あらすじ
雪降る国の動物園に、ぼろぼろになった一羽の駝鳥がいます。飼育係は、その駝鳥が遠くを見つめ、燃えるような目で何かを待ち焦がれていることに気づきます。それはまるで、無辺大の夢を追い求める人間のように。そして、飼育係は、この駝鳥の姿に心を痛め、ある決意をするのです。
何が面白おもしろくて駝鳥だちょううのだ。
動物園の四つぼ半のぬかるみの中では、
あしが大また過ぎるゃないか。
くびがあんまり長過ぎるゃないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるゃないか。
腹がへるからかたパンも喰ふくううが、
駝鳥だちょうの眼は遠くばかり見てゃないか。
身も世もない様に燃えてゃないか。
瑠璃るり色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまゃないか。
あの小さな素朴そぼくな頭が無辺大の夢でさかまいてゃないか。
これはもう駝鳥だちょうゃないゃないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。

底本:「近代詩の鑑賞」さ・え・ら書房
   1958(昭和33)年3月20日第1刷発行
   1971(昭和46)年4月10日第2刷発行
入力:倉本理恵
校正:Juki
※底本は新字旧仮名づかいです。なお拗音の小書きは、底本通りです。
※新仮名によると思われるルビの拗音は、小書きしました。
※表題は底本では、「ぼろぼろな駝鳥(だちょう)」となっています。
2014年12月27日作成
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