず、昼頃から燃え始めた寛永寺の七堂伽藍(がらん)、大方は猛火に舐め尽された頃までも、落武者を狩る官兵の鬨の声が、遠くから、近くから、全山に木精(こだま)を返しました。
「今の奴、何処(どこ)へ逃げた」
「味方を四五人騙し討ちに斬って居るぞ。逃してはならぬ奴だ」
「まだ遠くへは行くまい」
「見付かったら、朋輩の敵、一(ひ)と太刀ずつ斬るのだぞ」
 背負(しょい)太刀、ダン袋、赤い飾毛をなびかせた官軍が五六人、木立を捜(さぐ)り、藪を分けて鶯谷(うぐいすだに)の方へ降りて行きます。
 その背後(うしろ)から、物の影のように現われたのは、彰義隊士(しょうぎたいし)日下部欽之丞(くさかべきんのじょう)、二十四五の絵に描いたような美男ですが、軽傷(あさで)を受けた上、幾人か斬った返り血が、乱鬢(みだれびん)と、蒼い頬と、黒羽二重(くろはぶたえ)を絞った白襷(しろたすき)に反映して、凄まじさというものはありません。
「――――」
 不敵な舌鼓を一つ、四辺(あたり)を見廻した欽之丞は、又も近づく人影に驚いて、木立の蔭に身を潜めました。
「畜生ッ、――俺は怪しい人間じゃねえ」
 血の臭いに酔って、無暗(むやみ)に吠え付く犬を叱り乍(なが)ら、桐油(とうゆ)をすっぽり冠(かぶ)って、降りしきる細雨の中をやって来たのは、絵師の月岡米次郎(つきおかよねじろう)こと、大蘇芳年(たいそよしとし)の一風変った姿です。
 明治元年五月十五日の夕刻。
 その時芳年は三十歳、御家人の子に生れて武士の血を享(う)けた筈(はず)ですが、月岡雪斎(せっさい)に養われ、菊池容斎(きくちようさい)、葛飾北斎(かつしかほくさい)の風を学んで、心も姿もすっかり町絵師になり切って居りました。
 浅葱(あさぎ)の股引に草鞋(わらじ)がけ、桐油に上半身を包んで、目ばかり出した風体(ふうてい)は、腰の矢立てと懐の画帳が無かったら、葛飾在から来た水見舞と間違えられるでしょう。
 油のような生温かい雨が降るのに、芳年の身体(からだ)は、ガタガタ小刻みに顫(ふる)えて、時々はしゃっくりをして居ります。その上足許(あしもと)も不確かで、ヒョロヒョロと行っては、ぬかるみに足を取られて、泥の中へヘタヘタと坐ったりしました。
 そのくせ、藪の中や道の上に、斬られて死んでいる死骸を見ると、彰義隊であろうと官兵であろうと一々覗いて、その相好と、歪んだ姿態を見極めずには居られなかったのです。
「ひどい傷だが、――仏様のような穏かな顔をして居る」
 そんな無事な死顔は、芳年の興味を引かなかったのでしょう。
「これは凄い」
 時々は死体の前に踞(しゃが)んで、懐から出した半紙横綴の帳面に矢立の筆を抜いて――細雨をかばい乍ら、写生の筆を走らせました。
 不意に――
「居たぞ居たぞ」
 バラバラと押(お)っ取巻(とりま)く官兵、ギラリギラリと幾条(いくすじ)かの刃が芳年の眼に焼け付きました。
「あッ、お許し」
 驚き騒ぐ芳年、桐油を引き※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)(むし)られて襟髪を掴まれたまま、二つ三つ小突き廻されます。
「何者だッ、うぬッ」
「お許し、お許し下さりませ。私は怪しい者じゃございません」
 行儀の悪い猫の子のように摘(つま)み上げられた芳年は、意気地無くもガタガタ顫え乍ら、両手を合せて居ります。
「怪しくないことがあるものか。其処(そこ)で何をして居た」
 風体は落武者とも見えません。多分戦塵のまだ納まらぬ山内に潜り込んで、掠奪を目論(もくろ)む泥棒とでも思ったのでしょう。
「絵を描いて居ります。私は、私は芳年と言う浮世絵師で――」
「何? 浮世絵師? 出鱈目(でたらめ)な事を言えい。浮世絵師と言えば、美人や、役者や、道中の景色などを、面白可笑(おか)しく描いて、女子供の慰み物にするのが稼業ではないか、――どれ見せい、貴様の絵は――何(な)んだこりゃ、どれもこれも、気味の悪い、斬り合いや、死骸や、梟(さら)し首ばかり、これでも浮世絵師と言うのか、怪しい奴ッ」
 頭立(かしらた)った一人の武士、芳年の写生帳をバラバラと開いて、不審の眉を顰めます。
「そ、それは違います。あなたの仰(おっ)しゃる遊女や役者や道中絵を描くのは、泰平の世の浮世絵師、――女子供の慰みにする気はなくとも、世の中に事が無いと自然絵までが穏かになりますが、此節(このせつ)のように、斬った張ったの世の中、耳元で鉄砲の音のする時節には、それ相応の浮世絵がなくてはなりません。この世の中に様々な姿を、あるが儘(まま)に写して、後の世に伝えるのは、絵筆とる者の勤めでござります。――今時華魁(おいらん)や役者の絵を描いて、一人で悦に入っていられましょうか」
 芳年は一所懸命でした。自分に掛けられた疑惑を解くというよりも、硝煙と血潮の洗礼を受けた浮世絵師の、精一杯の誇りを――斯(こ)う高らかに言ってやり度(た)かったのです。
「可笑(おか)しな奴だ、言う事は一と通り筋道が立っているが――そのくせガタガタ顫えて居るじゃないか。そんな臆病者に、血腥(ちなまぐさ)い場面が写せると思うか」
「写しますとも、ヘエ、身体の顫えるのは疳(かん)のせいで、私の臆病のせいじゃございません。こんな時本当に突き詰めた人間の姿を写して置かなきゃ、――私は浮世絵師に生れた甲斐(かい)がありません。何んの」
「よし、それじゃ、もっと凄いところを見せてやろう、一緒について来い」
「ヘエ――」
「さア」
 促されて芳年は起ち上りましたが、意気地無くも膝の蝶番(ちょうつがい)が崩れて、ヘタヘタと綿のように泥濘(ぬかるみ)へ坐ってしまいます。
「た、起てません」
「ハッハッ、馬鹿な奴だ。腰が抜けたのか、そんな事で本当の戦が描けるものか」
「少し気を落付(おちつ)けさせて下さい、直(す)ぐ治ります」
「よしよし、何時(いつ)までも腰抜の相手になっても居られまい。誰か二人ばかり、此辺で見張って居るが宜(い)い、我々はもう一度落武者を狩り出して来よう」
 芳年は腰の抜けたまま、松の根方に縛り付けられ、官兵二人はそれを見張るともなく残されました。
 あとの一隊はバラバラと上野の森へ、暮れ残る道を取って返します。

「やい、絵師」
「ヘエ――」
「俺を描いて見ろ」
「ヘエ――」
「この武者振りを一つ描いて見ろ、出来が良かったら、国への土産(みやげ)にしてやる」
 一人の官兵は威儀を作りました。
「縛られて居ちゃ描けません」
 芳年は泣き出しそうでした。
「よしよし、それじゃ暫(しば)らくの間縄を解いてやる。その代り絵の出来が悪いと勘弁しないぞ」
「それじゃ御免蒙(こうむ)ります」
「何?」
「出来不出来は臨本(てほん)次第で、一たん筆を執った上は、私の儘にもなりません」
「俺の武者振りが悪いというのか」
「そう言うわけじゃございませんが、お気に召さないといけませんから、描くのは勘弁して下さい――死人や梟(さら)し首と並べて描いちゃ、第一気色が悪うございます」
 芳年は縛られ乍らも、頑強にはね飛ばしました。こみ上げて来る強大な自尊心がガタガタ顫え乍らも、斯(こ)う言わせずには措かなかったのです。
「無礼な奴だ、そんな事を言うと、痛い目を見るぞ――絵描きだと言っても、描くところを見なければその帳面の絵だって、誰が描いたか解ったものじゃない。其方(そのほう)、彰義隊の落武者ではないか」
「と、飛(と)んでもない」
 そう言う芳年の後に廻って一人は鍔(つば)を鳴らしました。
「此奴(こいつ)、斬って捨てようか」
「フム、それも宜かろう」
 二人は何やら合図をして居ります。
「あッ、お許しを。私は、彰義隊なんかじゃございません」
 颯(さっ)と来た一刀、縛られ乍らも危うく首を縮(すく)めましたが、二度目の太刀は防ぎようはありません。
 が、その時奇蹟が起りました。芳年の頭上に振り冠(かむ)った一刀は宙に飛んで、
「あッ」
 飛退(とびの)く官兵の一人は、足を苅られて屏風(びょうぶ)の如く倒れたのです。
「己れッ」
 飛付くもう一人の官兵の前へ、石垣を這い上ってスックと立ったのは、先刻(さっき)姿を隠した日下部欽之丞の満身に返り血を受けて、地獄の底から跳出(とびだ)した、幽鬼のような物凄い姿です。
 二人の官兵はよく闘いましたが、一人は足を苅られ、一人は不意を喰って、死物狂いの欽之丞の敵ではありません。真にあッと言う間に、左右に斬って落されました。
 二人の官兵を片付けた欽之丞は、芳年の側に寄って、夕闇の中からその顔を差覗(さしのぞ)きました。
「気を喪(うしな)ったのか、馬鹿な奴」
 冷たい笑(わらい)が頬に淀んだのもほんの暫らく、次の瞬間、欽之丞の手は、芳年の縄を解いて、その着物を剥ぎ始めます。
「あッ、お助け、命ばかりは――」
 芳年は漸(ようや)く気が付きました。
「命は取らぬが、その方の着物が入用なのだ、暫らく借りるぞ」
 武装を脱ぎ捨てた欽之丞は、芳年の袷(あわせ)を着流し、脇差だけ一本、深々と懐に呑み、幸い道端の水溜りで、ザッと手足や顔の血潮を拭き取りました。
 心持髷を直して、芳年の手拭を取上げて冠(かぶ)ると、何(ど)うやら彼(こ)うやら町人らしくなります。
「それ、これは礼だ」
 ポンと投(ほう)り出したのは小粒が二つ三つ、
「あ、もし、お武家様」
 芳年はその小粒には目もくれず、襦袢一つの姿で泥の中に起上(おきあが)りました。
「何んだ、金が不足か」
 振り返った欽之丞、弥蔵(やぞう)さえも拵(こしら)えて、頬冠(ほおかぶ)りの中に匂う顔は、歌舞伎芝居の花道で見るような男振りです。
「その帳面だけは返して下さい、――そいつは、私の命から二番目で」
「これか」
 無意識に懐にねじ込んだ帳面を取出すと、欽之丞はポンと投(ほう)ります。
「あ、泥が附くじゃありませんか」
 絵師の憤懣が、ツイ軽い抗議になりますが、欽之丞はそれを耳にも掛けず、夕闇の濃くなり行く上野、谷中、道灌山かけての木立の中を見て居ります。
「待て待てッ、怪しい奴」
 不意に藪を分けて一人、日下部欽之丞の行手に立ち塞(ふさ)がりました。羅紗(らしゃ)の陣羽織、細雨を凌(しの)ぐ陣笠、抜刃(ぬきみ)のままの一刀を側構えに、一寸(ちょっと)の油断も無い気組です。
「ヘエヘエ、私共は土地の者でございます。戦見物と申しちゃ悪うございますが、一生に一度の事と存じまして、ツイ、ウカウカと深入りいたしました。お見逃しを願います」
 日下部欽之丞は腹からの町人らしい滑らかな調子でした。江戸侍の器用さでしょう。
「もう一人の男は裸体(はだか)じゃないか」
「連れは落武者に剥がれました」
 日下部欽之丞ケロリとしてこんな事を言うのです。
「頬冠りを取れ」
「ヘエ――」
「頬冠りのまま武士に挨拶する奴があるか」
「ヘエ――」
 欽之丞の左の手は挙りました。頬冠りを取ると見せて、右手は早くも懐の申の脇差の柄に――
「え――ッ」
 紫電一閃、
「わッ」
 羅紗陣羽織の肩から鮮血を吹き上げて、相手は倒れたのです。
「お助けッ」
 芳年も、あまりの事に肝を潰して、欽之丞の足許に這いました。
「馬鹿奴(め)ッ、何んと言う声だ、斬られたのは貴様ではないぞ」
「ヘエ――」
「其方の住居は何処(どこ)だ」
 血刀を拭い乍ら、欽之丞は訊ねました。
「あ、浅草の馬道でございます」
「大して遠くはないな、――今晩一と晩俺を泊めろ」
「――――」
「いやか」
 生血を拭いたばかりの刀が、芳年の眼の前へ、思わせ振りに動きます。
「と、飛んでもない」
「では、案内せい、――こんなところに長居は無用だ」
「――――」
「さア」
 促され乍ら、芳年は此処(ここ)に釘付けになりました。夕闇の中に絶え入る、今斬られたばかりの武士の相好が、芳年の興味を犇(ひし)と捕えたのでしょう。
 何時(いつ)の間にやら取出した帳面、それをガタガタ顫える膝の上に展(の)べて、芳年は矢立の筆を噛んでいたのです。

 それから四五日、江戸には血生臭い風が吹き続きました。
 その風に憑かれでもしたように、大蘇芳年は、朝から晩まで、街から街へと、物騒な噂を追い歩いて居たのです。
 小塚ヶ原の刑場は言うに及ばず、彼方(かなた)の橋の袂(たもと)、此方(こなた)の長屋の裏で、彰義隊の落武者が、薩長の巡邏(じゅんら)兵に見付けられ、縛られ、斬られる有様を、吐気を催すような嫌悪と、病的な熱情とで、一々画帳に納めなければ承知しなかったのです。
 馬道の留守宅では、押かけ女房のおよつが、これも押かけ落人(おちうど)の日下部欽之丞を介抱して、世間を狭く暮して居りました。およつは、園花(そのばな)と言って千住(こつ)で勤めた女で、年(ねん)が明けると、大した歓迎もしない芳年のところへ轉(ころ)げ込み、女房気取りで三月四月も納まっていると言った質(たち)の女でした。
「本当にあの晩ほどびっくりしたことは無いよ。襦袢一枚のあの人の後から、彰義隊へ入ったという欽さんが、のそりと入って来るんだもの――」
 およつは、芳年の留守の間、狭い六畳の、日下部欽之丞の枕許に坐り切りで、根が生えたように、斯(こ)う話し込んでいるのです。
「俺だって驚いたよ。此春年が明けて、千住から消えたお前が、場所もあろうに、俺が逃げ込んで来たヘボ絵描きの家の、長火鉢の前に納まって居ようとは、お釈迦様でも気が付くわけはねえ」
 欽之丞は、そんな伝法(でんぽう)な口をききます。腕はよく出来ますが、旗本の冷飯食いで、およつの園花とは、二年前からの深間(ふかま)だったのです。
「でも、斯(こ)うして逢えたのも、深い縁じゃないかねエ欽さん、――いくら私が図々しくたって、旗本のお屋敷へ、誓紙起証を振り廻して乗込(のりこ)むわけにも行かず、仕様ことなしに一番甘そうなお客の絵描きの家へ轉げ込んだのさ。其処(そこ)へ落武者になった欽さんが飛込んで来るなんて、草双紙にも滅多に無い筋じゃないか、――あの通り世間は物騒だし、幸い主人(あるじ)は朴念仁(ぼくねんじん)で二人の仲に気が付かないから、五年でも十年でも、神輿(みこし)を据えて逗留しておくれよ、ね欽さん」
 長い煙管(きせる)を吸い付けて布団の中へ入れると、およつの身体(からだ)は横っ坐りに、肘はもう、男の布団へやわやわと重しになるのでした。
「傷はもう癒(なお)ったぜ、何時(いつ)までも斯(こ)うしていた日にゃ、人間の造作が弛(ゆる)むよ、後生だから起してくれ」
 煙管(きせる)をポイと投(ほう)って、欽之丞は枕へ頬杖を突いたなりに、下からおよつの滴(したた)る風情を見上げるのです。
「あれさ、お前、起き出した時は、追い出される時じゃないか、それに縁側やお勝手でウロウロされちゃ、近所の人の手前もあるし」
「その近所に、飛んだ綺麗な娘が居るじゃないか」
「まア、呆れたよ。もうあれを見たのかい、――でもあれだけはお止(よ)しよ。お浜坊(はまぼう)と言って、素人(しろうと)のくせに飛んだ摺(す)れっからしさ。何処(どこ)が良いか知らないが、うちの朴念仁にポーッと来て居るんだって、ホホ」
「ヘエ――、芳年師匠、芸道ばかりと思ったら、そんな腕もあるのかい」
 欽之丞は何処(どこ)までも面白そうです。
「そう言うけれど、私はつくづくあの人が怖くなることがあるよ」
「あんまり物驚きをする柄では無いようだが、――何が一体怖いんだ」
「あの通り、絵を描くより外(ほか)に望みの無い人だし、臆病なほど大人しいから、踏台に丁度(ちょうど)よかろうと思って連れ添って見ると――」
「――――」
 およつはごくりと固唾(かたず)を呑みました。
「あの通りの良い腕を持ち乍ら、右から左へ金になる、華魁(おいらん)や役者の絵を描くのが大嫌いで、たまたま筆を取るかと思えば、不気味な無慚絵(むざんえ)ばかり――、そんなものが金になるわけが無いから、家の中は何時(いつ)まで経っても火の車さ」
「――――」
「上野の戦(いく)さが始まると、その病は嵩(こう)じるばかり、毎日目の色を変えて飛出しては、斬り合(あい)があった、晒(さら)し物があったと、三里も五里も歩き廻って、暗くなってから、狐が落ちたような顔で帰って来るんだもの」
 およつはそう話し続け乍ら、何んとなく胴顫いを感ずる様子です。
「私はつくづく愛想を尽き果てたよ。幸い飛込んだお前さんは、私の為には渡りに舟さ、迷惑だろうけれど、何処(どこ)へなと連れて逃げておくれ、ね欽さん」
「俺もそれを考えないわけじゃ無いが、何んと言っても、まだ探索の目が厳しいから、一と足路地を出たら、どんな事になるか解ったものじゃない。それに何処(どこ)へ行くにしても先立つものは金だ」
「それなら幸い――」
 およつは、少しばかり隠して持っている、自分の虎の子のことを考えて居ました。
「三河島(みかわしま)には縁家がある。今日芳年が出る時、一筆書いて持って行って貰ったから、今にも帰って来たら、何とか返事があるだろう」
 日下部欽之丞は、何時(いつ)の間にやら、床の上に起直って居りました。二つ三つ受けたかすり傷は、もうすっかり癒って、此儘函館へも飛べそうな心持です。
「それじゃ、私が一緒に行けないではないか。あの人に行先まで教えてしまっては、命の鍵を握られているも同様、それに、二人の仲を薄々嗅ぎつけた様子だから、後腐れのないように、バッサリやって、何処(どこ)か遠くへ飛ぶ工夫が肝心だと思うが――」
 およつの肝の太さ、あまり気の進まぬ日下部欽之丞を説き伏せて、底の知れない悪魔の淵へと誘い入れる積(つも)りでしょう。

「ちょいと」
 ひそやかな声に呼止(よびと)められて、芳年は思わず足を淀ませました。今日は不思議に早く帰った路地の入口、共同井戸の前に、白い顔が自分を見詰めて居たのです。
「お浜さんじゃないか、何んか用事かい」
 芳年は気軽な調子で斯(こ)う立ち止りました。世帯摺れはして居りますが、十九になったばかりのお浜には、娘らしさが、顔にも姿にも、声の爽やかさにも充分過ぎるほど匂って居たのです。
「今入って行くのは、お止しなさいよ、迷惑する人が二人あるようだから」
 その娘の口に含んだ毒が、妙に芳年を焦立たせます。
「何?」
「ね、芳年さん、人のことだけど、私はもう、腹が立って腹が立って、あの彰義隊の生っ白い二本差を、いっそ屯所へ訴人してやろうかと――」
「シッ――」
 二人は継穂もなく、黙って顔を見合せました。
「お前さんが、あんまりお人よし過ぎるんですよ。あんな恩知らずの畜生は、なぶり殺しにでもされて――」
「なぶり殺し?」
「首は三尺高い木の上に梟(さら)され、死骸は犬の餌(え)にでもなりや宜いに――」
 お浜の怒(いかり)は際限もなく爆発します。芳年をいとしと思う心が、斯(こ)うまで極端に働いて、全く違った方角へ忿怒の形で発展して行ったのでしょう。
「嬲(なぶ)り殺し、――梟(さら)し首、――そして死骸は犬に――」
 芳年の空想力は鼓舞されました。無慚絵の素晴しい題材が、お浜の言葉の上に、活々(いきいき)と築き上げられて行くのです。
「足りない、まだ足りない」
 江戸人の心を恐怖のドン底に投込んだ、私刑、暗殺、押込(おしこみ)、斬合(きりあ)い、――そして最後に彰義隊の戦争から、寛永寺三十六坊の炎上、八百八町の落武者狩までの、血と焔の印象が、まだまだそんな事では表現し切れなかったのです。
「何が足りないと言うんです、え?」
「凄さが足りない」
「え? ――お前さん、確(しっか)りして下さいよ。あんな二本差なんか、芋侍に引渡(ひきわた)しさえすれば、それでお仕舞なんだから」
 お浜には、芳年の心持が解る筈もありません。日下部欽之丞とおよつの関係を言い当てられて、フラフラと気が変になったのであるまいか――お浜はそんな事を考えるのが精一杯だったのです。
「放って置いてくれ、お浜さん、俺にも少しは考えたことがあるから――」
 解ったような、解らないような事を言い捨てて、芳年は自分の家へ入って行きました。
「――――」
 その臆病らしい姿、作り笑いさえ浮べた横顔を、お浜はどんなに腑甲斐のないものに思ったのでしょう。
 御家人の子に生れて、その描く絵と同じように、骨っぽい男らしい人柄を見上げる心持で居たお浜は、近頃の芳年の意気地のない態度に、言いようのない憤懣を感じて居たのです。
「皆(み)んなあの女のせいだよ」
 お浜の眼には、恥というものを、何処(どこ)かに置き忘れて来たような、およつの白粉焼(おしろいやけ)のした顔が、はっきり浮ぶのでした。

「日下部さん、御安心なさい。三河島の御親類じゃ、日下部さんが無事と聴いて、大喜びでしたよ」
 芳年の言葉にも態度にも、何んのこだわりもありません。
「それは有難(ありがた)い」
 日下部欽之丞は、ツイ今しがたまで、およつと、よからぬ事を企んでいたことなどは、綺麗に忘れてしまった様子です。
「で、――馬道よりは近所が遠いだけでも身を隠す都合が宜かろうから、すぐおつれするようにと、斯(こ)う言うお言葉でございました。世間が物騒だから、お返事を口移しで、書いたものは持って参りませんから――」
「それで結構、飛んだ御苦労であったな、早速支度をして、今夜にも出かけるとしようか」
 欽之丞はもう、まだ癒らぬ首の傷のことも忘れて、床から飛起きて居りました。
「いえ、夜は反(かえ)って物騒ですよ。私は諸方をほッつき歩いて、其辺中の官兵の屯所は、一つ残らず顔馴染(かおなじみ)だから、私と一緒にお出(い)でなさい。とがめられたら、私の弟子ということにしましょう。陽の当るうちの方が、どんなに安心だかわかりません」
「成程(なるほど)、そう言ったものかも知れぬな」
 日下部欽之丞は支度を始めました。月代(さかやき)を広く取って、根を下げた町人髷(まげ)、芳年の袷(あわせ)、手拭はわざと肩に、脇差は鍔を外して懐に隠し、突っかけ草履(ぞうり)で、芳年の後に続きます。
「ね、欽さん」
「――――」
 門口まで追って出たおよつ、芳年が一と足先へ行ったのを確かめて、
「わざと途中で手間取って、何処(どこ)か人気(ひとけ)の無いところで――」
 およつは手刀で、そっと物を切る真似(まね)をして見せます。
「それが、およつ――」
「待ってますよ、暗くなったら、直ぐ迎いに来て下さい。解って欽さん」
「――――」
 欽之丞はうなずくと、一と足先に行った芳年の後ろ姿を追いました。
 未刻(やつ)から申刻(ななつ)頃まで、
 およつは坐っても起ってもいられない心持でした。長火鉢の前へ行ったり、門口へ出たり、お勝手を覗いたり、煙草(たばこ)を吸ったり、茶を呑んだり、溜息をついたり、
「欽さん」
 何(な)んか邪(よこし)まなことを念ずるような心持で、不思議に胸騒ぎに悩み続けたのです。
 ヒョイと見ると、垣の間から白い顔、
 お浜の狷相(ずるそう)な眼と、人を馬鹿にしたような――その癖、男好きのしそうな赤い唇が見えるではありませんか。
「何んだい、お前は? 昨日も一昨日(おととい)も、雌犬のように、変なところから覗いたりして、いくら棟割長屋だって、垣の中は人様の城郭だよ、風の悪いことしやがると、水ブッ掛けるから」
 およつは気が立って居りました。
「芳年さんは、まだ帰らないの?」
 お浜の調子の邪念の無さ。
「それが何(ど)うしたと言うのだえ?」
 ツイ釣られるともなく、およつも縁先へ泳ぎ出しました。
「だって、ツイ先刻(さっき)、田圃(たんぼ)で彰義隊の落武者が捕まって、斬ったとか斬られたとか、大変な騒(さわぎ)をしたようだから、此方(こっち)に何んか変りが無きゃ宜いと思って――」
 お浜の調子のさり気ない滑らかさは、およつに取っては、此上もない威嚇でした。が、――あんなに用心深い支度をして行った欽さんに、万に一つ間違いなどある筈もありません。あの人が訴人するか、屯所へ引渡したのなら別だけれど、あんな臆病者に、そんなことが出来る筈も無し――盛上(もりあが)って来る恐怖を、無理にも押付けて、およつは乾く唇を噛みました。
「彰義隊の落武者? そんな者に掛り合いは無いよ。余計なお節介をするより、さっさと自分の家へ帰って、内職の楊枝でも拵えるが宜い、馬鹿馬鹿しい」
「そんなら宜いけれど――」
 お浜は煮え切らぬ事を言い乍ら、臆病な狐のように、振り返り振り返り帰って行きます。
「畜生ッ、何んて嫌な奴だろう」
 およつは縁側から引込みました。
 が、その時丁度、格子を開けて、何時(いつ)になく、ノソリと入って来た、大蘇芳年の蒼い顔と、眼を外(そら)しようもなく、ハタと逢ってしまったのです。
「あッ」
 恐ろしい予感が、水のようにおよつの背筋を走りました。

「およつ、居たか」
 洞(うつ)ろな声、眼はギラギラと瀬戸物のように光ります。
「お前さん、何んて顔だい、――あの人が若(も)しや?」
 およつの言葉は喉の中で消えました。
「田圃(たんぼ)で官兵に捕まったよ」
「えッ」
「上野で散々官兵を斬ったことを知って居る者があって、其場でなぶり殺し同様」
「じゃ、矢張(やっぱ)り」
「これを見ろ」
 芳年は、ポンと画稿を投げました。
 手に取って見る迄(まで)もありません。およつの膝の前でパッと開いたのは、矢立の墨一色で描いた、至って粗末な略画乍ら、紛れもない町人姿にして出してやった日下部欽之丞が、多勢の官兵に取巻かれ、乱刃の下に斬りさいなまれている怨(うらみ)の形相です。
「えッ、畜生」
 およつは画稿を叩き付けて、いきなり芳年に武者振り付きました。
「あッ、何をするんだ」
「お前と言う男は、何んと言う卑怯者だい。私とあの人の仲を疑って、力ずくで叶わないから芋兵に、訴えて召し捕らせ、こんな虐(むご)たらしい目に逢わせやがったろう」
「俺がそんな事を知るものか、離せ」
「わざわざ陽のあるうちに連れ出したのは、これを絵に描き度いために違いない。三月でも四月でも、一緒に住んだお前の心持が、私に解らないと思うのかッ」
「馬鹿なッ」
「お前は上野で官兵に斬られるところを、あの人に助けられたと言ったろう。一旦かくまった恩人を訴人して、義理も人情もない、それでも江戸っ児(こ)の端くれかい。畜生ッ、意気地なし、そのくせ、いけ図々しく、こんな虐(むご)たらしい絵まで描いて来やがって、ぬけぬけと私に見せるなんて、何んて根性だろう、外道ッ、鬼ッ」
 およつは半狂乱でした。揉みも揉んだ姿で、芳年の首へ胸へ、髻(たぶさ)へと武者振り付くのです。
「俺じゃない――誰か訴人をしたに違いないが、この芳年じゃ無い」
「それほど潔白なら、何んだって、こんな無慚絵なんか描いたんだ。人の死ぬのをヌケヌケと見ていて宜いものか悪いものか、思い知らせてやるから、畜生ッ」
 小格子で年一杯叩き上げたおよつは、妖艶で取廻しの良い女でしたが、その代り、執拗で病的で、意地っ張りで気違い染みた女でした。
「待ちなよ、俺だって人の殺されるのが面白いわけじゃないが、今の時世を写すには、こんなものでも描くより外に仕方が無い。天下後世に、俺の芸道を遺すためには、油汗を流し乍ら、歯ぎしりして、無慚絵を描くのだ」
「まァ、何んと言う曲った根性だろう。地獄の鬼だって、そんな虐(むご)たらしい事ばかり追い廻しちゃ居まい――それほど芸とやらが大事なら、美事(みごと)私も成敗しておくれ。お察しの通り欽さんは私の命まで打込(うちこ)んだ深間さ。それがどうしたんだい、畜生。さア、殺しておくれ、立派にやっておくれよ」
 半狂乱のおよつは、芳年に身体(からだ)を摺り寄せて、四方(あたり)構わずわめき散らすのでした。
「馬鹿ッ、宜い加減にしないか。俺はそんなことで、人を殺す量見(りょうけん)などは微塵も無い。気に入らなきゃ出て行くが宜い。どうせお前が勝手に飛込んで来た家じゃないか、死のうと生きようと、お前の好きなように――」
 芳年もツイ持て余し気味に、およつの絡み付く身体(からだ)をおし退(の)けました。
「私一人で死ねと言うんだね、――ようし、あの人を訴人したお前の前で、見事死んで見せよう、驚くな」
 いきなり台所へ駆け込んだおよつ、芳年がそれを追う隙もありません。キャッと言う悲鳴、――研ぎすました出刃庖丁で、我とわが喉も胸も、顔までも掻き切って、満身鮮血を浴びたまま、よろぼいよろぼい這い出して来たのです。
「あッ、何んと言うことをするんだ」
「さァ、この、私の顔をよく見ておくれ。この顔を、この姿を、――お前の筆で描けるものなら描いておくれ」
 宙に泳ぐ手、銀杏(いちょう)返しの根はガックリ抜けて、血潮の網目を引いた拳に、黒髪がバラリと絡みます。
 女の顔は、美しいだけに凄まじいものでした。引釣(ひきつ)る眉、ギラギラと死の苦痛を映す瞳(め)、血みどろの頬も唇も痙撃して、綺麗な歯並が、締木にかけたようにギリギリと鳴ります。
「この顔を見て、お前が夜寝られるか寝られないか、――よく見ておくれ。欽さんを訴人した上に、この私まで、――手に掛けなくても、なぶり殺しにしたお前だ――」
「待て、言うことがある。何も彼(か)も間違いだらけだ、――あれ、あれを聴け」
 芳年は血に狂う手負いのおよつを辛くも抱き止めて、二軒長屋の隣家――お浜の家のたたずまいを指します。
 生垣一つを隔てて、明けっ放した庭先の夕陽に、何も彼も手に取るよう。この時お浜の家には、隊長に従って官兵が七八人、ドカドカと入って来たのでした。

「日下部欽之丞を訴人した、浜というのは其方か。女乍ら、賊軍の大物を討たせた手柄は抜群だ。追って褒美の御沙汰はある筈だが、取あえずお上のお言葉だけを伝えて置く」
 そう言う官兵の隊長の声が、近所合壁へも聞えよがしに、凜々と響き渡るのです。
「――――」
 それを聴いたおよつ、芳年の腕の中に、必死の眼を見開きました。
「聴いたか、およつ、――あれで、何も彼も解ったろう。改めて言うまでもないが、――俺は唯(ただ)の絵描きだ。世の態(さま)、人の姿は描くが、訴人や企らみをする柄ではない、――俺の言葉も耳に掛けず、お前は飛んだ早まったことをしてくれたじゃないか」
「――――」
「どうせ勤めをしたお前だ。馴染も深間もあったところで、俺はそんな事でヤキモキするものか」
 静かに説く芳年、隣の庭からは官兵が引揚げて、お浜のいそいそとした姿が、それを送って出た様子まで手に取るよう。
「お前さん」
「解ったか、およつ」
「堪忍しておくれ、私は――」
 今死ぬおよつの眼には、初めて油のような涙が沁(し)み出しました。
「解ったらそれでよい。傷は浅い。静かに手当をするが宜い」
「いえ、私は助からない。助かり度くもない、――お前さんに済まないけれど、私は、私は欽さんの後が追って行き度い」
 およつは声もなく、芳年の膝の上に、身を顫わせて泣くのです。
「それも解っている、どうせこの俺とは浅い縁だ」
「堪忍して」
「可哀想に、――お前という女は」
「お前さん、――たった一つの願い、聴いてください」
「何んだ」
「お前さんは此間から、殺しも斬合いも梟(さら)し首も描いたが、女の、怨女の末期は手本が無いと言って居なすった」
「――――」
「幸い、この私の浅ましい姿、――息のあるうちに、描いて下さい、――せめてもの恩報じ」
 芳年の膝を降りたおよつは、最後の力を絞り出すように、柱に縋(すが)ったまま、フラフラと立ち上るのでした。
「それはいけない、――お前の顔に怨は消えた。死ぬ苦しみはあっても、怨女の悪相は無くなってしまった」
 まこと、法悦に似たものが、血みどろなおよつの顔を、仏作ってさえ見せているのです。
 が、形勢は一瞬にして変りました。
 此時、隣の物音に気の付いたお浜が、官兵を送り出した序(ついで)に、庭の木戸を押し開けて、ヒョイと入って来たのです。
「あッ」
 目の前に展開した、血みどろの光景に、お浜は逃げることも忘れて釘付けになりました。
「畜生ッ、お前が訴人したんだね、――この怨み、覚えてお出で」
 お浜の顔を見ると、忽(たちま)ちおよつに蘇生(よみが)える怨み、柱に絡んだ身体(からだ)が醜(みに)くく歪むと、眼も、口も、一瞬蒼白い焔(ほのお)を潜ったように、深怨無残の悪相が、メラメラと燃え上るのでした。
「助け――てエ」
 あまりの事に、お浜は狭い庭の上に這いました。眼は縁の柱に伸上(のびあが)る手負に吸い付けられて、娘の身体(からだ)はあまりの恐怖に蟲(むし)ほども動きません。
「口惜(くや)しいッ」
 キリキリと鳴るおよつの歯、風の無いのに、サッとなびく黒髪、柱に絡んだ手が緩むと、手負の身体(からだ)が、ゾロゾロと崩折(くずお)れて、庭のお浜を覗き加減に、ワナワナと双手(もろて)を差伸べます。
 最早、背に迫る死の手、お浜をつれて、八寒地獄の底までも行く積りでしょう。
 芳年は思わず画帳を取上げました。死の一瞬手前の、怨女の悪相が、名筆に従って、サラサラと描き上げられて行くのです。そのかみ、猛火の中のわが娘を見たという、仏画師良秀(よしひで)のように、――人の世の掟を超えた、芸道三昧の恍惚境にひたり切って、――浮世絵師芳年の顔は、名ある高僧のように澄み切ったのでした。
 大蘇芳年の傑作「英名二十八人衆句」は斯(こ)うして出来上りました。徳川末期の江戸を彩った、血みどろの世界が、「団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)」になり「稲田新助(いなだしんすけ)」になり、「直助権兵衛(なおすけごんべえ)」になり、そして怨を含んで殺されて行く「笠森(かさもり)お仙(せん)」の美女殺戮の図となったのです。
 芳年の無慚絵が持った境地、その生々しいリアリズムは、明治画壇に大きなスタートを与えました。それが水野年方(みずのとしかた)となり、落合芳幾(おちあいよしき)となり、輝方(てるかた)、英朋(ひでとも)、年恒(としつね)、年英(としひで)となり、そして巨匠鏑木清方(かぶらぎきよかた)となったことは言う迄もありません。
了

底本:「野村胡堂伝奇幻想小説集成」作品社
   2009(平成21)年6月30日第1刷発行
底本の親本:「芳年写生帖」春陽堂
   1939(昭和14)年
初出:「オール読物」
   1938(昭和13)年3月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※「さア」と「さァ」、「まア」と「まァ」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:阿部哲也
2015年8月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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